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[WBS]東証で大発会!日経平均大幅高でスタート[株式会社東京証券取引所]

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ニューヨーク市場での株高の流れを受けて、日本株も好調な出足となりました。

今年最初の取引となる大発会を迎えた東京株式市場で日経平均株価は大きく値上がりしました。

大発会4年ぶり株価上昇!景気拡大期待で大幅高

日経平均株価は去年の終値より510円高い、2万9,301円で取引を終えました。大発会での値上がりは4年ぶりです。

景気拡大への期待感や円安が進行したことなどから海運株や自動車株などを中心に買い注文が広がりました。

東証再編で日本経済は!新市場 何が変わる?

今年は良いスタートとなったわけですが、2022年の株式市場は大きな転換点を目前に控えています。それが東証再編です。

今回は何がどう変わって日本経済にどのように影響するのか、またどんな課題があるのか滝田さんと解説していきます。

まずは市場の棲み分けがどう変わっていくのか見ていきます。

これまでは東証1部、2部、マザーズ、さらにはジャスダックのスタンダードとグロースという5つがありましたが、この5つを3つに集約して、「プライム」「スタンダード」「グロース」、この3つに再編することになっています。

今回の市場再編、ただ5つを3つにするというような単純な話ではないといいます。日本の株式市場全体に投資を呼び込むための改革だといいます。

東証の山道裕己社長にその狙いを聞きました。

東証トップに聞く再編の狙い!「国内外の投資資金を入れる」

東京証券取引所の山道裕己社長。

5つあるそれぞれのマーケットの特性がなかなか分かりづらいと言われている。

はっきりとしたコンセプトを掲げくくり直した。

「分かりやすくし、投資を呼び込むということか?」

特に海外投資家、国内外の投資家の投資資金をもっと入れたい。

それに加えて事業会社自身が持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向かって積極的に取り組んでいただく。それを目指したい。

われわれ自身の国際競争力を高めるための市場機能の強化はやっていかなければならない。

東証再編で日本経済は!

背景に国際競争力強化

投資家に分かりやすくというのが大きなキーワードのようですが、滝田さんは今回の再編についてどのようにご覧になっています?

国際競争力の強化が最大の狙いだと思います。この比較したグラフをご覧いただきたいですが、アメリカのニューヨーク証券取引所、ナスダックから遥かに溝を開けられて世界で5番目に凋落しています。バブルの頃は世界1位だったのでその凋落ぶりははっきりしています。なんでそんなことになったのかというと市場がうまく機能していない問題がある。そこを改革しようというのがポイントになっています。

具体的にどのようにして企業の成長を促して競争力を高めていくことになるのでしょうか、カギとなるのが再編に伴って設定されたそれぞれの市場の新たな上場基準です。

主な要素をこちらにまとめました。

新市場の新規上場基準
 プライムスタンダードグロース
流動性流通株式時価総額100億円以上10億円以上5億円以上
流通株式比率35%以上25%以上
ガバナンス(企業統治)
  • 独立社外取締役全体の1/3以上
  • 英語での情報開示
上場会社として最低限の公開性
経営成績売上高100億円以上かつ時価総額1,000億円以上最近1年間の利益1億円以上-
財務状態純資産50億円以上純資産額がプラス-

基準見直しで投資呼び込む

最も厳しい基準が設定されているのがプライム市場です。特にキーワードとなっていくのが流動性、さらにはガバナンス、この2つです。

市場に流通する可能性が高い株式のことを流動性の高い株式といいますが、その時価総額がこれまでの10倍以上となる100億円以上、さらにその流通株式の比率も35%以上が求められるというかなり厳しい基準です。

流動性という言葉が出てきましたが、これは売買をしやすいということです。ある意味では特定の株主の影響力をぐっと下げていろんな投資家が取引しやすくなる、そういう舞台を作ることでいろいろなお金を呼び込もうというわけです。

ガバナンス(企業統治)については主なものが独立社外取締役が全体の1/3以上にしなさい、さらにはさらには英語での情報開示も求められています。

こうした厳しい基準を上場企業にどのように受け止められているのかというのが気になるところです。プライム市場の選択を表明している武田薬品工業の担当者の方に話を聞きました。

「プライム市場」選択企業は「投資対象のきっかけに」

武田薬品のグローバル本社で行われていた会議。

経営企画や財務など部署横断でチームを組み、東証1部からプライム市場への移行作業を行ってきました。

世界中にいる投資家や株主への今後の対応、アクションプランを話し合っていきたい。

いろいろなガバナンス(企業統治)に関する重要な情報を開示してきたので、いろいろな問い合わせや質問を受ける機会が増えるだろう。

取締役16人のうち12人を社外取締役が占めるなど以前からガバナンス体制を強化してきたほか、情報開示をさらに進めた武田薬品。東証の市場再編に期待を寄せています。

武田薬品工業の佐藤弘毅コーポレート ストラテジー オフィサー。

国内外の投資家にとって非常に分かりやすくなったのが今回の再編の大きなポイントであると理解している。

引き続き積極的な情報開示を行こなっていきたいと思っているし。

結果的にガバナンス(企業統治)強化につながって、より投資家にとって投資対象となるきっかけになるのではないか。

東証再編で日本経済は!

あえて「スタンダード」選択も

ガバナンス基準の強化というのが出てきましたが、これは要するに企業の経営をガラス張りにする、透明にするという話です。企業は経営でリスクを取るから、どんなプロセスでそのリスクを負っているのかを投資家は知りたいわけです。それを分かりやすく意義はとても大きいと思います。

ただこのプライム市場は非常に厳しい基準が設けられているので、この基準を満たすためには当然コストも掛かるわけです。

実際にこのような数字があります。去年7月に東証が公表したプライム市場の上場基準に適合しない東証1部企業は2,191社のうち664社。およそ3割ありました。そのうち278社がスタンダード市場への上場を選択しているということです。

東証1部からスタンダード市場への上場を選択した企業を取材するとこのような声が聞かれました。

埼玉県の電源機器メーカー「オリジン」です。

企業として高い目標を掲げるのは当然だが「健全な背伸び」の範囲か見極めるべき。現時点では収益基盤の再構築が最重要課題。

さらにもう1社。新潟県に本店を置く地方銀行の大光銀行です。

当行はあくまで国内のみで営業活動を行う企業。経営資源は地域のために振り向けたい。

こうした各企業の判断に対し、東証の山道社長はこのように言っています。

「プライム」「スタンダード」「グロース」は横並び。企業価値向上のため適した市場を選ぶ。今までとは違う。

このスタンダード市場を選択する企業がある一方で今回の市場再編では東証にプライム市場に不適合と判定されていても事業計画書を提出することでプライム市場に申請することができます。

それが経過措置と呼ばれるものですが、その経過措置を利用する企業を取材しました。

経過装置でプライム市場申請!「世界の投資呼び込みたい」

巨大マグロに2,000匹のフグ。

鮮魚の養殖を手がける東証1部企業がプライム市場不適合に。

それでもプライム市場を目指す理由とは…

東京一番フーズの坂本大地社長。

世界の資本を集めるにはプライムにいないといけない。

都内の倉庫にやって来た大型トラック。

荷台から出てきたのはフグです。

東京一番フーズの良川忠必常務。

長崎から着きたてですごく元気がいい。素晴らしい状態。

ここは「とらふぐ亭」など外食チェーンを展開する東京一番フーズの水産加工場。長崎の養殖場などからフグが届き、2,000匹が水槽で出荷を待ちます。

現在、東証1部に上場する東京一番フーズですが流通株式時価総額などの項目でプライム市場の基準を満たしていません。

それでも社長の坂本さんは事業計画書を提出し、プライム市場へ申請する決断をしました。

一番の理由は2017年にアメリカに支店を出している。

世界とビジネスをやるのは最初から決めていた。

世界の資本を集めるにはプライムにいないといけない。

ニューヨーク・マンハッタンで運営する和食店は鮮魚を目の前で捌くスタイルが人気で、コロナ禍でも売り上げを伸ばしています。

グローバルでの事業拡大を見据え、坂本社長は2020年にコロナで打撃を受けた老舗すしチェーン「寿し常」の買収にも踏み切りました。

正月はどうか?

あすとあさってが土産のピーク。

自社養殖場で育てた魚を買収したすし店に提供するといった相乗効果で成長を目指します。

どれだけ成長して株主に認めてもらえるかがポイント。

世界の投資家を呼び込めるような企業規模になっていきたい。

東京一番フーズは7年で売り上げを現在の2倍以上に増やし、企業価値を高めることでプライム市場に適合する時価総額に達する計画を立てています。

ただ経過措置の期限が決められていないことが懸念材料だといいます。

それについて東証の山道社長は…

どれぐらいの経過を観察するのか、その進捗状況をどうチェックするかは今後、有識者の意見も聞きながら決めていきたい。

「流動性などの基準がさらに上がることも?」

それは何も決まっていないし、全く議論もしていない。

「可能性はゼロではない」ことは言うことができる。

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