国と一体となって一部の株主に圧力をかけたと指摘された東芝が6月14日に会見を開き、企業統治や法令遵守の意識に問題があったことを認めました。
その上で副社長ら4人を退任させることを発表しましたが、物言う株主との対立関係は解消せず、経営体制を巡る混乱は収まる気配を見せていません。
株式会社東芝
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険しい表情で姿を見せた取締役会議長の永山治氏。
経済産業省との関係、調査報告書を見ると相当厳しいやり取りがあったように見える。
担当している人たちのガバナンス意識、コンプライアンスが欠如していたと言わざるを得ない。
東芝に企業統治や法令遵守の意識が欠如していたと総括した永山議長。
そのワケは…
問題の発端となったのは去年開かれた東芝の株主総会。
当時、東芝の経営陣と対立し、物言う株主として知られる海外ファンド「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」は自らが推薦する取締役の専任を提案。しかし、総会では否決されました。
この経緯を調査した外部の弁護士は背後で東芝が国と一体となってエフィッシモの案に賛同しないよう一部の株主に圧力をかけていたと指摘したのです。
調査報告書をまとめた中村隆夫弁護士、
株主総会が公正に運営されたものとは言えない。
問題の構図はこうです。筆頭株主であるエフィッシモ推薦の取締役候補が専任されることを嫌ったと見られる当時の車谷社長ら東芝経営陣は経済産業省に支援を要請。
経産省と一体となって動いたと指摘されています。
経産省はエフィッシモの案に賛同すれば外為法に基づく何らかの措置が取られることを海外の株主側に示唆。
これにより一部の株主が議決権を行使しなかった実態が明らかになったのです。
これを受けて永山議長は、
前代表執行役社長CEOである車谷氏の存在が一つの要因であることは否めない。
現在の経営の混乱を招き、株主の皆さまの信頼を損なったことに関し車谷氏の責任は決して無視できない。
一連の問題の背景には前社長の車谷氏に責任があると批判。責任の所在を明確化するとしました。
また今回の調査報告書によって暗雲が垂れ込めているのが今後の経営体制です。
当初、東芝の監査委員会は「総会運営に問題はなかった」との見解を示していました。
しかし4月、買収提案を持ち掛けたイギリスの投資ファンドとの関係の深さを指摘された車谷前社長が辞任。
取締役会は永山議長や大田監査委員長など主要メンバーを残して新たに13人の取締役候補を立てたのですが、これに"待った"が…
投資家の投票心理に影響を与えるアメリカの議決権行使助言会社は取締役候補13人のうち数人の反対を推奨。
さらに身内である4人の社外取締役からも「会社の提案には賛成できない」との声が挙がったのです。
こうした状況を受け、東芝は株主の信任を得るのは難しいと判断。
大田監査委員長らを25日の株主総会で諮る取締役候補者から外すことを決めたのです。
しかし…
「ガバナンスの要の議長が今回取締役会に残ることは理解を得られると考えるか?」
「自身の進退についてもう少し詳しく教えてほしい。」
私も含めて辞めるべきだというような意見が投資家からも出ているようだが、この情勢をできるだけ早く正常化するよう取締役会として対応していかなければいかない。
それを果たすのが一つの責任。
永山議長は取締役会のメンバーを再構成する方針を示し、臨時株主総会を開催すると表明。
しかし、一部の大株主からは永山議長の退任を求められるなど不安定な経営体制が続きます。
東芝の対応について政府の反応が入ってきました。経済産業省の関係者は東芝が経産省との交渉役を務めた幹部の退任を決めたことについて「結果として経産省と距離を置く内容だ」と述べました。
また国と東芝が一体となって一部の株主に働きかけたと指摘されたことについては「株主利益より安全保障がはるかに大事。またすぐに丸ごと買収案が出てくるのではないか」との見方を示しました。