4月以降も続投が内定している日銀の黒田東彦総裁ですが、その総裁を金融政策の面で大きく支えるのが副総裁です。
その候補となっているのが黒田氏の右腕と呼ばれている日銀の雨宮正佳理事、そして金融緩和を推進するリフレ派の論客として知られる早稲田大学の若田部昌澄教授です。
その若田部氏が3月5日、積極的な金融緩和を継続する強い意志を示しました。
若田部昌澄氏
衆議院で開かれた議院運営委員会に臨んだ日銀副総裁候補の若田部昌澄氏。
達成には遠い2%の物価上昇率の目標実現に向け持論を展開しました。
デフレからの完全脱却の前にいわゆる出口政策を行うことは避けなければならない。
さらに「物価目標2%の達成が難しいということなら追加の緩和策を考えざるを得ない」とも言及。
大規模な金融緩和を終わらせる出口戦略について先週、「2019年頃を検討する」という考えを示した黒田総裁に続き、若田部氏の発言で近いうちの金融緩和策の出口は見えなくなってきました。
銀行
日銀の金融緩和策で異例の低金利が続く中、苦しんでいるのが銀行です。
これまで銀行は貸出金と預金の利回りの差である利ざやで稼いできました。
ところが、その利ざやが低下を続けています。
2007年9月 | 0.59% |
2017年9月 | 0.22% |
銀行はこれまでのビジネスモデルが限界を迎えつつあり、まさに大変革の時代に突入しています。
こうした中、新たな銀行の姿を模索する動きが始まっています。
そのキーワードは「銀行がやって来る」です。
一体どういうことなのでしょうか?
WBSが現場を取材しました。
株式会社りそなホールディングス
[blogcard url="http://www.resona-gr.co.jp/"]
動き始めているのがりそなグループです。
滝沢孝祐記者、
りそなグループが2月に提供を始めたのがこちらのアプリです。銀行が手の平の上にやって来るというコンセプトです。
「りそなスマート口座アプリ」、ほかの銀行も取引ができるアプリを提供していますが、これは一味違います。
口座の動きを分析して一人一人の生活や家計の状況に応じたサービスの提案ができます。
りそなホールディングス、オムニチャネル戦略部の有井美穂さん、
興味があればすぐに定期預金を始められる。
さらに顧客は気になった内容をメールやチャットで相談できます。
りそなが作ったのは顧客が店舗に行かなくても銀行と双方向でコミュニケーションが取れるアプリ。まさにスマホが銀行になるのです。
チャットだけでは難しい相談には、
お電話ありがとうございます。スマート口座相談窓口、担当、永渕でございます。
この電話の相手、先程チャットで対応してくれた永渕さんです。顧客は同じ内容を繰り返すことなくそのまま電話で相談できます。
この永渕さん、実は、
8年程度、支店で個人客に資産運用の方法や銀行の商品を提案。
金融知識が豊富なプロの銀行員です。
りそなが新たなアプリを開発したのには狙いがあります。
りそなホールディングスの東和浩社長は、
りそなグループには1,300万人の顧客がいるが普段対話ができているのは100万人。わずか8%程度、残りの90%以上の顧客にはしっかりとアプローチできていない。
接点の薄い大多数の顧客との取引をどう拡大するのか?
チームラボ株式会社
[blogcard url="https://www.team-lab.com/"]
りそなの担当者が向かったパートナー企業、若者に人気のデジタルアートを制作するチームラボです。
りそなホールディングス、オムニチャネル戦略部の伊佐真一郎さんは、
「だから銀行はダメだ」とはハッキリと都度、指摘をお願いした。
銀行だけでは気付かない視点を彼らに求めたといいます。
チームラボの堺大輔さん、
「積立定期」、ユーザー目線では「毎月貯金する」こと。こういった表現を変えた。
こうした徹底的な細部へのこだわり、これが使いやすいアプリの秘訣なのです。
銀行と縁遠い若い世代を取り込むことを狙います。
りそなホールディングスの東和浩社長は、
銀行ではない姿、金融サービス業の姿を追い求めたい。
株式会社荘内銀行
[blogcard url="https://www.shonai.co.jp/"]
山形県鶴岡市、人口約12万8,000人の主要都市です。
地元の銀行、荘内銀行が導入したのが3トントラックを改造して支店で行う窓口業務の機能を搭載した移動店舗車です。
毎週火曜日、この地域で営業しています。
実は2017年12月、この地域にあった三瀬支店は来店客の減少などを原因に閉店しました。すでに別の銀行も撤退していて窓口業務を行う地域の銀行はなくなっています。
車とか運転できない人は誰かに頼んで連れて行ってもらわないと、そうしないと銀行に来れない。だから困る。
ここでは高齢者が多く対面での取引を求める声も根強いといいます。
車内を見てみるとコンパクトながらもまるで支店の窓口のような雰囲気。
現金の預け払いに振り込み、公共料金の支払いなどを受け付けています。
ATMだと都合が悪い時がある。今日を待って振り込みに来た。
団体の会計をいろいろと持っている。1円単位になるのでATMでできないので毎週来ている。
荘内銀行は今後、移動店舗車を活用して支店がない地域などを回る予定です。
荘内銀行、営業企画部の松田和博さん、
人口減少とか高齢化が進んでいるので、そこと向き合いながら、地域を守っていく使命もある。金融としてのサービスをここで維持していきたい。
実はこうした移動店舗車、ここ数年で全国で導入が進んでいます。
全国の地銀や信用金庫などに車を販売するオリックス自動車によると少なくても全国で100台程度の移動店舗車が導入されています。
オリックス自動車の香田章親さんは、
フェイストゥフェイスの目線を忘れた段階で地銀の存在価値がなくなってしまうことに地銀は危機感を抱いている。店舗の維持が難しい中で移動店舗車を巡回して維持する動きに変わってきている。その結果、逆にコストを圧縮できて来店者数も増えた話も聞いている。