空飛ぶクルマ。
ロボット犬。
自動運転。
中国のテック企業を追いかけてきた「中国Tech」。
アメリカと世界の正先端を競う一方、習近平政権による圧力。
果たして中国テック業界はどうなるのか、2022年を展望します。
2020年8月にスタートし、中国のテクノロジーの最先端を伝えてきた「中国Tech」。20回目となる今回は中国テック業界は2022年どうなるのかです。
これまでさまざまな企業や技術をお送りしていきましたが、いま中国のテック業界は政府による規制強化などで大きな変化を迎えています。
取材した企業のその後を追いました。
政府規制の摘摘 その後は?
中国Techで度々取り上げたのが配車サービス大手の「摘摘(ディディ)」。
こちらは開発中の自動運転タクシー。
試験エリア内という条件付きではあるものの完全自動運転のレベル4を実現しています。
先行投資にも積極的な摘摘ですが、モーサテでは本業の配車サービスでの不可解な価格設定を取材しました。
目的地に着きました。ほぼ同じ時間に乗りましたが僕が払った金額は19.71元(354円)。
助手の徐さんは9.55元(172円)でした。
同じ区間を同じ日時で利用したにも関わらずお客様によって大きく料金が違う結果に。
中国では高級品にあたるアップル製のスマートフォンを使っていると他のメーカーよりも価格が高くなるなど、お客様のあらゆるビッグデータをもとに価格差別が行われているのです・
その摘摘がいま窮地に立たされています。去年6月にニューヨーク市場に上場したものの、その直後に違法な個人情報収集を理由にアプリの新規ダウンロード停止を中国当局から命じられます。
上海支局の菅野陽平記者。
およそ半年経った今でもアプリストアで摘摘と検索してもアプリは出てきません。同業他社のアプリばかりです。
新規顧客を増やすことが出来ない状況が半年以上も続いているのです。
さらにアメリカへの情報流出懸念を解消すべく去年12月にはニューヨーク市場での上場廃止手続きを始めると発表しましたが、ドライバーからは…
以前は1日1,000元を超える売り上げ。今は700~800元。
摘摘がよくない場合、他に変える。複数サービスに登録している人もいる。
一部ではドライバー離れも起き、摘摘の総収入は規制前に比べて10%以上も減少しています。
ゲーム業界 起死回生策は日本?
一方、政府の規制は中国Techで取材した別の業界にも。
およそ5兆円もの巨大産業に成長したゲーム業界です。制作現場では技術革新が進んでいます。
画面の中で戦うのは大勢の兵士。AIによって1人1人に頭脳を持たせ、脚本を与えるだけで戦いのシーンを演じてくれるのだといいます。
一方、こちらはeスポーツ選手の育成学校「上競 e-sports プロ訓練営」。
およそ60人の中高生が1日12時間もの訓練に励んでいました。
当時16歳の劉さん、高校を辞めプロのeスポーツ選手を目指していました。
授業の合間、テレビ電話で話すのは故郷、東北地方にいる母親。
あなたが立派になったら家を買い替えよう。足が寒くてしょうがない。
わかったよ。
しかし、このゲーム業界にも政府の規制が。
1年ぶりに劉さんに話を聞くと…
雲南の試合で優勝したけど、今はオンラインの試合ですら未成年は出られない。
実は中国政府は去年9月、ゲーム会社に対し未成年へのサービスの提供を週末と祝日の夜1時間だけにするよう要求したのです。
規制の余波で劉さんが通っていた育成学校は閉鎖。未成年の大会への出場も禁止されたため今は実家で暮らしているのだといいます。
試合に出たいし、クラブに入りたい。より大きな舞台で活躍したい。
規制されたのはゲームの時間だけではありません。
中国では政府が承認したゲームしかリリースすることは出来ません。実際にリストを見てみるとゲームの名前、作った会社、ライセンス番号が書かれています。こうした新たなライセンスの発行は去年の7月21日を最後に止まっています。
かつてはほぼ毎月ゲームが承認されていましたが、今は凍結状態に。
中国メディアによるとこうした規制の影響で去年だけで2万社以上ものゲーム関連企業が倒産したといいます。
その一方である動きも。
ここは広東省広州にあるゲーム売上2位、ネットユースのグループ企業「有道Ads」。
有道Adsの曾祥龍さん。
こちらが運営チーム。世界各地区を担当するメンバーがいる。
ゲームで提携、PRで携わる地区は世界で50を超えた。
行っているのは国産ゲームの海外進出の支援。SNSでインフルエンサーを使った宣伝を行っています。
支援するゲーム関連企業は100社以上。日本も有力な進出先です。
日本のトップ100のランキングのうち30個が中国産のゲーム。
中国産ゲームの海外での国別収入ランキングは1位がアメリカ、2位が日本。
規制により中国国内での成長が厳しくなり、中国産のゲームの海外進出は一層進んでいます。
現在、日本はアメリカに次いで2位の輸出先ですが、今後は日本市場に期待をかけています。
日本のプレーヤーには特徴がある。ゲームの継続率が非常に高く、1人当たりの支払い能力はアメリカよりも高い。
日本は海外輸出で第1候補にする市場。