町工場が集積することで知られる東京・大田区ですが、こちらにも新型コロナの影響は広まっています。
大田区の工業連合会に実施したアンケートではほとんどの企業がこれから経営に影響が出てくると心配している状況です。
こうした危機の中で大田区の町工場は多方面の新しいつながりを持つことで乗り越えていこうと考えています。
変わる町工場を取材しました。
株式会社東新製作所
[blogcard url="https://www.toshin-ss.co.jp/"]
従業員およそ30人の東新製作所です。
社長の石原幸一さんはいわゆる2代目。
昭和50年からなので45年です。
得意としているのは金属の加工や組み立てで完成品メーカーからの下請けが中心です。
新型コロナの影響で本社工場部門の売り上げは1年前に比べおよそ2割減となっています。
こちらは間もなく完成予定の空気清浄機の一部分です。脱下請けを目指し自社製品として開発中のものです。
大変な時期、リーマンショック・東日本大震災を経験。
それを乗り越えてきた経験を次の時代、新しいステージに自分たち自身をのせないと時代から必要とされない存在になってしまう。
ただ1社のみで最先端技術を搭載した製品を作るのは難しいのが現実です。
そのため空気の浄化に有効なプラズマの研究者と共同で開発しました。
紫色のプラズマが空気中のウイルスなどを直接殺菌する最新の技術を採用しています。
樹脂の部分は大田区の大森の会社。
バネみたいになっているところも大田区の会社。
電気店も含めて10社くらいが関わっている。
自らがデザインや販売にも関わることで品質やコストの管理にも目が届くようになったといいます。
販売力強化のため今力を入れているのがネット通販のサイトの運営です。
知人が経営する水産会社のウニなどを販売しています。
海外に物を売ることが将来的にものづくりの命題になってくる。
石原さんの会社でこちらの男性が操作しているのは…
これは月面探査車。
NASAの月輸送ミッションと契約ができた。
来年、月面探査をする計画。
8年前、ロボット開発の会社を大田区に立ち上げた中島紳一郎さん。
日本初の月面探査のロボットで倒れても起き上がりどんな場所でも走り続ける構造です。
小型カメラで撮影した月の映像を地球に届ける計画です。
探査車の重量は600グラム。さらなる軽量化を進めるためイギリスのスタートアップ企業との連携を予定していますが、新型コロナの影響で海外渡航などに制限が発生しています。
超小型月面探査車の事業化を支援したのが石原さんでした。
石原さんはギャレット・レオパルディさんをアメリカ企業との交渉役に任命しました。
小さい中にもたくさんの機能がある。売り込むのは簡単だった。
明らかに違うのは発注者と受注者だと利害関係になる。
我々は一体になって包括的に共同でやって、ある段階まで押し上げる。
その先は契約に基づいて利益を分配しようという考え。
金融機関や投資家などに働きかけ、ファンドを組成し資金調達のスキームを構築する考えです。
プロトタイプに資金が入らないと開発できない。
製造側も一緒に資金調達すると資金を出す側が非常に安心。
現在のロボットは樹脂製です。ただ100度を超える月に運ぶため来年までに金属製にする必要があります。
それを解決するのがこちらの機械です。日本でも数少ない金属用3Dプリンターです。
設計データを入力すればどんな複雑な金属部品も短時間で作ることができます。
ものすごく高い値段。
パートナーシップでやっているのでできる。
スタートアップの支援は大田区を上げてのことです。今月本格稼働する羽田イノベーションシティ。
大田区と民間が連携し、自動運転やロボットなど最先端技術の発信拠点とする考えです。
スタートアップ企業の集積を目指します。
石原さんの会社もここにスタートアップ支援の施設を立ち上げます。
新製品の展示場や動画のスタジオも設置します。
「スタジオ、どの辺に?」
この辺を考えている。ユーチューブ向けの配信を予定。
I-OTAは2年前、石原さんの会社など3社が発起人となり立ち上がり、5社が運営しています。
I-OTAが窓口となり様々な案件を引き受けています。
代表は下町ボブスレーで委員長を務めた國廣愛彦さんです。
連携を円滑にするにはどんなIT・IoTツールを使うか。
情報共有するための議論をしている。
I-OTAの3社がハブになる。今はもっと数が増えた。
ハブになったら大田区の3,000社がものづくりとして幅のある対応ができる。
自らの高い技術をベースに多方面のつながりを構築することでこれまで取り組みことが難しかったプロジェクトにチャレンジする。大田区では今そうした強い自信が形成されつつあります。