日銀が金融緩和策の修正を発表しました。予期せぬ決定に動揺が広がっています。
これまでおよそ10年間、大規模な金融緩和を続けてきた日銀の黒田総裁が金利の上限を引き上げる決断を下しました。サプライズともいえる政策変更に株価や為替が大きく動き、金利も上昇しています。
今後は住宅ローンなどにも影響を与える大きな決断に、なぜいま踏み切ったのでしょうか。
"黒田ショック"で市場混乱
円安は?住宅ローン金利は?
午後3時半。
日銀
黒田総裁

緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、一部見直すことをあわせて決定した。
大規模な金融緩和策を修正することを決めた日銀。
これまで長期金利は±0.25%程度の変動幅で推移するよう調節するとしてきましたが、この変動幅を±0.5%程度に変更したのです。
この発表を受けて反応したのが為替市場。
マネーパートナーズ
チーフアナリスト
武市佳史氏

全く想定していなかった。
午後から半休を取ろうと思っていた。
市場関係者にとってもサプライズとなった日銀の発表。
緩和策の修正を発表する前、1ドル137台で推移していましたが、一気に5円以上円高が進みました。
市民

海外旅行に行くのはいい状況。
市民

今年はすごく為替の動きがあったので、特に中小企業の人などが大変。
さらに急上昇したのが低い水準に抑え込まれていた長期金利。およそ7年ぶりの水準となる0.460%まで上昇しました。
大きな転換点を受けて住宅ローンへの影響を心配する人も。
市民

住宅ローンを抱えているので長期金利がどう変動するかがすごく心配。
日々の生活からすると長く払っているものなので不安。
市民

0.4~0.5%くらいだといいが、1%とかになってくるととてもきつい。
35年でローンを組んでいてきついので返済計画を見直さないといけない。
一般的に住宅ローンの金利は長期金利を目安に金利が決定されます。長期金利の上昇が続けば住宅ローン金利も上昇する可能性があるのです。
長期金利の上限を引き上げたことで東京株式市場では景気悪化を懸念した売り注文が殺到。日経平均株価は一時800円以上値下がりしました。
金利上昇は今後どうなる?
今回の黒田総裁のサプライズに岸田総理周辺は不快感を示しています。
岸田総理周辺

全く知らされていないし驚いた。株価も下がって迷惑だ。
大規模緩和の修正に踏み切った日銀。黒田総裁は…
日銀
黒田総裁

まず今回の措置は金融緩和の効果が円滑に波及していくようにする趣旨で行うもので、利上げではない。
景気には全くマイナスにならないと思うし、"引き締める"と言うつもりはない。
今回の修正は「利上げではない」と強調した黒田総裁。
日銀
黒田総裁

金融政策の枠組みや出口戦略等について具体的に論じるのは時期尚早。
また長期金利の許容変動幅については「さらなる変動幅の拡大は必要ないし、今のところ考えていない」と述べました。
大江麻理子キャスター
世界的な景気減速に備えるためにも日銀として大きな波が来たときのために政策の余地を広げておくという考えもあるということなのか?

日銀
黒田総裁

世界経済の不透明性というのはあるし、リスクがあるということは事実。
必要があれば躊躇なく金融緩和を拡大することも十分可能。
大江麻理子キャスター
一旦上限金利を上げてしまうと変動幅の拡大を催促するような形にならないか?

日銀
黒田総裁

市場が何か催促することはいつでもあるが、客観的な情勢があるかと言われると、そういう情勢はあまり考えられない。
"異次元緩和"続けた10年
ついに金利上限引き上げ
日銀による大規模な金融緩和。始まりはリーマンショックや東日本大震災の影響で景気低迷が続いていた10年前に遡ります。
当時、デフレ脱却を掲げ発足した安倍政権。
安倍総理(当時)

金融政策において大胆なやり直しを行うものであり、金融政策における画期的な文書だろう。
日銀は政府と共同で2%の物価安定を目標とする共同声明を作成。そのかじ取り役として総裁に就任したのが元財務省財務官の黒田氏でした。
日銀
黒田総裁(就任前)

物価安定目標を1日も早く実現することが何より重要な使命となる。
2年程度での目標達成を目指す黒田総裁は就任直後からさまざまな金融政策を打ち、二人三脚でアベノミクスを進めることに。その象徴が…
日銀
黒田総裁

次元の異なる、あるいは次元の違う金融緩和だ。
異次元の金融緩和、通称"黒田バズーカ"です。
日銀が大量の国債を購入する量的緩和やマイナス金利導入などを次々に実施。
その結果、マーケットには投資マネーが溢れ、日経平均株価はこの10年で2倍以上になるなど株式市場は湧き上がりました。
日銀が金利上限引き上げ
今後どうなるニッポン経済
その一方で進まなかったのが景気の回復。消費税増税の影響もあったものの物価目標2%には何年経っても達成されないままに。
そうした中、今年はロシアによるウクライナ侵攻が世界的な物価高をもたらし、日本でも4月、ついに物価上昇率が2%を超えました。
しかし、黒田総裁は…
日銀
黒田総裁

現状維持とすることを賛成多数で決定した。
各国の中央銀行がインフレを抑えようと金利の引き上げを進める中、日銀だけが金融緩和を続けてきました。
その結果、為替市場では金利が上がらない円が一気に売られ、円安が急激に進行。10月には一時1ドル150円台と32年ぶりの円安ドル高水準に達しました。
歴史的な円安により経済界も混乱。
黒田総裁に対する批判の声が上がり、10年間の金融緩和の根拠となっていた「政府・日銀共同声明」について見直す動きも取り沙汰されました。
来年4月に任期が切れる黒田総裁。12月20日の会見でも来年以降も引き続き大規模な金融緩和策が必要だと強調しました。
日銀
黒田総裁

来年度も賃金の上昇に伴って、持続的安定的に2%が実現できる状況にはまだなりそうもない。
大幅な金融緩和の政策にしても、それを直ちに見直すような状況にない。