シリーズ「グリーン革命の未来」。
脱炭素、日本にとってこのカギを握るのが使用時にCO2を排出しない究極のエネルギー「水素」です。
一方で実はその製造過程で多くのCO2を排出するという課題が普及の壁となっています。
その壁を打ち破ろうと動き出した日本の最先端技術を追いました。
神姫バス株式会社
[blogcard url="https://www.shinkibus.co.jp/"]
世界遺産、姫路城。
その城下町を今月からある新しいバスが走り出しました。
兵庫県を中心に700台ほど運行するこちらのバス会社が西日本で初めて導入したのが水素で動く燃料電池バスです。
「電源入りました?」
もうかかっています。
びっくりするより先についていかないと。
エンジンは無く、動力は燃料電池が生み出す電気。
走行中の振動や騒音がほとんどありません。
静かで揺れない。
西日本初なんだって。
そうなんですか。
話のタネになるわ。
今回の水素バスの導入は事業者にとっても悲願だったといいます。
神姫バスの小森亮介さん、
バスは昔は黒い煙を出して環境に悪そうなイメージがあった。
対応しなければ企業としても残っていけない。
水素は空気中の酸素と反応させるとエネルギーを生み、排出するには水だけ。究極のエネルギーとも呼ばれています。
脱炭素のカギを握る存在ですが、実はその水素を作り出す方法に大きな壁があります。
「水素は本当に環境に優しいのか?」
梶山弘志経済産業大臣、
どういった由来の水素かがEUなどで議論されている。
水素がきれいでもつくる過程で化石燃料を使っていたらCO2を放出する。
現在主流の水素の製造方法が化石燃料から水素を取り出す方法。その過程で多くのCO2を排出するのが課題になっています。
国際間で議論をしていくことになる。大気中にCO2を放出しないのが鍵。
その課題をいち早く解決しようとある世界最大級の施設が去年誕生しました。
福島水素エネルギー研究フィールドです。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)や岩谷産業などが建設したオールジャパンの施設。
東京ドーム4個分の相当する太陽光パネル。
そして施設の中枢がこの水素製造装置です。
ここで行われているのは再生可能エネルギーを使って大量の水素を作り出すというもの。
太陽光発電の電力を使い水を電気分解することで水素と酸素を分離する仕組みです。
NEDOの大平英二さん、
再生可能エネルギーから生まれる電気を使って水素をつくる。
製造時の二酸化炭素(CO2)の排出量を抑えることができる。
化石燃料から作る水素がグレー水素と呼ばれる一方で製造の過程でCO2を排出しない水素はグリーン水素と呼ばれ区別されています。
このグリーン水素こそが脱炭素の壁を打ち破る存在として注目を集めています。
トータルでCO2フリーなエネルギーシステムをつくる。
日本は世界でトップレベル。世界も日本の動向を注目している。
世界でクリーンな水素の開発競争が加熱する中、新たな技術が地方企業から生まれようとしています。
社員わずか7人の会社、アルハイテック。2013年に設立されたベンチャー企業です。
アルハイテックの水木伸明社長、
この装置はトヨタと共同開発している。
水木さん、この装置でトヨタの工場から出るあるものを使って水素を発生させるといいます。
見せてもらうと…
工場から出るアルミくずで水素を製造する。
トヨタの工場でエンジンを削る際に出てくるアルミくず。
そしてこちらの容器に入っているアルハイテックが開発した特殊な液体で化学反応を起こし水素を発生させます。
理科の実験で習っている。その応用編。
アルミと水酸化ナトリウムを反応させて水素を発生させる実験。原理は同じだといいます。
この反応液はアルハイテックの肝。100回は繰り返し使える。
新開発の反応液は何度も使えるので水素の製造コストが抑えられます。
さらにアルミくずから水素を発生させるので新たなCO2も排出しません。
環境面でも大きなメリットが…
カップ麺のふた、これはアルミです。
このようなゴミがたくさんある。
家庭のゴミからアルミだけを取り出す装置も開発しました。
リサイクルしたアルミから水素を製造する小型の装置を10月にも発売する予定です。
この音は水素が発生している音。アルミごみがエネルギーに変わる。
水素は大量輸送のために圧縮する必要があるほか、供給設備にコストがかかるため普及にはまだまだ時間がかかります。
そこで水木さんが考えるのは水素製造装置を街中の必要な場所に設置する仕組み。
水素ではなく軽くて扱いやすいアルミを運びます。アルミから生み出した水素で学校の電力を賄ったり、水素ステーションで燃料電池車に使うアルミ水素社会です。
世の中で進む"水素社会"は水素の貯蔵・輸送が課題。
この問題を解決することで水素社会が広がりやすくなる。
アルハイテックの地元、富山県知事は…
富山県の新田八朗知事、
富山県のみならず日本全体、世界にも貢献できる技術。
こういうベンチャー企業を富山県は応援していく。