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[WBS]なぜミルク余りに?生乳大量廃棄の危機[株式会社ニュー・オータニ]

2021年12月20日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

今週末はいよいよクリスマスですね。クリスマスには欠かせないケーキ作りも最盛期を迎えています。

そのケーキに欠かせないのが生クリームです。いまこの生クリームや牛乳の原料になっている牛から絞った生乳が大量に廃棄される恐れが出ています。

なぜ牛乳"大量廃棄"の危機!

生産増なのに…外食需要減

12月20日、都内のホテル「ホテルニューオータニ」で始まったのはクリスマスケーキの受け渡し。

そのケーキにある異変が起きていました。

大きなイチゴにたっぷりの生クリーム。

例年はケーキのクリームにアーモンドミルクや豆乳なども使っていましたが今年は生乳100%の生クリームだけを使ったものを中心に販売しています。

そのワケは…

ホテルニューオータニ 広報マネージャー、片岡慎一郎さん。

生乳の消費量が大きく減っている話を聞いてホテルとして役に立てることがないか。

生乳をつかったクリスマスケーキを中心に販売を強化している。

新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に外食などでの生乳の需要が減っていて、アメリカでは去年、牛乳が大量に破棄される問題が発生。今年、日本でも同じ懸念が生じているのです。

さらに専門家は日本特有の事情もあるといいます。

北海道大学大学院 農学研究院、清水池義治准教授。

バター不足が発生したことは記憶にあると思うが、官民あげて生乳の生産を増やそうと対策をずっとやってきた。

その効果がようやく去年、今年と出てきて、生乳の生産量が非常に増えてきている。

バター不足を解消するための生産強化が新型コロナと重なり裏目に出たというのです。

業界団体は5,000トン近い生乳が年末年始にかけて余る見通しだとしています。

この状況を受けて、金子農水大臣なども、小池都知事も…

政府や自治体は牛乳の消費を増やしてほしいと必死にアピールしています。

メーカーは生乳多い商品発売

乳業メーカーも牛乳の需要拡大に向け動き始めています。

明治では今日から牛乳の消費を喚起するプロジェクトを開始しました。

明治おいしい牛乳を販売している明治。

レスリング金メダル獲得の吉田沙保里さんを起用しPRするほか…

今回のプロジェクトの一環として牛乳の側面に寒い時期でも牛乳が飲めるようなレシピを掲載していて、一部店舗ではこのレシピに使うチョコレートもセットにしているということです。

またホームページ上ではおよそ500の牛乳を使った料理レシピを公開しています。

明治 牛乳マーケティング部、櫻井貴浩さん。

今年はそこまで巣ごもり需要もない。

牛乳を料理に使うことは、まだ家庭に浸透していない部分がある。

もっと拡大していけたらいい。

牛乳は長期保存ができないためメーカー側は危機感を強めていますが、明治はチーズやバターなど保存も効く加工品も手掛けています。

「加工品にはできないのか?」

バターやチーズ、生産量を増やしているが、年末年始もフル稼働させても工場でまかないきれない量が余る。

すでに工場の製造能力を超えた生乳が余っているというのです。

明治以外でも全農では一般的なミルクティーより牛乳を多く使った商品を今月から販売。

またローソンでは12月31日から2日間限定でホットミルクの価格を半額の65円で販売します。

「悔しい」酪農家の苦悩

正月もゴールデンウイークも何もない。酪農は待ったなし休みなし。

千葉県で100頭の牛を飼育する奥野仁さん。

生乳の大量廃棄の可能性に悔しさを滲ませます。

牛が命を削って出しているもの、それを廃棄というのは悔しいし悲しい。

酪農家にとってここ数ヵ月は試練の日々だったといいます。

世界的なコンテナ不足を背景にアメリカからの輸入に頼る牛の飼料価格が高騰。

こちらの牧場では利益がコロナ前に比べて半減しました。奥野さんは政府の対応の遅れに怒りを覚えるといいます。

コロナ禍で学校給食がなくなったり、供給過多はちょこちょこあった話。

「何を今さら言っているんだ」と、絶対に前もってわかることなので。

「もっとできることはあっただろう」と政府には言いたい。

専門家は来年以降もこの状況が続く可能性があると指摘します。

1年後、外食・観光需要がコロナ前に戻っているか、それはなかなか厳しい。

来年もまら同じような事態になる可能性がある。

農家が赤字になれば逆に生産が停滞してしまい、生乳が不足に転じる可能性がある。

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