
イギリスで経済の混乱が続いています。政権を担う与党・保守党は年に1度の党大会を開催し、先月就任したばかりのトラス首相がスピーチで党の結束を呼びかけました。しかし、深刻な財政悪化を招きかねないとされるトラス政権の経済政策に国民からの反発も強まっていて混乱の長期化が懸念されています。党大会が開かれた現地から中村航記者の報告です。
イギリス トラス政権に抗議・非難
発足約1ヵ月で試練に直面
ロンドン支局
中村航記者

イギリス・バーミンガムです。
4日間に渡った党大会は地元紙に30年に1度の混乱した大会と表現されました。
その中でトラス首相のスピーチがあり、とにかく経済成長を重視するという姿勢が強調されました。
イギリス
トラス首相

経済において3つの優先課題がある。成長、成長、成長だ。
人々にお金が行き渡ること、企業が雇用を生むこと、将来の計画を立てて安全に暮らせることこそが成長だ。
トラス氏のスピーチは成長を加速する経済政策が全てを解決するという点を強調し、足元の減税政策が正しいと何度も訴えました。
また国内で頻発している鉄道などのストライキやそれを支持する最大野党・労働党を念頭に置き「反・経済成長連合」と呼び非難しました。
しかし、そんな声とは裏腹に党大会の会場周辺ではトラス政権に対する抗議活動が見られました。
市民

私たちの権利と自由を奪い、経済と生活を壊している。
市民

保守党はエリートたちのことばかりで労働者階級のことを気にかけてもいない。
さらに党内の有力議員からも猛烈な批判を浴び、会場の外にも中にも敵だらけ、四面楚歌のような状態に陥っていました。
そしてスピーチの最中にはこんな場面も。環境保護団体「グリーンピース」のメンバーが乱入。「誰が投票した」と掲げています。党内の選挙のみで国政選挙では選ばれていないトラス首相を揶揄していたのです。
政権発足からわずか1ヵ月、なぜこうした状態になってしまったのかその経緯を取材しました。
イギリス トラス政権に"市場の洗礼"
経済政策の混乱で支持率下落
イギリス国内の混乱の発端は9月23日に発表した経済政策です。
イギリス
クワーテング財務相

高い税金は労働意欲を減退させ、投資を抑制し、事業を妨げるとわれわれは考えている。
首相が言ったように税制を見直し、よりシンプルでよりダイナミックで家庭に耕平なものにする。きょうがその第一歩だ。
トラス首相が公約としていた9兆6,000億円規模のエネルギー高騰対策と7兆4,000億円規模の減税政策。
これに反応したのが対ドルでのポンド相場です。
エリザベス女王の国葬が行われた9月19日以降、減税政策の内容が明らかになるにつれてみるみるポンドが下落。対ドルで過去最安値をつけました。
財源を明確に示さない巨額の経済政策に対して財政悪化への懸念が強まり、市場の洗礼を浴びたのです。
28日には中央銀行のイングランド銀行が財政悪化懸念で国債の金利が急上昇したことを受け、金融緩和につながる国債の買い入れを発表。一時的に現在の金融引き締めの方針とは正反対の対応を打ち出しました。
ロンドンでアメリカ食品を扱うお店を訪ねると…
アメリカ商品店スタッフ

ポンド価格をチェックしている。上がったり下がったりしているから。
店の商品はほとんどがアメリカ産でドル建てでの仕入れやドル建てでの輸送費などポンド安になればなるほど利益が圧迫されます。今後は値上げせざるを得ないといいます。
アメリカ商品店スタッフ

5%は値上げになるかな。
番組スタッフ
5%で済むか?

アメリカ商品店スタッフ

もっと高くなるかも。
市民にも動揺が広がる中、3日にクワーテング財務省は富裕層の優遇策として非難されていた年収およそ2,450万円を超える部分の所得税率を引き下げる減税案を撤回。
政策の変更が相次ぐ状況はUターンと揶揄されるなど政権への信頼が揺らいでいます。
イギリス
クワーテング財務相

10日前に出した案が少し波乱を起こしたことは分かっている。
一部を見直すことで成長に向けた主な戦略に集中したい。
与党・保守党の支持率は直近で21%まで急落する一方、最大与党・労働党の支持率が急上昇し54%。早くも次の選挙での政権交代が聞こえるとまで現地では囁かれています。
イギリス
トラス首相

この数週間の混乱から分かるように変化には混乱がつきもので、誰もが変化に賛成するわけではない。だが結果として誰もが恩恵を受ける経済。
それが私たちの計画だ。