中国のテクノロジーの最先端をシリーズでお伝えする「中国Tech」。
中国では少子化が進む一方でまもなく本格化する高齢化も社会課題となっています。
そこで今、政府はIT技術を活用した介護に力を入れています。"スマート養老"と呼ばれるその取り組みを取材しました。
長春仁大医院
中国東北部に位置する吉林省長春市。
市内のマンションに暮らす唐さん夫妻。
結婚して50年以上の二人には今ある願いが…
私たちは長年連れ添っていてお互いに思いやりがある。
自宅はどんな老人ホームよりはるかにいい。
中国人は自宅で老いていきたい。
76歳になる妻、孔祥菊さんは心臓に持病があります。一度は老人ホームへの入所も考えましたが住み慣れた自宅で暮らし続けるためあるハイテク技術を導入しました。
布団の下から出てきたのは灰色の小さななマット。
睡眠の状態、例えばいびき、夜に何回起きるかなど全部記録される。
呼吸が不規則な場合も記録される。
マットのセンサーが検知しているのはマットから出入りする空気の量。睡眠中の心拍数などのデータを収集します。
さらにこちらは胸につけているという小さなセンサー。
これは"心電服"、どこでもいつでも心拍が測れる。
鼓動が速い、動悸があるなど問題があるとすぐに連絡が来る。
先程のマットと違い、こちらは24時間計測。収集したデータはインターネットを通じてある場所で管理されています。
夫婦の自宅から車でおよそ20分の場所にある病院「長春仁大医院」。介護施設と高齢者向けの診療科を併設しています。
中を進んでいくと…
長春仁大医院の企画部、姜明マネージャー。
こちらは私たちの監視コントロールプラットフォーム。
表示されているのはこの病院で管理する高齢者の情報。こちらは先程の孔祥菊さんの管理画面です。
胸に装着していたセンサーが計測した心拍数がリアルタイムで表示されています。さらに心臓や脳の血管などの発病リスクが高くなる睡眠中のデータを重点的に収集。
こちらはその中の一つ呼吸のデータ。
認知症に影響を与えやすいとされる睡眠時無呼吸症候群の症状もひと目で分かるようになっています。
さらに…
結論も出す。
血管内皮の機能が低下。心臓の血管にリスクありと書かれている。
こちらの病院では去年、このシステムを導入。およそ250人もの在宅の高齢者を一括で管理し、異常があればすぐに対応できる体制を整えています。
長春仁大医院の唐晨菫事長。
中国は早く極端な高齢社会に突入するかもしれない。
高齢化向けの設備、インフラ、人材の蓄積、サービスの蓄積が大量に必要になる。
極めて深刻な問題。
来年にも高齢社会に突入する中国。さらに2033年には65歳以上が人口の21%を超える超高齢社会になると予測されています。
老人ホームだけでは足りない。
将来、全家庭、特に持病持ちの高齢者の家庭はバーチャルの老人ホームになる。
在宅でも互いにつながる"スマート養老"設備の導入、プラットフォームの建設と連携は欠かせない。
ITを活用し、ネットワーク化することで在宅中心の中国流介護システム"スマート養老"を作るのです。
こうした中国のスマート養老の市場規模はこの6年で2倍以上に増え、およそ66兆円に。多くの企業が先端技術を競っています。
深圳の隣、東莞にあるこちらの会社「深圳瑞康瀚伝科技」。4年前に養老事業に参入。
尿を検知すると即座に通報するシステムやベットでの姿勢がリアルタイムで分かるセンサー付きのマットなど介護現場向けの製品を開発してきました。
一方で新たな分野にも力を入れています。こちらはセンサーとAIを使ったシステム。
深圳瑞康瀚伝科技の杨开湘総経理。
異常心電のほかに交感神経、副交感神経、心拍変動の信号も収集。
精神的プレッシャーの程度も判定できる。
対象はプレッシャーが大きく、仕事の負担が重い現役の人たち。
ビッグデータと照合してAIが病気のリスクを判定。将来、介護が必要になる高齢者を少しでも減らしたいのだといいます。
多くの中年の人は健康をさほど気にしていない。
でも仕事やライフスタイル、飲食などあらゆることが健康に影響する。
このようなシステムを通じて自分の健康に注目することができる。