北朝鮮の相次ぐミサイル発射や中国による台湾有事への懸念など日本を取り巻く安全保障環境の緊張が高まる中、自民党と公明党は10月18日に外交安全保障の長期的な指針となる国家安全保障戦略など関連する3文書の改定に向けて初めての会合を開きました。
その3文書が「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」です。
まずは国家安全保障戦略、外交及び防衛を中心に概ね10年程度を念頭に置いた基本方針です。
そしてこの戦略をもとに策定するのが防衛計画の大綱です。同じく10年を念頭に保有すべき防衛力の水準を決めます。
この大綱をもとに中期防衛力整備計画で5年間で整備する装備の数量や予算などを計上します。
大江麻理子キャスター
今回の3文書の改定はどういう意味が?

笹川平和財団
小原凡司さん

日本の防衛が何かということを明らかにするために国としての目標、それを達成するための戦略、軍事的な目標、それを達成するための戦略、その戦略を実現するためにどういう装備品が必要なのかを明確に区分することで自らの姿勢を明らかにするという意味がある。
安全保障3文書の改定の意義について内容を検討する中心メンバーのひとりである自民党の小野寺安全保障調査会長に話を聞きました。
与党"安保3文書"改定協議
日本周辺で相次ぐミサイル
午後2時すぎ、安保3文書改定に向けた初の与党協議。敵基地攻撃能力、いわゆる反撃能力の保有や防衛費をめぐる議論が焦点です。
いま日本を取り巻く安全保障環境は一変しています。
8月、中国は台湾周辺で軍事演習を実施。日本のEEZ(排他的経済水域)にもミサイルが打ち込まれました。
そして北朝鮮。10月4日に発射した弾道ミサイル日本上空を通過し、推定飛距離は過去最長となるおよそ4,600キロメートルに及びました。
こうした状況に街の人は…

いつ飛んでくるか分からないミサイルよりも物価高なので、そっちをどうにかしてほしい。

ウクライナ・ロシアがああいう状況だから、今後アジアがどうなっていくかが不透明。
そういうところをきちっと議論してもらいたい。
テレビ東京と日本経済新聞社が実施した世論調査では政府の5年以内の防衛費の大幅増額について賛成が54%となりました。
「10年」を見据える安保戦略
目指すべき日本の将来像とは
差し迫った脅威に対して日本は…
住田瑠菜記者

防衛省のある市ヶ谷にはPAC3が常時展開していて日本のミサイル防衛にとって最後の砦として24時間体制で警戒を続けています。
日本の弾道ミサイル防衛は2段構えで海上のイージス艦で迎撃できなかった場合、PAC3で迎撃します。
しかし、大量のミサイルを発射される事態に備え、政府はミサイルの射程距離を伸ばすなど対応を急いでいます。
これは政策判断として保有してこなかった「反撃能力」を念頭に入れたものですが、専守防衛との整合性をめぐる懸念も…
今回、与党協議会のワーキングチームに加わった自民党の安全保障調査会長の小野寺氏。2013年、防衛大臣として初めての国家安全保障戦略を含む安保3文書の策定を主導しました。
大江麻理子キャスター
2013年と現在で安全保障環境の決定的な違いは?

自民党
小野寺安全保障調査会長

2013年当時は北朝鮮はまだミサイル技術も核開発も途中。
中国は初めての空母「遼寧」をウクライナから取得して訓練をしている最中。
まだまだ海軍力も含めて能力はあまり高くないという認識。
ロシアは当時は話し合いで北方領土が返ってくるかもしれないという状況。
北朝鮮は能力を持ち、すでに核弾頭が日本まで届くものができていると考えるべき。
中国は3隻目の空母が近いうちに就航する。
ロシアはウクライナに力で侵略する状況になっている。
さらに中露が連携して日本周辺で活動を活発化している。
さらに小野寺氏は10年間を見据える安保3文書で周辺国に日本の将来像を示すことが重要だと協調します。
自民党
小野寺安全保障調査会長

戦争を起こさないために何が大事かというと「日本はしっかりしているぞ、万が一の時は攻められても日本国民を守るだけの能力と意思を持っているぞ」「日本と一緒に守ってくれる同盟国や友好国があるぞ」と国外に示す。
中国などと軍事バランスに差がついてしまうと外交力にも力がつかない。