今週末、アメリカと中国の首脳会談が行われる予定です。
いま世界が注目しているのが米中貿易摩擦の行方です。
トランプ大統領は、
交渉がうまくいかなければ中国からの輸入品すべてに制裁関税を課す。
と中国を牽制しています。
このようにますます激しくなる米中貿易摩擦ですが、実はすでに日本国内にもその影響が出始めています。
それが物流に欠かせない段ボール。これがいま値上がりし始めています。
米中の貿易摩擦でなぜ日本の段ボールが影響を受けるのでしょうか?
その現場を取材してきました。
インターネット通販
都内で一人暮らしをしている会社員の西澤政宏さん(29歳)。
いま生活に欠かせないものがあるといいます。
アマゾンです。お届けものです。
それがインターネット通販です。
週末のこの日に届いたものは朝食用のジュースに充電用のUSBケーブル。
さらにもう一つ荷物が到着。
輪っかが落ちたら負けというゲーム。
飲み会の時に使えるかなと。
西澤さんは生活雑貨から趣味に使うものまで多い月で3万円ほどネット通販で買物をしています。
スーパーに行って重いものを担ぐよりネットで頼んだほうがいい。
そのため毎週のように荷物が届く西澤さんの部屋には大量の段ボール箱が。
実はいま、こうしたネット通販の高まりで段ボールの需要が増加しています。
リーマンショック以降、生産量は年々増加。2016年からは3年連続で過去最高を更新する見通しです。
しかし今、活況な段ボール業界である異変が起きています。
北上製紙株式会社
こちらは東北にある創業70年の製紙工場。
ここでは段ボール用の紙が作られていましたが…
増田洋一記者、
この位置から工場の中を見渡せますが人っ子一人いないです。
工場の敷地には瓦礫の山。
壁にも穴が空いています。
実はこちらの製紙工場、北上製紙は経営が立ち行かなくなり今年7月に閉鎖。
その原因は原料となる古紙の高騰です。
日本製紙株式会社
[blogcard url="https://www.nipponpapergroup.com/"]
北上製紙の親会社である日本製紙はこの状況に強い危機感を抱いています。
日本製紙の野沢徹取締役は、
古紙については本当に頭が痛い。
ずっと作ってきた古紙のリサイクルシステムがぶっ壊れそう。
手短に日本から古紙を持っていこうと中国メーカーがしている。
中国
中国が日本の古紙を爆買いしているというのです。
その現状を取材するため取材班が向かったのは中国・浙江省。
ここには巨大な段ボールメーカーがあります。
入口の前にはトラックの大行列が…
積んでいるのは段ボールの原料となる古紙です。
世界中から買い集めたもので工場に納品するために順番待ちの行列が出来ていました。
「どのくらい並んでいる?」
1日か1日半並ぶこともあるよ。
夜から並びにくることもある。
「なぜ夜に来るのか?」
万が一順番が来なくて荷物が降ろせなかったら買ってくれない。
工場の中には高く積み上げられた古紙が…
中国でもインターネット通販の拡大から段ボール需要が増加。
こちらのメーカーでは現在の生産量を2020年までに2倍に増やそうと世界各地から古紙を輸入しています。
よく見ると…
北京支局の五島尚武記者、
よく見るとJA全農長野って書いてあります。長野県からも段ボールが来ているんですね。
ほかにも日本のビールメーカーのものや讃岐うどんと書かれたもの。
日本から大量の古紙が輸入されていました。
中国では今年に入ってから日本からの輸入量が増加、今年の1月と比べても3倍もの古紙を輸入しています。
関東製紙原料直納商工組合
[blogcard url="http://www.kantoushoso.com/"]
日本の古紙を買い進める背景には米中の貿易戦争があるといいます。
関東製紙原料直納商工組合の大久保信隆理事長は、
米国が関税を揚げた報復で中国は米国の古紙に25%の関税をかけた。
中国ではこれまで古紙輸入量のおよそ半分をアメリカから輸入しています。
しかし今年の夏にトランプ大統領は中国からの輸入品の関税を引き上げました。
これに対する報復関税として中国はアメリカから輸入する古紙に25%の関税をかけることを発表しました。
米中貿易摩擦の影響で古紙の調達先をアメリカから日本に変えて爆買いしているのです。
その煽りを受けているのがダンボールを配送に使う日本の通販会社。
アスクル株式会社
[blogcard url="https://www.askul.co.jp/"]
オフィス用品を中心にネット通販を行っているアスクルでは年間3,000個もの段ボールを使用しています。
原料の古紙が今年に入り2割値上がりし、段ボール価格も上がり始めています。
アスクルのECR本部物流管理の西尾有緒さん、
段ボールの値上げは不可避と言われている。そのタイミングをなるべく後ろ倒ししたい。
こうした中、アスクルは値上げへの対策を始めています。
こちらが段ボール以外の荷姿での出荷作業場。
アスクルでは段ボールを使わない梱包に力を入れています。
その一つが回収して再利用できるプラスチックケースを使った梱包。
また量が少ない場合には紙袋を使うなど発注内容に合わせた梱包で配送しています。
今後は値上げが予想される段ボールでの出荷の割合を減らしていく方針です。
お客様に荷物を届けるのにまだ段ボールは非常に重要な資材なので確保に努めたい。
それ以外の荷姿で対応できるようにしておくことが必要だと思っている。
米中貿易摩擦の余波で直面する段ボール危機。
年末商戦を控え増々懸念は広がっています。