カンブリア宮殿 ビジネス関連

[カンブリア宮殿] 万物を動かすチェーンを極めて100年!

2016年4月5日

万物を動かすチェーンを極めて100年!世界NO.1の強さを生む挑戦&突破力!

株式会社くらコーポレーション

[blogcard url="http://www.kura-corpo.co.jp/"]

大人気の100円寿司の「くら寿司」。
「7種の魚介醤油らーめん(388円)」や「すしやのシャリカレー(378円)」、「イベリコ豚丼(432円)」などお寿司以外の商品も人気となっています。

様々な変貌を遂げる回転寿司でも絶対に外せないのが「回転レーン」です。

佐川急便株式会社

[blogcard url="http://www.sagawa-exp.co.jp/"]

宅配業界ではスピード競争が行われています。

東京都江東区にある佐川急便株式会社の物流センターでは集まってきた荷物を配送エリアごとに仕分けしてトラックに積み込みます。

その仕分け作業は機械により自動的に行われます。
1時間に7,200個の荷物が自動で仕分けられるのです。

佐川急便株式会社の輸送ネットワーク部の西井茂さんは言います。

1分間に108m進む。こういうベルトコンベアでは一番速い。
コンピューターがどの位置に荷物があるのか想定してセンサーで追いかけている。お客様のニーズが多様化し、よりスピーディーで正確になっています。相当効率がいい。

株式会社シミズオクト

イベント会場などの設営・演出を行う株式会社シミズオクト。

古くはピンク・レディーの解散ライブやアリスの解散ライブも手掛けています。

ここで使用されているのが全く新しい仕組みの「昇降リフト」。
最大の特徴が1mm単位で正確に動きが制御できるところです。

これにより何台も組み合わせて自由自在に動かすことが可能となり、コンサートの演出が大きく変わりました。

生産本部の河村正和さんは言います。

舞台監督の「0.1秒遅く」「ちょっと止めて」を全部コントロールできる。曲の切れ目でピタッと止まるので全然違う。産業革命や明治維新ぐらいの違い。このアイデアを考えた人は本当に素晴らしい。

株式会社椿本チエイン

[blogcard url="http://www.tsubakimoto.jp/"]

革命的商品を生む世界企業として注目をされている株式会社椿本チエイン。

回転寿司の回転レーンや物流センターのベルトコンベアを制作したのも株式会社椿本チエインです。
そしてコンサート会場で使用される昇降リフトも株式会社椿本チエインの製品です。

京都府京田辺市にある株式会社椿本チエイン。

株式会社椿本チエインは動力などを伝える産業用チェーンの世界トップメーカーです。
売上高は1,967億円。

取り扱うチェーンは2万種類以上。

株式会社椿本チエインが手掛けるチェーンはエスカレーターを動かすチェーンからジェットコースターを引っ張り上げるチェーンなど多種多様です。

回転寿司の回転レーンもチェーンで作られています。
コンサート会場で使用される昇降リフトも特殊なチェーン「ジップチェーン」を使用して昇降しています。

大型のチェーンでは重さが25tもある鉄の塊を動かすのにも株式会社椿本チエインのチェーンが利用されています。
新日鐡住金株式会社の八幡製鐵所で使用されています。

重量もかなり大きく、ずっと乗せっぱなしなので熱の負荷も大きい。高い技術のチェーンでないとすぐに寿命がきて切れてしまう。

最小のチェーンは軸と軸の間隔が3.7mmの「マイクロチェーン」。
現金自動払い機などの中で動力を伝えるチェーンとして使用されています。

株式会社椿本チエインのチェーンがないと日本のものづくりが立ち行かなくなります。

株式会社ロッテ

[blogcard url="http://www.lotte.co.jp/"]

埼玉県さいたま市の株式会社ロッテ浦和工場。

ここでは株式会社椿本チエインのチェーンが50種類以上も採用しています。
株式会社椿本チエインのチェーンは必需品と言われています。

埼玉工場

埼玉県飯能市の株式会社椿本チエイン埼玉工場。

ここでは全く別の事業を行っています。
それが搬送システムです。

佐川急便株式会社の物流センターで使用されている仕分けシステムもここで開発されました。

最新の洋服運搬機ではICタグから一瞬で情報を読み取ることができます。

株式会社椿本チエインではチェーン技術を生かして搬送システムビジネスに参入。
現在では売上高451億円も稼ぎだす屋台骨となっています。

マテハン事業部の岩間有利さんは言います。

株式会社椿本チエインはチェーンで創業したが物を運ぶコンベアに進出した。

静岡県浜松市にある株式会社スクロールの巨大物流センターでも2013年から株式会社椿本チエインの最新仕分けシステムを採用しています。

[blogcard url="http://www.scroll.jp/"]

物流統括部の夏目善治さんによると以前に比べて出荷能力が30~50%向上したそうです。

長勇会長

技術を生かしてお客様に喜んでもらえるような、ハイエンドと言われる高機能のチェーン作りに特化していきたい。

株式会社スプレッド

京都府京都市にあるベンチャー企業の株式会社スプレッド。

[blogcard url="http://spread.co.jp/"]

株式会社スプレッドでは野菜工場を運営しています。
最新のクリーンな設備で無農薬の野菜を作り全国に出荷しています。

洗わなくても食べれる安心安全な野菜です。

稲田信二社長は言います。

今の状態だと野菜の価格が高くなってきてしまう。安定した野菜の供給体制を作ることが植物工場の役割。

株式会社椿本チエインでは株式会社スプレッドが計画している無人の植物工場を実現するために自動化技術の開発を進めています。

株式会社スプレッドからお話を聞いて「ぜひ一緒にやらさせてほしい」と

株式会社椿本チエインでは8年前から新規事業として野菜工場の無人化に取り組んでいます。
苗を運ぶ複雑な機械などチェーンを利用した様々な新技術を開発してきました。

野菜を選んだ理由として長勇会長は

同じビジネスをやるだけでは発展性がない。来年で創業100年になるが、その先の100年はない。いつも新しい領域に目を向けていくことが必要。

株式会社椿本チエインの創業

1917年に大阪で自転車用チェーン製造会社を創業したのが株式会社椿本チエインの始まりです。
創業者の椿本説三さんは当時27歳。

椿本説三さんはある時、偶然訪れた町工場で機械を動かすためにチェーンが使われているのを発見します。

こんなところにもチェーンが使われているのか…

椿本説三さん、機械で使われているチェーンの多くが海外製と知るとカタログを取り寄せ、産業用チェーンの研究を始めました。

自転車用のチェーンは誰でも作れる。もっと精度の高い、このチェーンに挑戦してみよう!

そして産業用チェーンの製造に着手します。
1928年には自転車用チェーンから撤退。

創業社長の先を見る目はすごかった。自転車用チェーンも増産していたが10年で産業用に切り替えた。全く新しいものにシフトして「これからはこれでいく」と決めた。その英断があったから100年続いている。

さらに椿本説三さんは産業用チェーンを売り込むだけでなく、1937年にはチェーンを使用した運送設備の製造にも進出します。

しかし新たな分野には難関が立ちはだかります。

1950年代に挑戦した自動車用タイミングチェーン。
自動車部品事業部長の鈴木恭さんは言います。

40年くらい前は2列のローラーチェーンが主流だった。ただこれは重いしエンジンの中で高速に回すとうるさい。これにとって代わられたのがゴム製のベルト。

チェーンに比べて音が静かなゴム製のベルトが登場するとシェアが急落。

ベルトに勝てるようなチェーンを開発しないと将来はない。

そして自動車部門総出で音の静かなチェーンの開発に着手し苦難の末、開発に成功します。

音の少なくベルトより耐久性のある「サイレントチェーン」も開発されました。
今では国内の7割が株式会社椿本チエインの自動車用タイミングチェーンを使用しています。

バイオバンク・ジャパン

[blogcard url="https://biobankjp.org/index.html"]

東京大学に設立された機関「バイオバンク・ジャパン」。

この研究室に置かれているのが株式会社椿本チエインの世界初ハイテク冷蔵庫です。

医学博士の久保充明さんは言います。

これができたことで、がんの研究が飛躍的に進歩する。

冷蔵庫に保管されているのは膨大な量のがん細胞の組織です。
マイナス150度で保存することができ、膨大な数のサンプルを正確に管理して1本単位で出庫することが可能です。

椿本チエインさんに無理矢理お願いして作ってもらった。マイナス150度で品質を保ったまま、がんの組織を研究できる。ものすごい意味を持っています。多くのがんの研究者がやりたくてもできなかったこと。

株式会社椿本チエインはチェーン業界トップの技術力を駆使して、あえて未知の分野に挑み今までにない製品を生み出してきました。

株式会社椿本チエインの開発部、吉田雅彦さんは言います。

マイナス150度の世界は全く経験のない世界で、何をモチベーションかというと「世界初のものを作るぞ」とみんなでチームワークを組んでやってきた「世界初」がモチベーションだった。

技術部

ここでは想像もつかない業界から注文を受けています。

例えば下水処理上で汚泥をかき上げるチェーンや、パイプや鋼管などの材料を引き抜き加工する工程で棒材を引っ張るためのチェーンなどです。

様々な業界から注文を頂ける理由の一つにチェーンの「弱点」に挑み続けているからです。

チェーンの弱点

チェーンの弱点は高速回転を続けるとたるむことです。

回転する動きが繰り返される中で、どんどん軸がすり減っていきます。
すべての軸がすり減ってしまうとチェーンが伸びてしまします。

株式会社椿本チエインではチェーンの基本部品の5つを常に改良し続けて摩耗しにくいチェーンを開発しています。

回転する軸を覆うブシュでは内側の一部分の細い溝を作っています。
これが軸が摩耗しにくくなる秘策です。

チェーン製造事業部の安藤崇尚技術部長は言います。

ブシュの中の油量が増えて摩耗しにくくなる。摩耗寿命が倍に伸びた。我々のノウハウになっているので見せれない。

株式会社椿本チエインでは他社が真似のできない技術を10年ごとに開発しています。

我々は「ここまで」という限界を自分たちでつくらない。「まだ何かできるはずだ」と。材料も新しく変わっていくし工作方法も変わっていくから。やれることはどんどん広がっていくと思う。

現在取り組んでいるのは「」。
他社から購入するのではなく摩耗しにくい油を自社で開発中です。

チェーン製造事業部の木原政揮さんは言います。

さらに摩耗寿命を伸ばすために新しい油を社内開発して、その油を塗って寿命を伸ばそうと。トップシェアであぐらをかいていると、いつ抜かれるか分からない。常に市場に対してインパクトのある商品を出さないといけない。プライドがある。

長勇会長

ほぼ10年単位で全く新しい性能にするモデルチェンジをしている。今までの技術で満足せず「もうちょっと上」を狙っていく。これは創業当時からのいい伝統だと思っている。
「技術」は止まってしまうと、どんどん退化する。相対的には遅れることになるので「ここが最後」と思わずに「もっと何かできるのでは?」と改良を続けていくのに10年という区切りをつくっている。これから先も10年ごとに改良を続けていこうと思っている。

社長になった時からチェーン分野ではトップメーカー。黙っていても買ってもらえることがたくさんある。ただ何もしなければ他社に追いつかれ売れなくなってしまう。そういう危機感を持った。ですから新しい物を開発していく。それから、このままいくと今の産業界の状況から考えると、どんどん海外に顧客もマーケットも移ってしまう。そういう中で日本の雇用を守るためには新しい物をつくり出さないといけないと思う。マーケットをチェンジしたり、そういう取り組みをしたい。

海外展開

株式会社椿本チエインは24の国・地域に海外拠点を展開しています。

インドネシア西部の都市パダン。

ここでパームオイルの抽出をしているリンボー社でも株式会社椿本チエインのチェーンが大量購入されていました。
ここで大活躍をしているのが重いヤシの実を運搬する運搬用専用コンベアです。

このあたりでよく使用されている中国製と比べると2割ほど高い商品です。
それでも価格が高いと思わずに購入されました。

その理由がパームヤシの細くて硬い繊維です。この繊維がチェーンに絡まると機械が故障してしまします。
しかし、株式会社椿本チエインの機械がその悩みを解消しました。

チェーンに隙間を作ることで繊維が絡まなくなり、機械が故障しなくなりました。
またローラーの側面に溝を作ることで隙間に入った繊維が下に流れ落ちる構造にもなっています。

繊維が絡まなくなったことで、今までの製品より寿命が4倍近くになったそうです。

これは本当に壊れない最高のチェーンだよ!

どんなに小さなニーズにも応えてチェーンを作る。
この考え方で海外売上比率は54%にもなります。

長勇会長は言います。

我々はチェーン分野のトップメーカーで、今日本で作っているチェーンを海外に持っていって売ればいい。そういう気持ちで今まで商売をしてきたが、国によって考え方も違う、チェーン1つとってみても、例えば中国なら中国で使われる中国の考え方にあった、ヨーロッパはヨーロッパの考え方で製品を作っていこうと。

「グローバル」という言葉は間違ってしまいがちで、外国で自分たちの物を売っていたら、それはグローバル化か?そうではない。「本当のグローバル化」というのは現地の人や文化、ものづくりの思想、そういうものを理解した上で我々の技術を提供していくこと。根底にあるのは日本で培った我々の技術。ただ「作った製品をそのまま持っていく」という考え方はダメ。

編集後記

チェーンとは、もともと「鎖」という意味だが、株式会社椿本チエインが開発・製造しているのは、そんな単純なものではない。動力を伝え、モノを移動させ、結果的に物流のさまざまな階層に関与する。「脱日本発のグローバル化」「高品質な商品を作れば売れる、はもう古い」長勇会長の言葉だが、はじめて聞いた気がする。株式会社椿本チエインの、モノの移動と仕分けのシステムは、まるでSF映画を見るようだった。世界市場を知る企業ほど「日本発のもの作り」にこだわらない、この現実をどう考えればいいのだろう。

-カンブリア宮殿, ビジネス関連
-