地域の頑張る企業を取り上げる「輝く!ニッポンのキラ星」。
今回は神奈川県小田原市からです。町工場の多くがいま不況に立たされる中で新たな技術を取り入れて注文が絶えない鋳物鋳造の工場を取材しました。
株式会社コイワイ
[blogcard url="http://www.tc-koiwai.co.jp/"]
海沿いの観光地として知られる神奈川県小田原市。
その東部には工業団地が広がっています。
ここにモノづくりの革新に挑む企業が…
1973年創業の鋳物製造「コイワイ」。従業員115人、売り上げは27億円に上ります。
トヨタや日産など自動車用エンジン部品の試作品が事業の柱ですが、それだけではありません。
国際宇宙ステーションから地球に成果物を持ち帰ったカプセルに使われた。
JAXAと連携し、回収カプセルの姿勢制御を担う部品を作っています。
頭蓋骨を損傷した人の中に入れるインプラント(埋め込み器具)の開発も手掛けている。
多様な製品を作れる理由が…
コイワイの小岩井豊己社長、
3Dプリンターが貢献している。
従来は樹脂を使って造形ができることで重宝されてきた3Dプリンターですが、コイワイは砂型を使って金属製品を作る鋳物に3Dプリンターを初めて導入したのです。
この技術を得たことで自動車以外の業種から多彩な仕事が舞い込むように。
今ではおよそ100社と取り引きをし、年間600種類以上、1万点もの試作品を手がけ、アジアトップクラスの生産量を誇ります。
2019年には医療分野に参入。患者ごとに合わせて作る固定器具は骨を削らずにすみ、手術時間や入院期間を従来の半分以下に短縮できるといいます。
「3Dプリンターの難しさは?」
この薄さ。
2~3ミリの砂型が流れ込んだ金属で割れたり曲がったりしない厚みは金属と砂型の特性を知らないと決めることができない。
鋳物は砂でできた型に金属を流し込むことで製品化しますが、その砂型の薄い部分が崩れないよう補強しながら設計することが難しいのです。
大手メーカーと試行錯誤をしながら長年、鋳物の試作品を作り上げてきたこのノウハウが3Dプリンターの扱いに活きました。
3Dプリンターの強みはスピード。
砂型を作るためにこれまではまず木などで型を作り、それを覆って形にするため、納品までおよそ1ヵ月もかかっていました。
一方、3Dプリンターは適切な設計図さえあれば砂型を1日で作ることができます。
データ作成から鋳造まで最短3日で納品できるスピード感は鋳物業界に革新を生みました。
さらに従来の鋳物では時間がかかりすぎて対応できなかった大型製品も請け負うことが可能に。
「どれくらいの期間で習熟できた?」
コイワイの砂型積層チームリーダーの新井宏平さん、
木型を作る職人の技術を得るのには大変な年数がかかるが、3Dプリンターの操作自体は2ヵ月もかからずに扱えるように。
業界に先駆けて最先端技術を取り入れたコイワイ。その道のりは平坦ではありませんでした。
転機となったのは30年ほど前。
海外とのコスト競争に勝てず顧客が離れてしまいました。
その危機を救ったきっかけが…
実は車の専門誌。
写真に写っていたのがドイツのBMWが試作開発の中で砂型に3Dプリンターを使い始めた記事。
2007年、1億4,000万円をかけドイツ製の3Dプリンターを導入。
積極的に設備投資を行い、生産体制を整えました。
さらに2012年には金属製品を丸ごと作ってしまう3Dプリンターを導入。より精巧な製品が作れるようになったことで事業の幅はさらに拡大しました。
2017年には商社の双日と新会社を設立し、海外に販路を広げました。
BtoBビジネスを中心に展開してたが新たに一般消費者に向け展開している。
その一つがレストア事業。
コロナを機に取り組んだのがメーカーが生産を止めてしまい、入手できなくなった車の部品などを3Dプリンターを使い復活させるレストア事業。先月から事業を開始しました。
これまでのように大きなビジネスにはならないかもしれないが、新しい分野に常に挑戦し、先々の事業が継続できるようにしたい。