鉄道や飛行機、さらにバスやモノレールに代わる次世代の交通システムの開発現場にWBSのカメラが入りました。
私たちの未来の通勤方法も変えるのでしょうか?
その現場は東ヨーロッパのベラルーシという国です。
SkyWay Technologies Co.
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ベラルーシ共和国。ロシアやポーランド、ウクライナなどに挟まれた東ヨーロッパの内陸国です。
この日は雪で気温は氷点下に。
首都ミンスクから車で1時間ほど行くとかつて戦車の走行テストが行われていた場所に着きました。
豊島晋作記者、
まったく見たことのないような乗り物がいま私の頭の上を通り過ぎていきます。
あちらにもまた別の乗り物でしょうか、雪の上を滑るように走っていきます。
乗り込んでみると、
かなり速いですね。
アナトリー・ユニツキー氏
こうした乗り物を発明したのは技術者のアナトリー・ユニツキーさん。
これは14人乗りの「シティ・ユニバス」。最高速度は時速150キロだ。
ユニツキーさんは3年前、次世代の交通システムを開発するスカイウェイ・テクノロジーを設立。
現在、5つのタイプの乗り物の走行実験を行っています。
取材班が最初に見たのは48人乗りの大型シティ・ユニバス。
車両を連結させて運行すれば大勢の人を運べるといいます。
スカイウェイは世界中の投資家を招いて大規模な試乗会を開くなど、開発のための資金調達を着々と進めています。
投資マネーを惹きつける理由は環境への配慮と低コスト。
すべて電動で衝突防止センサーを備えた自動運転です。
わりとスピードが出ていますが、車内はかなり静かです。モーターの音のようなものしか聞こえません。
最大の売りは細いレール。
レールと車両のデザインを極限までシンプルにすることで全体の大幅な軽量化を実現しました。
レールの建設コストは鉄道などにくらべて約20分の1だ。
建設資材が少なくてすみ、環境にもやさしい上、全体の維持費や運行コストも鉄道などに比べ7割近く削減できるとしています。
工場
ミンスク市内の工場を訪ねました。
車体の製造や開発はここで行います。
動力源のモーターは自社開発。
バッテリーも自社で組み立てています。
こちらのバッテリーがモーターに電気を供給し、モーターが回転することで黄色いレールの上を進むという仕組みです。
納入実績
ただ実際の納入実績はゼロ。
このため本社に海外からのお客様を招き、技術や安全性を説明する日々が続きます。
先日、第一号となるアラブ首長国連邦からの受注が決まったといいます。
この日はブラジルの地方政府の職員たちが訪れていました。
ブラジル・パラナ州政府のシルビオ・バウス都市開発長官は、
ブラジルでの導入を真剣に考えている。
他の交通手段と比べて環境への悪影響が小さい。
故郷
ユニツキーさんがスカイウェイのアイデアを思いついたのはおよそ30年前。
最初の実験車両は鉄のレールの上にトラックを乗せただけの素朴なもの。
ロシアの当局からは開発拠点の閉鎖を命じられるなど妨害も受けたといいます。
しかしユニツキーさんは環境に優しい乗り物をつくる夢をあきらめませんでした。
それにはある理由が…
生まれ故郷を失ったことが一番大きい。
私の村は強い放射能に汚染されてしまった。
ユニツキーさんが育ったベラルーシ南部の村はあのチェルノブイリ原子力発電所のすぐ近く。
1986年に起こった原発の爆発事故で育った家も、勉強した学校も、村は全て放射能に汚染され人が住めなくなってしまいました。
こうして地球は滅びるのだと感じた。
だからせめて環境にいい乗り物が必要だと強く思った。
今、そんなユニツキーさんが思い描くのは高層ビルの間や都市の間の空をスカイウェイが自由自在に走る未来。
故郷を失った技術者の夢は実現へ向け、動き始めたようです。