阿蘇内牧温泉 蘇山郷
熊本県阿蘇、火山の噴火でできたカルデラと呼ばれる特殊な地形に5万人が暮らしています。
九州屈指の観光地。しかし、2016年4月に起きた地震によって約78万人だった宿泊客は約41万人と半減しました。
町の観光を支えてきた温泉街も冷え込んでいます。
その地震から1年、
この花がいらっしゃいませとお待ちしています。黄色のリュウキンカ。
温泉街の中でいち早く立て直しを図っている宿がありました。「蘇山郷」。
かつて歌人の与謝野鉄幹・晶子夫妻も泊まったという杉の間。被害を免れていました。
料理もうまいと評判です。溶岩プレートで焼いた阿蘇の「あか牛」。地元で採れた山菜など旬の食材で彩られた会席料理が自慢です。
地震で止まってしまった温泉を掘り直し、2016年7月から営業を再開しました。
宿泊客も以前の8割まで回復しているといいます。
3代目館主の永田祐介さん(44歳)。災害を機にあえて積極的な改革を進めています。
元に戻るだけではダメだと思う。
客室を見せてもらうと、
畳敷きの上にベッドマットを置いて。
一部の部屋を外国人客向けに改装。客単価を上げました。
さらに最上階には洒落たバーまで。
カルデラの真ん中で星を見ながらお酒を飲んでもらおうと。外国のお客様がSNSで発信してくれるといい。
テラスもあり天気がよければ阿蘇の外輪山に沈む夕日を眺めながら酒を楽しめます。
4月6日、この日、スイスからの団体客が到着しました。
宴会はあの杉の間にテーブルと椅子を用意。
そしてこんな趣向も、
おい、何かやってきたぞ!
突然現れたのはお面をかぶった一団。これは九州に伝わるひょっとこ踊り。外国人客に良い思い出と永田祐介さんが仕掛けたのです。
一緒に踊りだすスイスの人たち。これ、誰が踊っても不思議とさまになります。
ひょっとこに扮していたのは実は地元、阿蘇の人たち。温泉街の復活を目指し協力してくれています。
お客様の中には早速撮った写真を家族や友達に送る人も。
素晴らしいの一言だ。
震災の後、ここまで立て直されたのはスタッフの皆さんが負けない気持ちで挑んだからでしょう。
永田祐介さんは、
先に進む。進んだ人間が足元を照らす。宿ごとに事情が違いますから。
阿蘇プラザホテル
一方、まだ復活半ばの温泉宿。
去年の4月から全然使っていない状況。
地震で地盤がずれたため温泉を汲み上げることができなくなっていました。
稲吉淳一社長は、
本当はこうやって見たら、阿蘇山が見えてきれいなんだけどな。
いま地下650メートルまで温泉を掘り直しています。
5月上旬にはお湯が出る見込みです。
こうした採掘や館内の修繕の費用は約2億円。4分の3は国の補助金でまかなえますが残りは謝金です。
本来なら350人が宿泊できるのですが、
今日は何組だ、7組30人くらいかな。
これまでは修学旅行などの団体客が中心だったホテル。苦戦を強いられていました。
阿蘇でも一番広い会場なんだけど、それだけだからね。
大きな決断
稲吉淳一社長は大きな決断を従業員に伝えようとしていました。
長年勤めてくれた仲居さんや料理人を客室に集めます。
1年が地震からたって肌で感じている通り厳しい1年間だった。会社の経営も厳しかった。
売上が落ち込む中、社長が何を仕掛けるのか?
この部屋を変えようと思って、和室じゃなくてベッドがいいという人が多いでしょう。
この和室、地震の被害を受けていませんがあえて大改装しようというのです。
長期滞在を狙っていると、この辺にはキッチンをつくって、料理長がここに来て食事を出したりとか。どう?これ。
住みたい。
今こそ、ピンチをチャンスに!
復活を目指す老舗の一軒。それは30畳ある和室の大改装。目指すは住みたくなるような客室です。
私たちも部屋に負けないくらいグレードアップしないと。
もうすぐ新しく温泉も出る。やっと一からのスタートになっていく。変わっていかないと。
地震から1年、ふるさと復活に賭け動き出した人たちを追いました。
コメント