遺伝子がほぼ同じ生き物を人工的に作り出すクローン技術をビジネスに使う動きが中国で本格化し始めています。官民をあげて推し進めるこの動きは課題をはらみ日本にも影響を及ぼすかもしれません。
クローン犬
愛犬家の何軍さん。散歩させているのは飼っている2頭のメスの犬です。
色も顔もそっくりのこの2頭、親子だろうか?
この犬の名前は果汁。いま9歳くらいです。
こっちの犬は果汁のクローンです。
去年9月に生まれた。
2頭は同じ遺伝子を持っています。左の果汁を元にその体細胞から作られたのは右のクローン果汁です。
実は果汁は映画やテレビコマーシャルにも出たことがあるタレント犬。その後継者を作るためにクローンという選択をしたと話します。
果汁は非常に重要な財産なので完全にコピーしようと思った。
犬の寿命は十数年で限りがある。クローンなら生き続けさせられる。
Sinogene
[blogcard url="https://sinogene.org/"]
果汁のクローンを作ったのは中国のシリコンバレーとも呼ばれる北京・中関村にあるバイオテクノロジー企業「シノジーン」。
去年から個人を対象に愛犬のクローン作成サービスを始めました。価格は1頭およそ620万円からです。
施設内を案内してもらうと、ある部屋から小犬の鳴き声が聞こえてきました。
吉田知可記者、
こちら犬の飼育室ですが、たくさんの子犬が生まれていますが、いずれも遺伝子を操作した犬から生まれています。
こちらにはお腹の大きな犬がいます。これは代理母ですが、お腹の中にはクローン犬がいて今月末には出産予定ということです。
代理母はビーグル犬ですが、お腹の中にいるのはシェパードです。
クローンを作るにはまず元になる犬の皮膚組織から遺伝子情報が含まれる核を取り出します。
それを核を取り除いたメス犬の未受精卵に移植して、代理母の子宮で育て、生まれてくるのがクローン犬です。
1頭のクローン犬を作るのに5頭以上のメス犬から未受精卵を採取する必要があるため、控室にはメス犬がずらり…
手術前に痛み止めの注射をしますが、それでも負担は小さくありません。
いま中国で飼われている犬の数は5,000万頭あまりと日本の5倍以上。その数は毎年増え続けています。
空前のペットブームを背景に愛犬のクローンを作りたいという飼い主が増えるとシノジーンは予測します。
シノジーンの趙建平副社長は、
今後2,3年で300~500件のクローン犬作成の受注を見込んでいます。
さらに猫のクローン作成も今年中に成功する見通しです。そのうえで今年は海外市場を開拓するといいます。
重要な市場のひとつが日本。
日本は猫ブームだと聞いている。クローン猫は受け入れられると思う。
国立成育医療研究センター
[blogcard url="https://www.ncchd.go.jp/"]
ペットのクローン作成に法規制はありませんが、流産や奇形などが数多く発生し、動物が犠牲になる懸念が拭えないとの指摘も…
国立成育医療研究センターの生殖医療研究部、阿久津英憲部長は、
体細胞クローンは生まれる確率が非常に低い。
動物愛護の点からも簡単には許容できない。
昆明警犬基地
広がりはペット以外にも。
雲南省にある中国の警察犬訓練基地。外国メディアのカメラが入るのは初めてです。
昆明警犬基地の李静研究助手、
ここは警察犬の遺伝子資源庫です。
優秀な警察犬の精液や体細胞を冷凍保存している。
いま中国が国を挙げて取り組むのがクローン警察犬の育成プロジェクト。
その第一号が去年12月に生まれた「昆勲」。
元になったのは数十件の大型事件の解決に貢献した功績を持つ現役の警察犬。
軍や警察のために中国政府が作り出した昆明犬です。
中国ではテロの警戒や監視を強化するため、より多くの優秀な警察犬が必要だといいます。効率的な警察犬の育成が求められています。
昆明警犬基地の万九生研究員は、
千頭もの中から適切な犬を探し、育成すると通常4,5年はかかる。
クローンなら生まれつき才能があるので訓練も短期間で容易。
クローン技術
さらに中国科学院は霊長類初となる体細胞クローンサルを作成。1月には遺伝子を操作したサルのクローン5匹を誕生させたと発表しました。世界の最先端を行こうとしています。
技術としてできるから何でもやっていいわけではない。
クローン技術でサルを作出することが本当に研究の目的上必要なのかどうか。
ヒトへの応用という懸念が社会にある。
研究の意義を慎重に検討しなければいけない。