シリーズ企画「大浜見聞録」。
あらゆる産業でDX(デジタルトランスフォーメーション化)が進んでいますが、第一次産業でも待ったなしの状況です。
今回は酪農業界に行ってきました。
酪農家の減少も大きな問題ですが、人手不足、生産性の向上に対応するためデータを有効に活用する次世代酪農が各地で動き始めています。
実際に生産性は高まるのかどうか、取材してきまし。
パナソニック環境エンジニアリング株式会社
[blogcard url="https://panasonic.co.jp/ls/peseng/"]
データの活用、ロボット化、自動化という最新の牛舎が見られるということでやって来ました。
栃木県大田原市。
最先端の牛舎は宇都宮大学やパナソニックのグループ会社などが共同で開発しました。
早速、その牛舎を見せてもらうと…
牛舎は外とは壁で隔離され閉鎖されています。
パナソニックのグループ会社が設計施工を手掛けました。
およそ150台の換気扇が設置されています。
従来の牛舎は壁がなく換気はほぼ自然に任せています。
ただ牛は熱に弱く、夏の搾乳量が20%以上減る場合もあり、暑さ対策が課題でした。
宇都宮大学の池口厚男教授、
囲って換気扇を付けることで牛舎の中に均一に速い風を流すことで牛からたくさん熱を奪い、熱ストレスを下げ乳量を増やす。
このシステムにより年間およそ16%もの搾乳量のアップにつながりました。
牛舎の建設費用はおよそ8,000万~1億円です。
パナソニック環境エンジニアリングの下田祐馬さん、
通常の開放型牛舎と比べると約1,500万円のコスト増。
費用対効果をメリットとして酪農家が感じてくれるのでは。
さらにパナソニックは去年、新たなシステムの運用を開始しました。
それがこのカメラです。
これが牛舎の平面図。
この赤い点がどこに牛がいるかを表している。
牛の位置や密集度を把握し、最適な換気扇の風力などをAIが導き出します。
パナソニック環境エンジニアリングのユニットマネージャー、釘嶋博文さん、
パナソニックには人に対するカメラやセンサーの技術があった。
それを酪農・農業に転用していきたい。
現在のカメラでは牛の位置しか把握できませんが、将来は牛の健康状態までカメラで識別できるようにしたいといいます。
パナソニックグループ内でも注目されている。
きめ細かい制御技術を持っていけば海外展開も将来的には検討していきたい。
パナソニックは2025年までに国内で酪農を含めた農業分野について売上高100億円を目指しています。
去年夏に運用を開始したのが餌やりを自動で行う機器です。
これにより作業量がこれまでのおよそ3分の1に減りました。
オリオン機械の酪農事業本部、川口隆部長、
機械から得られるデータを総合的に判断して研究者にデータの活用をしてもらって、より自動化された機器を多くの酪農家に普及させる。
さらに牛の発情期もデータ管理しています。
データはこの牛の首や足首に付けたタグから得られます。
全てのデータはクラウド上で一括管理させています。
グリーンハートティーアンドケイの津久井宏哉社長、
手のかからないシステムができるのは大変ありがたい。
さらなるデータの収集が精度向上のポイントとなります。
AIの精度を上げるためには良いデータセットを多く。
遺伝情報と個体の牛乳の情報を関連付けて。
例えばチーズケーキを作る業者が「こういう牛乳がほしい」、その牛乳を提供できるようなオーダーメイド畜産が可能なシステムを作っていきたい。
酪農のDV化にはさまざまなスタートアップも乗り出しています。
片峰牧場は分娩や発情期、病気の兆候などをいち早く把握するためのシステムを導入しています。
The Betterの鈴木康弘さん、
このカプセルを牛の体内に入れる。
カプセルの中に温度・加速度センサー。
重さや大きさを考えて設計。
一度胃の中に入れるとそのままずっと滞留。
体内に入れたカプセルが体温や活動量を計測します。
その変化から牛のさまざまな健康情報を把握、得られた情報はアプリで確認します。
動物用医療機器の認定を受けていて牛の体に負担にはならないといいます。
韓国のユーライクコリア社が開発し、The Betterが日本仕様にカスタマイズしました。
アプリ上ではハートマークは受胎中の印。
1時間毎の体温や活動量などがわかります。
さらに得られたデータをAIが解析し、分娩のタイミングなどを知らせます。
片峰牧場の片峰多恵子さん、
今までは分娩が近くなると牛舎に泊まり込み。
これだったらアラームで通知されるので。
時間短縮と精神面の余裕ができるのでありがたい。
牛1頭につき1年目は2万8,600円、2年目以降は1万9,800円のシステム費用がかかります。
韓国ではシステム導入により搾乳量が平均9%増加しました。
松﨑明社長に現状の課題を聞きました。
現状30牧場ほどの契約。
まだまだビジネスとしては赤字の段階。
日本の酪農の経営者の層は60歳以上が50%以上。
スマホに不慣れ、熟練の経験値で牧場を経営。
検知率も含め、より精度が高いことを知ったもらうための種まきの段階。