シリーズ「グリーン革命の未来」。
世界で温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボン・ニュートラルの流れが加速する中、日本の去年12月、2050年までに脱炭素社会を実現すると宣言しました。

その切り札といえるのが世界で日本が技術面で世界をリードするとされる水素エネルギーです。各国の追い上げで競争が激しくなるなか市場を切り開こうとオールジャパンで挑むプロジェクトが動き出していました。

HySTRA
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川崎市のホテル「川崎キングスカイフロント」。ある世界初が売りです。

朝食の人気メニュー、レタスのスープにそのヒントが…

レタスのシャキシャキ感が生のままと同じくらい残っています。甘みが非常に引き立っていておいしいです。

このレタス、実はフロントのすぐ横の植物工場で収穫したもの。

この工場を動かす電力にヒミツがあります。
それが…
川崎キングスカイフロント東急REIホテルの黒崎竜男さん、
ホテル備え付けの燃料電池。

水素が地下のパイプラインを使った燃料電池の中に入り、電気と熱エネルギーを生み出しています。

実はこのホテル。使用する電力の3割を水素を使った燃料電池の発電でまかっています。

仕組みは水素と空気中の酸素が化学反応することで電力が生まれます。排出されるのは水だけ。二酸化炭素を出さない究極のエネルギーです。

一体どれほどの威力があるのでしょうか?
水素と酸素を2対1の割合で混ぜ合わせます。

火花を飛ばすと…

山梨県立科学館の市川大睦さん、
火花により水素と酸素が結合した状態。

すごく大きなエネルギーが取り出せる。

二酸化炭素ではなく水ができる。クリーンなエネルギー。

このホテルではレタスの栽培だけでなく客室の照明や大浴場のお湯を沸かすのにも使われていて世界初の水素ホテルを売りにしています。


この究極のエネルギー、水素を使った燃料電池車を世界で初めて実用化したのがトヨタです。

去年12月には2代目が登場。

1回の水素充填にかかる時間はわずか3分で走行距離は850km。

EV(電気自動車)と比較しても走れる距離や充電時間の面で優位に立ちます。
こうした燃料電池に代表される水素技術で世界をリードしてきた日本。
しかしMIRAIの国内販売台数は4,700台にとどまり、国内で稼働する水素ステーションも160ヵ所ほど。

車が先か、インフラが先か、需給のジレンマもあり、普及が進んでいるとは言えないのが実情です。

燃料電池の分野で国内有数の研究拠点を構える山梨大学の飯山明裕特任教授は日本の技術力の優位性が揺らいでいると指摘します。


日本は研究開発レベルが非常に高い。

ただドイツ、中国などすごい資金力で追い上げている。

技術は市場で育てられる。市場が大きくならないと技術も抜かされる。

最後は市場の大きさで優劣が決まってしまう。

その市場を拡大しようとオールジャパンでの挑戦が加速しています。

トヨタ自動車の豊田章男社長、
グリーン水素を使っていすゞと日野のFC(燃料電池)トラックがものを運ぶ。

トヨタ自動車のトヨタ社長が日野、いすゞとの資本業務提携で宣言したのが燃料電池トラックの共同開発。

さらにトヨタは大手コンビニと燃料電池トラックによる配送の実証実験も始めます。

乗用車に加え、商用車での活用を進めることでインフラの整備を促す考えです。

岩谷産業の水素ガス部、寺岡真吾部長、
商用車は1台当たりの水素使用量も多くなる。

一定のルートを通るとすれば水素ステーションを効率よく配置できる。

こうした動きに呼応するように水素ステーションを整備するインフラ事業者も新たな取り組みを始めています。
市場拡大のカギを握るのはコストの壁をいかに打ち破るかです。

現在、国内の水素価格は1立方当たりおよそ100円ですが2030年には30円まで引き下げることを目指しています。

水素自体のコストを下げていく。そのために大量に調達できる体制をつくる。

岩谷産業や川崎重工などが水素普及を進めるため結成した組織「HySTRA(ハイストラ)」。

海外で安価に製造した大量の水素をマイナス253度まで冷やして液化し、体積を減らして運搬船で日本へ運ぶ世界初の実証実験を始めようとしています。

その中枢に初めてカメラが入りました。

現れたのは2本の巨大なアーム。水素を積んだ船に接続し、陸上のタンクに移し替えるためのものです。

岩谷産業のプロジェクト部、中島康広部長、
簡単そうに見えて非常に難しい技術、ノウハウ。世界でここが初めて。

国内最大という水素タンクの容量は2,500キロリットル。燃料電池車3万台分です。

大規模な水素の調達から供給までの仕組みを構築することでコストを下げ、安定して水素を流通させる狙いです。

液化水素は日本がリードしている。

リードを維持して諸外国に負けないよう発展していきたい。

日本にとってカーボン・ニュートラルの切り札ともいえる水素。
世界での競争が激化する中、国はどうバックアップするのでしょうか。
梶山弘志経済産業大臣がテレビ東京の単独インタビューに答えました。
いろいろな規制がある。安全を大前提に規制をいかに緩和していくか。

そして使いやすいようにしていくかも国の役割だと思っている。

「水素分野での『オールジャパン』体制について?」

歓迎している。ただ市場は日本だけではない。海外の市場もいかにとっていくか。

規格や標準などもある。

民間の力をどう合わせ、国がどう後押ししていくか、経済界との対話もしていかなければ。
