株式会社佐田
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東京都千代田区にあるオーダースーツの専門店「SADA神田・秋葉原ショールーム」。
店内に入ってみると
少し腕を上げていただけますか?
店員がお客様の身体をメジャーで測っていました。採寸するのは20ヶ所。お客様の好みに細かく応えていきます。
ワイシャツがちょっと見えるくらい。
1センチ見えるか、0.5センチ見えるか、どっちがいいですか?
好きなデザインやボタンも選べます。既製品と違い自分だけの一着を作れるオーダースーツ。
SADAは初回1万9,800円からという低価格を売りに現在、全国に36店舗を展開しています。
株式会社佐田は大正12年(1923年)に生地の卸問屋として創業。戦後、全国のテーラーから注文を受け、自社工場でスーツの製造を始めました。
株式会社佐田本社
東京都千代田区にある株式会社佐田の本社。
社員は約200人。中堅のスーツメーカーです。
率いるのは4代目、41歳の佐田展隆社長。
我々の会社はずっと製造卸業をやってきたが、今、売り上げの半分が小売りになってきた。
佐田展隆社長は家業を継いだ11年前から小売事業に力を入れ、店舗数を拡大してきました。
しかし最近ある悩みがあります。店の急拡大に接客の質が追いついていなかったのです。
挨拶がない。暗い。全く提案がない。
顧客アンケートには手厳しい意見が寄せられていました。これからさらに店舗数を増やそうと考えていた佐田展隆社長。新しい社員も増えるため接客が大きな課題となっていました。
これだけ不満に思っている人がいる。これから新人が増えてくる中で、そういう人が増えてしまうリスクや可能性が十二分にある。接客のレベルをもっと上げていけたらいいなと。
株式会社サーキュレーション
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その佐田展隆社長が頼ったのは2014年に設立したばかりの株式会社サーキュレーション。
中小企業を相手に人材支援を行うベンチャー企業です。
登録しているのは大手企業の退職者など約1万人。中小企業からの依頼に応じて相応しい人材を用意できるのが強みです。
久保田雅俊社長は
中小企業が求めているのは正社員で若い人材はもちろんだが、経営に属する人材や課題を解決するプロ人材が全然いない。労働力の中でシニアが活用できることを強く感じた。
株式会社佐田
株式会社佐田の本社に株式会社サーキュレーションの久保田雅俊社長が2人の人物を連れて佐田展隆社長を訪ねました。
橋本さんの説明をさせていただくとディズニーを中心として、エンタメ業界、小売り、飲食と幅広く接客のプロ。
紹介されたのは57歳の橋本宏昭さん。国内に約50店舗を展開するディズニー・ストア・ジャパンにかつて勤務、優秀な接客を行った店に贈られるゲストサービス賞を11回受賞しました。
新道さんですが、もともと日立で生産技術の改革をしていたので、その経験を活かしてもらって。
続いて紹介されたのは65歳の新道友秀さん。かつて大手電機メーカー、株式会社日立製作所に勤務。長い間、工場の生産効率の改善を担当していました。
佐田展隆社長、大手企業出身のこの2人に接客と工場の改革を託すことにしたのです。
橋本宏昭さん
2月4日、接客のプロの橋本宏昭さんが早速動き出しました。
訪れたのは都内にある「SADA神田・秋葉原ショールーム」。まずは現状を把握するのが狙いです。
店に入ると店員の姿はあるものの電話対応に気を取られ橋本宏昭さんに気が付きません。
ようやく気付いた男性店員が奥から出てきました。
橋本宏昭さん、身分を明かし視察に来たことを伝えます。そして店内をくまなく見て回ります。
すぐに表情が険しくなりました。
どうですか、あそこを見て、どう思います?
生地を展示している棚の上には剥き出しの配線が置かれています。さらに照明もひとつ切れていました。
今度はバックヤードに、様々なものが雑然と置かれ通路にはゴミ袋が放置されています。
バックヤードは売り場と一緒でないとおかしい。バックヤードイコール売り場だから、あれが汚くてこっちがキレイということは絶対にない。
新入社員
4月27日、都内にある「SADA神田・秋葉原ショールーム」。
定休日のこの日、今年の新入社員が集められていました。
株式会社佐田はこれまでスーツ販売の経験者などを中途採用してきました。しかし店舗を増やすのに伴い2015年から新卒の採用を始めたのです。
1ヶ月間の研修を終えた新入社員たち。どれだけ接客が身についたか幹部が見守る中、その成果を確認します。
新入社員は店の入り口付近で接客を始めました。
その様子をじっと見つめていたのがディズニー・ストア・ジャパン出身の接客のプロ、橋本宏昭さんです。
すると突然、新人たちを店の入口に集めました。
こっちに来て。ゲストとして店に入ってきたらどこに一番、目が行く?
なんであれがあるのか分かる?
いらないよね。
店に入ってまず目が行くのは正面の奥、そこには採寸の時に着てもらう上着が無造作に掛けられていました。
あそこに一番いい、きれいな生地が掛かっていたら、そっちに行かない?
橋本宏昭さん、常にお客様の目線で考えることが大事だと伝えます。
人間ってどっち側に動くの?
考えたことある?
人間って左から動く、分かる?左に心臓あるでしょ。
左回りでお客様を奥に導くと
全部見える。1万9,800円の生地があって、2万4,800円があって、全部見える。
選べる。色もわかる。
店の中央まで来れば生地の値段や色など全て見渡せます。
ここまで入ってきたらどう?もっと接客しやすい。
ここに止まらず。
店の入り口付近ではなく奥まで引き込んで接客したほうがいいと伝えます。
ここに入ってきて気付かなかった?あそこのライト。
そこにあったのは電球が切れているライト。そして
後ろ見て。
足元には乱雑な配線が丸見えです。
橋本宏昭さんの狙いは新人に語りかけながら、さりげなく先輩社員や幹部に伝えること。接客について真剣に考え直してほしいと。
皆さんなんです、ブランドを作るのは。とにかく佐田という会社を好きになってください。商品を好きになってください。
次に研修で学んだ採寸作業の確認です。
その様子を見守る橋本宏昭さん。実はすでに15ヶ所の株式会社佐田の店舗を視察していました。その結果、お客様と一番接する採寸こそ、真っ先に改善が必要だと考えていたのです。
ゲストに喜んでもらうことによって、リピーターに来てもらう。ゲストの満足度は一番大きい。店によって採寸方法が違ったり、採寸をちゃんとやっていなかった。
採寸方法
5月18日、大阪の梅田駅の近くにある株式会社佐田の店舗。そこに直営店の店長が集められていました。
橋本宏昭さん、それぞれの店が普段どのような採寸の仕方をしているのか互いに見てもらうことにしたのです。
まずはパンツの採寸。ある店長は全体の長さを測った後、股上を採寸しました。そして、なにやら電卓で計算を始めます。すると測っていない股下の欄にも数字が。
幹部が思わず確認に来ました。
全部採寸している?膝幅とか。
膝幅は計算して出している。股下も股上も決めて、そこから計算しているので、あまり測らない。
独自に考えたという測り方に、他の店長たちは驚きを隠せません。
続いてベテランの女性店長は
こう突っ込んで。
股下の採寸はお尻の下から測っていました。
さらに別の店長は
この地点から真っ直ぐ落とす。
橋本宏昭さんは
ここを測ったらいいのにってありますよね?今見ていても違うと思う、自分のやっていることと。それを統一したい。
佐田としてのブランディングをしたい。どこの店でも判で押したようにできれば安心して買いに来られる。
これまでは経験者が多かったため、採寸の仕方はそれぞれに任されていました。しかし新入社員が増えてきた今、全店舗で統一したほうがいいと橋本宏昭さんは考えたのです。
そこで店長たちが協力をしてマニュアル作りが始まりました。果たして接客が変わる第一歩となるのでしょうか?
新道友秀さん
6月上旬の中国・北京。大手電機メーカー、株式会社日立製作所出身の新道友秀の姿がありました。
向かったのは郊外にある株式会社佐田の工場です。
ここには中国人の従業員が約300人働いています。
日本から送られてくるデータに合わせて1日400着のスーツを生産しています。1着1着違うため手間の掛かる作業です。
検品ではねられた不合格品が数多く出ていました。
こうした不合格品はもう一度やり直すため、生産ラインに戻されます。これを先に仕上げないとならないため、今行っている作業は止めなければいけません。生産性が著しく低下していました。
新道友秀さんは、この改善のために送り込まれたのです。
目指すのは究極の作業工程を作り上げたい。
早速、取り掛かります。おもむろにポケットから何かを取り出しました。ストップウォッチです。
目を留めたのはスーツの襟のパーツを作る工程。生地に型紙をあて写していきます。1着1着が違うオーダースーツ。襟の型紙は300種類あり毎回、その中から1枚を選び出さないといけません。これが時間のロスになっていました。
今、10着で12分。
さらに新道友秀さん、工場内のあちこちにカメラを設置していきます。効率の悪い作業はないか探します。
次に向かったのは検品エリア。出荷前のチェックではねられた不合格品がたくさんあります。中でも多いのが柄のずれ。襟と背中のストライプの線がずれています。
その原因を探り始めた新道友秀さん。ある装置の前で足が止まりました。
従業員が持ってきたのは全てのパーツが縫い合わされた上着。人型の装置にセットして形を整えていきます。そして特殊なアイロンを使ってプレス。これで襟が仕上がります。
この工程に問題があると睨んだようです。
新道友秀さんが宿泊しているホテル。毎晩、部屋に戻ると工場に設置していたカメラの映像をチェックしていきます。
だいたい16歩で落ち着きましたね。
無駄な運搬、価値を生まない作業が発生している。
この映像の中に様々な問題点が潜んでいたのです。
改善作業
カメラの映像を分析して作業効率の悪かったレイアウトはどんどん変えていきます。
襟をパーツを作る工程、300種類の型紙の中から1枚を選び出すため時間がかかっていました。新道友秀さん、パターン毎に小分けできるカゴを用意していました。整理整頓することで探す時間を短縮するのが狙いです。
1日400着分、同じ作業を繰り返します。1回に探す時間を計測してみると
10秒前後縮められるかな。
次は不合格品の中でも特に多かった襟の柄ズレ。新道友秀さん、襟をプレスする機械に襟元を映し出す拡大鏡を設置しました。鏡には矢印までつけました。さらに人が近づくと光るセンサーまで設置。
人が近づいたらライトがつく。ライトによって刺激されて「確認しなければいけない」という。
早速やってもらいます。近付くとライトが点灯。拡大鏡を付けたことで襟の柄がはっきりと確認できるようになりました。ミスを生み出す要素を見事に改善しました。
次々に改善作業を進める新道友秀さん。なんだか仕事が楽しくて仕方ないよいう感じです。
今まで培った技術を発揮できるのは嬉しい。お金ではなく、自分の居場所が見つかったなと。
SADA千葉駅前ショールーム
6月18日、千葉市。今、全国に店舗を拡大しているオーダースーツSADA、また新しい店がオープンしました。
そこにディズニー・ストア・ジャパン出身の接客のプロ、橋本宏昭さんの姿がありました。
手にしていたのは店長たちと試行錯誤して作られた採寸マニュアル。ついに完成したのです。
「ゲストが安心するように」というのがここに入っている。クオリティーは業界ナンバーワンになるんじゃないかなと。
採寸方法が写真付きで詳しく書かれています。店員の立ち位置から声掛けまで、お客様の気持ちを考えて作られていました。
早速、マニュアルに沿って採寸が始まりました。バラバラだったやり方をこれからは全国の店舗で統一していきます。
大手出身者の力を借りた改善は始まったばかり。佐田展隆社長も手応えを感じていました。
やっとベースができたところ。どれだけ磨き上げていけるかが、うちの勝負だし。
スーツ着る人で知らない人がいない会社になりたい。
今後は接客全般のマニュアルも作っていくそうです。
基本的にゲストサービスは変わらない。接客する人の気持ちだけだと思う。
すごくいい企業になってほしい。いい企業であってほしい。やりからには1番になってほしい。
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