福田貴仁さん
北海道釧路市阿寒町。巨大な規制と戦う酪農家がいました。
福田貴仁さん(32歳)。
福田さんが酪農を始めたのは6年前。脱サラして築40年の牛舎を買い取り奥さんと2人でやってきました。
その福田さん、経営規模を拡大するため出荷先を指定団体からMMJに変えたいと考えたのです。
チャレンジしようと思ったのはMMJの存在があった。「高く買ってくれるところがあればできるんだ」というところを見せたい。
ホクレン農業協同組合連合会
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福田さんが生乳を出荷するのは指定団体のホクレン。生乳の流通の半分以上を握る農協系の巨大組織です。
2016年7月、福田さんは出荷先をホクレンからMMJに変えたいと地元の阿寒農協へ相談に行きました。
MMJとコンタクトを取っている。阿寒農協の組合長として、どう考えているのかな。
とりあえず歓迎はできないよな。行くのは個人の責任で行くんだから、それはしょうがない。ただリスクは背負ってもらうよ。
MMJに出荷できるよう福田さんは野村宏組合長と粘り強く交渉を続けました。
その一方で家族の生活を安定させたいと、
新しい牛舎を造っているんだよ。
将来への巨大な投資にも踏み切っていたのです。
新牛舎
2017年2月、3ヶ月ぶりに福田さんを訪ねました。
福田さんの軽トラックについていくと現れたのは巨大な建物。全長100メートルを超える新しい牛舎が完成していました。
総工費は牛の導入費用も入れて5億5,000万円。かなりの投資ですよ。
費用は全額、銀行からの融資。MMJに出荷して高い収益を上げる事業計画が評価されました。
自動でエサをやる最新の設備も備えています。
MMJに出荷することで利益が出れば、まだまだ大きくしたい。
買取価格
一方、そのMMJ。茂木さん、ある資料を手にしていました。
指定団体のホクレンが組合員にあてた文書です。
生乳の買取価格を4月からキロ当たり2円60銭引き上げるという内容。
MMJによるとホクレンが酪農家に支払う生乳の価格は平均でキロ88円、一方、MMJは92.5円。4.5円高く買い取っていました。ホクレンが2円60銭引き上げると差はグッと縮まります。
農協の組合員に対して離脱を防ぐためにいろいろな策を講じている。これもひとつですけど。
生乳の自由な取引を目指す茂木さん、正念場を迎えていました。
阿寒農業協同組合通常社總会
6月2日、北海道釧路市阿寒町。険しい表情の福田さん。
やって来たのは町の公民館。この日、阿寒農協の総会が開かれることになっています。
福田さん、2日後に出荷先をMMJに切り替えると知らせていました。
この総会でまさかの事態が…。
福田さんを追って会場に入ろうとした時、なぜかガイアのカメラだけ止められました。
居合わせた酪農家が、
「ダメ」って誰が決めた?そんなこと決められるわけない。報道の自由ってことがある。
農協で決めたこと。
「農協で決めた」って?なんで報道規制かけなきゃいけないんだ。トランプを同じじゃないか。
閉めます。
結局、中には入れませんでした。
そして総会が始まると農協の幹部が予想外の提案をしたのです。
野村宏阿寒農協組合長、
「賦課金」については牛乳の販売物に対して50銭かかるという認識。
福田さん、
出荷しないんです。僕は農協に。なのに、なぜ徴収するのか意味が分からない。
阿寒農協の組合長が切り出したのは賦課金という新たな仕組みでした。生乳の出荷量に対して組合員からキロ当たり50銭を徴収するというものです。
私は6月4日からMMJに牛乳の出荷を開始します。私は農協に牛乳を出荷しません。農協に賦課金を払う必要がないと思いますが。
福田さんの牛乳は農協に出荷しなくても賦課金を徴収することになる、という認識。
農協に出荷しなくても賦課金を支払う義務があるというのです。
これには他の農家からも反発の声が上がります。
僕は福田さんのことも含めて、このやり方は納得できません。
賦課金を払わないものは農協を除名処分になる。これを通してしまうと「MMJには出荷できませんよ」と言うことと同じ。そこまで考えてやっていますか。
組合長は、
農協経由ではない販売口についても賦課金を徴収いたします。
地元の新聞は阿寒農協が提案した賦課金に対して出席者の半数近くが反対したものの可決されたと報じました。
5時間にも及んだ大荒れの総会。
福田さん、賦課金はいくらになるのか?
月々、約10万円。
月に10万円、農協に支払う事になります。
大きな影響ですよ。年間で言ったら120万円以上を農協に出荷しないにも関わらず徴収される。おかしいんじゃないですか。
そこで組合長に直接、話を聞くことにしました。
「組合長は誰の見方?」
組合員の見方ですよ。
「賦課金は?」
賦課金は組合員は必ず払わなくてはいけないものだから。
突然導入した賦課金について組合長から説明を聞くことはできませんでした。
初出荷
2日後の6月4日、福田さんがMMJに初めて出荷する日です。茂木さんも群馬から駆けつけてきました。
指定団体からMMJに切り替えると福田さんの売り上げは年間2,000トン出荷した場合、600万円ほどアップします。
地元の酪農家も集まっていました。
これが新しい農業の始まり。
今すぐというのは難しいと思うけど、MMJに送ってみたいという気持ちは十分。いい風穴を開けてくれたと思うよ、福ちゃん。
福田さんの生乳は岐阜県の乳業メーカーで加工され中部や関西で牛乳として販売されます。
賦課金の問題はまだ結末が見えません。しかし、
この改革を止めてはいけないので僕は牛乳を出荷する。賛同してくれる農家もいるので、そういう方と力を合わせながら阿寒農協という地元の農協から変えていけたらなと思う。
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巨大「規制」に挑む!〜明かされる「バター不足」の闇〜
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