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[モーニングサテライト]【Marketリアル】コマツ 小川啓之社長に聞く![株式会社ポピンズホールディングス]

2021年11月15日

モーニングサテライト

建設・鉱山機械で世界第2位のコマツ。

2021年3月期の売上高はおよそ2兆2,000億円、営業利益は1,670億円です。

国内外におよそ80の生産拠点。

従業員6万人以上を抱え、売り上げの9割が海外というグローバル企業です。

そのコマツを率いるのが2019年に就任した小川啓之社長。

中国以外のすべての国で売り上げが増加した。

今年、創立100周年を迎えたコマツ。

その原点となるのが1943年に製造した国産初のブルドーザー「G40」。

次の100年に向けて小川社長は…

われわれはメーカーなのでものづくりと技術の革新で新しい価値を作っていくことが非常に重要。

足元では中国経済の減速、そして脱炭素の流れは鉱山現場にも…

ビジネス改革は急務です。

小川社長が激動の世界経済を読み解き、コマツの成長戦略を語ります。

株式会社小松製作所

[blogcard url="https://www.komatsu.jp/"]

Marketリアル、今回はゲストをお迎えしています。今年、創立100年を迎えたコマツの小川啓之社長です。

まずは小川社長の経歴をご紹介します。

1985年にコマツに入社、主に生産畑を進んでいて2019年に社長兼CEOに就任しました。

コマツの業績です。10月下旬に決算を発表して、四半期で増収増益となっています。

また通期の業績も上方修正となりました。

社長自身はこの足元の業績をどうご覧になりますか?

コロナの影響が縮小、世界で見ると中国以外の全ての地域で需要が急激に回復。その需要を最大限を取り込むことができた。

半導体やコンテナ船の不足の影響はあったが対策を講じながら今のところ大きな問題もなく事業は継続できている。

コマツの株価は上場来高値である18年1月の4,475円は超えれていないが足元では好調な決算もあって上昇傾向。この株価は経営者としてどうご覧になる?

株価は通年の上方修正もあって若干上がっている。株価は市場や投資家の評価だと思う。2019年に発表した中国の経営計画、ここの成長戦略をきっちり実行して、さらに企業価値を上げていく努力をしたい。

上場来高値の4,475円を超えていく意識は経営者としてありますか?

できるだけ企業価値を上げていく、できるだけ努力していくということだと思います。

テーマを3つにまとめました。「世界景気を読み解く中国減速影響は?」「競争力の源泉は「国内生産」にあり」「鉱山現場も脱炭素…電動化戦略は」。

世界景気を読み解く中国減速影響は?

売り上げの9割が海外のコマツ。一番売り上げのが大きいのは北米、次に中南米市場。回復傾向と話していたが世界需要の見通しをどう見ているか?

北米はコロナの影響で縮小していたので経済が活発化して需要が回復している。

アジアはインドネシアを中心に公共投資が増えている。コロナの影響も足元では収束している。

鉱山は中南米を中心に銅や金、鉄が資源価格も上がっていることもあって堅調に推移している。全体的に非常に好調。

世界の建設現場を見た時に世界経済はどうなっているのか、不透明感が高まっているところがあったりするのか?

「KOMTRAX(コムトラックス)」といって機械稼働を見るプラットフォームがある。全世界で65万台の機械が動いている。その機械の全ての稼働率を見ることができる。

中国以外の地域は稼働率が上がってきている。中国は4月ぐらいからコムトラックスを見ても稼働率が下がっている。

北米の状況を一番注視しているが北米はリスクとオポチュニティが混在している。テーパリングや金利の話もあり、これが資源価格やアジアを中心とした新興国にどう影響するのか注視している。

北米の指標で注目しているものは?

北米は住宅着工件数、リグ・カウント。この2つが建設機械には相関関係がある。

海外売上比率では中国が4%。これはどう解釈すれば?

中国は売上げでは4%。世界各国でバランス良く売上を上げていくのがコマツの特徴。中国の影響はわれわれにとってそんなに大きくない。

中国の売上高は10年前と比較すると4分の1に減っています。これも戦略的に?

戦略的というより結果としてそうなった。2010年はリーマン・ショック後に中国の4兆元投資で売り上げが上がった。

10年経って中国メーカーの技術も上がった。当時は7割が外資系で3割が中国系だったが今は逆転している。中国市場は中国政府の意向がかなり強く働くので中国市場は難しい。

コマツ全体のビジネスで言えばそんなに大きな影響は及ばさない。

今の中国の状況をどう見ている?

中国を見るときに建設投資プロジェクトの件数と金額、地方政府が発行している債権の金額を見ている。今年1~9月までの状況を見ているとかなり悪い。マイナス40%くらい。

中国の経済そのものが低迷している。

中国経済は今が底なのか、まだ下がるのか?

40%くらい落ち込んで建設機械の需要も落ち込んでいる。この状態がしばらく続くと思う。

来年の12月に中国で排ガス規制が始まる。その前に含み需要が始まるので今年はあまり良くないかもしれないが来年前半は少し回復する。

排ガス規制で機械の値段が上がるので、排ガス規制のあとはその反動でさらに落ち込むと思う。

中国は今年100周年、来年は党大会なので急激な落ち込みは抑え込むという事がある。

中国のメーカーが追い上げています。世界の建機の売上高ですが1位はアメリカのキャタピラー、そして2位にコマツ、3位には中国の・三一重工。三一重工は時価総額ではコマツを上回っていますが、これは驚異?

われわれは建機のフルラインメーカー。一方、三一重工は油圧ショベル。競合しているところは10~15%にしか過ぎない。同じ土俵で勝負しているとは思っていない。

ただし、ASEAN、チャイナ経済圏が拡大していく中で中国メーカーがアジアに進出するのは自然の流れ。中国メーカーがアジアに出ていくのは脅威。

アジアは何らかのかたちで対策をしていくことが必要。

競争力の源泉は「国内生産」にあり

東京ドーム7個分の広さを持つコマツ茨城工場。

超巨大なダンプロタックがこちらに向かってきています。住宅が一棟移動しているかのような大きさです。

世界中の鉱山現場で活躍するダンプロタック「HD785」。高さ5m、全長10m、積載量90トンのオートマチック車。

今回、特別に運転席に座らせてもらうことに。

巨大ロボットを動かすような感じ。

目線の高さが全然違う。

この工場で製造されるダンプトラックとしてはこの大きさでも中型クラス。

この茨城工場の特徴は開発機能を工場内に持つこと。

開発と生産機能を持つ工場、それが全世界に9ヵ所あるマザー工場なのです。

開発をしながら作り込むこと、これがコマツの強み。

この工場では3つの製造ラインで5種類の鉱山機械を製造しています。

今回、大型車両の製造ラインを特別に取材できました。

これは土砂をすくって積み込む車両「ホイールローダー」です。

エンジンを始め主要部品は日本で生産するのがコマツの特徴なのです。

パーツを一つ一つ取り付けて製造するため、このラインでの1日の製造台数は1台程度だといいます。

クレーンが運んでいたのは巨大ダンプトラックのエンジン部分。なんと50トン以上の重さがあります。

コマツが生産している全長13mの巨大ダンプトラックです。

コマツ茨城工場の生産部、山中崇さん。

ロシアのシベリアまで運び、その後シベリア鉄道で1週間。

あまりにも巨大で道路を通れないため、エンジン部分とパーツを船に乗せて輸出し、現地で組み立てます。

並んでいる車両はすべて輸出用。茨城工場で製造された9割が海外向けなのです。

オーストラリア行き、インドネシア行き、フィリピン行き、アメリカ行きになります。

小川社長も工場長を務めた茨城工場ですが、マザー工場には開発機能を持たせています。これはなぜ?

サイマル活動、一般的にいうとコンカレントエンジニアリング。開発段階でQCDを作り込む事が必要。そのためには開発と生産が同じ場所。マザー工場の定義はフィジカルに生産と開発部門が同じ場所にいること。

これで開発と生産の効率化が進む。

海外売上比率が9割なのに日本での生産にこだわる?

われわれの事業は自動車と違って少量多品種。エンジン、トランスミッションなどキーコンポーネントは日本一国で開発して生産することで日本で作ったものを海外の80ヵ所の工場に展開することで海外でも同一品質で効率の高い車を生産できる。コンポーネントを自社で開発するのがコマツの強み。

鉱山現場も脱炭素…電動化戦略は

東京・南青山。ここに電動化のヒントがあります。

ホンダの本社に来ています。自動車ではなく小さなショベルが展示してあります。

実はこれはコマツの電動マイクロショベル「PC01」。エンジンにあたる電動パワーユニットと交換式バッテリーをホンダが提供しています。

ホンダの阿部日登司さん。

2輪のスクーターなどに使えるように設計していたが電池をいろいろな商品に広げていくために建設機械でも使えないかということで。

電動化を進めるためのコマツとホンダのパートナーシップ。

世界最小の電動マイクロショベルは庭の手入れや造園などに使用。

来年の春に市場導入を目指しています。

さらに海外でのパートナーシップも。

コマツはアメリカのプロテラ社のバッテリーを使い電動化した鉱山機械の来年の量産化開始を目指しています。

また今年8月には世界の資源大手と提携。

バッテリーや水素などあらゆる動力源で稼働可能な超大型ダンプトラックを開発し、2030年の市場導入を目指しているのです。

その狙いとは…

コマツは2050年までにCO2排出を実質ゼロとする長期ビジョンを発表しました。

そしてコマツが進めているパートナーシップ戦略が資源大手4社との連携、そしてバッテリーではホンダやプロテラ社との共同開発です。

電動化を早く進めるためには必要なパートナーシップ戦略ですか?

小さなマイクロショベルから鉱山で動いている大きなものまで機種、クラス、地域ごとに色んな方法がある。どういった電動化の方法が最適か判断することもあって開発パートナーを見つけていった。

コマツGHGアライアンスにとっては技術的な協業だけでなく、お客様と一緒に共用することが電動化をさらに加速していく、開発スピードを上げていく。われわれは不可欠だと思っている。

鉱山では2030年までにどのような動力源でも動くような「パワーアグノスティックダンプトラック」と言っていますが、こういったダンプトラックを開発すべく大手の鉱山会社とアライアンスを組んで開発のスピードを上げていく。

電動化の課題は?

小さなものから大きなものまで出力でいうとホンダのマイクロショベルは3kwくらい、一番大きなダンプトラックは1,500kwくらいの出力が必要になる。こうした出力の違いや稼働時間、小さな車では1日数時間のものから鉱山現場では24時間動いているなど違う。使用環境、われわれはオフロードなので使用環境が全く違う。

こういった課題をどのように解決していくかが非常に重要。

単なるバッテリー連動だけでなくハイブリッドやディーゼルエレクトリック、フューエル・セル、水素エンジン、あらゆる全方位的な電動化に向けての研究開発が非常に重要。

石炭から離れていく脱炭素・脱石炭の流れが世界的なトレンドとなる中で鉱山での建機需要は減っていく?

短期的に見ると石炭の生産量は大きく変わらない。短期的にはビジネス上のリスクは非常に少ない。

中長期的に見ると必ず石炭は落ちてくる。われわれのビジネスでも石炭への依存度を下げていくことが非常に重要。

現状では全売上の10%強が石炭鉱山向けだが売上が史上最高だった2018年と比べると石炭のマイニングの売上高に占める割合は10%くらい下がっている。

一方で銅、鉄、金で10%上がっている。

石炭からほかの資源へシフトしている。石炭への依存度を下げていく、カーボンニュートラルに向けて社会にも貢献していく。これが非常に重要。

石炭価格の今後の需給や価格についてどう見ている?

石炭の最高価格は2011年だったが今はそれを超えている。昨年の9月が底でそこから今は6~7倍になっている。

高い値段ではあるがこれ以上石炭の価格が上がることは考えづらい。これから右肩上がりに上がることはないと思う。

お客様も新車購入を先送りにするなどの動きも見て取れる。

資源価格はわれわれにとっても非常に重要。

ハードロック化を進める中でM&Aも考えている?

石炭からハードロック、銅や金、鉄に移行していく中でM&Aも考えていきたい。特に自動化やソリューションビジネスのM&Aを将来的に考えていきたい。

ハードロックのビジネス、鉱山機械のビジネスをさらに成長させていくことが今後必要。

一番重要なのはPMI、相乗効果をどう出していくか、こういった事を考えながらM&Aを進めていきたい。

ハードロックの分野では先行している企業も多いが、そこにどうやって打ち勝っていく?

後発の立場なので3つのキーワード、「ノーブラスティング」「ノーバッチ」「ノーディーゼル」で新しい機械を開発していく。

新しい候補をお客様にアピールしていくことがハードロックのビジネスの中で重要だと思っている。

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