著名な経営者の方から生きた経済を学ぶ新コーナー「モーサテ塾」。
初回シリーズの講師はモーター大手「日本電産」のCEOに復帰することを発表した永守重信さんです。
一代で日本電産を連結売上高1兆9,000億円の大企業へと成長させた永守さんが若い学生たちに経営の極意を熱く語りました。
企業の価値を決めるのは?
4月上旬、モーサテ塾の舞台となった京都先端科学大学です。
講師として迎えたのが世界最大の総合モーターメーカー「日本電産」の永守重信会長です。
講義を聞くのは京都先端科学大学の学生12人。経済経営学部や法学部で学んでいます。
学生

起立。
よろしくお願いします。
野沢春日キャスター

モーサテ塾開講です。
今回の講義のテーマは「何が企業の価値を決めるのか」についてです。
日本電産
永守重信会長兼CEO

1973年7月23日に従業員3人を納屋に呼び、みかん箱の上に立って今からわが社がどうなるか説明した。
1973年、永守さんは自宅の納屋で3人の従業員とともに日本電産を創業しました。
若い3人に対する初めての訓示、永守さんはこう語ったのです。
日本電産
永守重信会長兼CEO

「目標は1兆円」と言った。
「1兆円?1億円の間違いですか?」と。
「違うと、1兆円だ」と1兆円の道を歩んでいくと。
企業を成長させる勝利の哲学とは
それからおよそ半世紀、日本電産が大きく成長した背景には永守さん独自の勝利の哲学がありました。
日本電産
永守重信会長兼CEO

まず最初は大ボラ。
中ボラ、小ボラ、夢。
まず有言実行。無言では実行できない。
車載用のモーターをやろうと思いトヨタのCTOに会いに行った。
「一番難しいモーターは?」と聞いた。
そうしたら「パワステ」だと。
走る、曲がる、止まるというのがクルマの最も重要な基本性能。
中でも電動パワーステアリングはモーターの力でクルマのハンドルを軽くし、運転をしやすくする重要な部品です。
日本電産は1995年にこのパワステのモーターを開発するプロジェクトを立ち上げます。
日本電産
永守重信会長兼CEO

「それから私やりましょう」と「ワイパーくらいから出発すべきだ」と。
それは常識。
今からパワステのモーターをやると何もない、専門性もないけど、だけどいま世界一になっている。
この大学も将来、ハーバードやMIT、ケンブリッジも全部抜く。
永守さんはいま理事長として京都先端科学大学の運営を手掛けています。
これまでに実に200億円の私財を投じ理想の大学像を追求しているのです。
2020年4月に新設した工学部。その中には…
野沢春日キャスター

機械工房というところですが、ずらっと並んでいますね。
メーカーで使われるざまざまな加工設備がありました。このような設備を学生が実際に使いながら学ぶことで製造の現場に出たときに求められるノウハウを身に受けることが狙いです。
授業の様子を覗いてみると
講師

This longer one should go here.(長い方をここに挿す)
英語で教えています。海外の工場で活躍できる人材を育てようとしているのです。
そのために世界の各地から講師として優秀な技術者を招いていました。
さらにプロジェクトという課外授業では学生が自主的に技術開発を行います。
こちらの学生はワイヤレス給電のシステムを作っていました。
こうしたカリキュラムにより世界を舞台に活躍する技術者を育てようというのです。
野沢春日キャスター
決算説明会で「不透明」と言わない?

日本電産
永守重信会長兼CEO

使わない。
不透明と言い出したら毎日が不透明。
何も起きなければ経営者は要らない。
会社経営の基本は「足元悲観、将来楽観」。将来の姿はロボットの世界から車の世界からどんどん広がってくる。
足元はロシアとウクライナの問題は影響がないかと思ったがロシアも世界のサプライチェーンに入っていた。
決めるリーダーが一番株を持っている。最大のリスクを負うのは筆頭株主だ。
24時間モノを考え続ける。それをエンジョイしている。
成長を支える現実的な経営とは
大ボラともいわれるような夢を掲げて会社を成長させてきた永守さんですが、生き残るための現実的な考えの持ち主でもあります。
野沢春日キャスター
キャッシュの重要性とは?

日本電産
永守重信会長兼CEO

キャッシュ イズ キング。
ロシアの問題が起きた、コロナも起きた、中国でロックダウン、キャッシュがなければ倒産する。
野沢春日キャスター
設備投資にはキャッシュが必要?

日本電産
永守重信会長兼CEO

キャッシュは貯金ではなく再投資するために必要。
Cash is King. 成長も倒産も現金次第
大きな夢、現実的な永守さんの経営戦略を聞いた学生からはこんな質問も。
学生
コストをかける所とかけない所、どう見極める?

日本電産
永守重信会長兼CEO

それはリターン。
リターンが大きければコストをかけてもいい。
日本の若者が起業して失敗するのはリターンの計算ができない。
一人の人間の能力はあれもこれもできない。
日本ではエンジニアが社長をやり、全部やろうとする。だから失敗する。
僕は28歳で会社をつくった時、50代の経理の専門家をCFOにした。
弱いところは人の助けを得る。そういう起業家が成功する。
野沢春日キャスター
企業の価値を高めるために最も需要なことは?

日本電産
永守重信会長兼CEO

従業員が目標を同じくして、一生懸命働いて、成長するために頑張っていく。一人ではできない。
同じベクトルの考え方を持った人が集まらないと大成功できない。
大学で技術開発のプロジェクトに取り組んできた学生たち、永守さんの言葉が響いていました。
工学部2年
西山さん

起業しなくても、起業しても、将来に非常に役に立つ。
成長の糧になる話が聞けて人生で一番価値がある3時間。
工学部2年
池原さん

プロジェクトで携帯電話をつくろうとしていて、人に頼ることが苦手でみえを張ってしまう癖があった。
人に委託してもいいと思えたし、夢を実現するための方法がわかった。