7月29日にアメリカの4-6月期の実質GDP(国内総生産)の速報値が発表されました。年率換算で前の期と比べて6.5%増えて4四半期連続のプラスです。
新型コロナによる打撃からの経済の回復、確実に進んでいることが示されたというこいますが今後もこの成長の勢いは続いていくのでしょうか。
インベスコ・アセット・マネジメント株式会社
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ニューヨーク市局の西野志海キャスター。
毎日少しずつ経済の再開が進んでいることを感じます。私はいまニューヨーク・マンハッタンの中心部に来ています。この辺りはオフィスビルが立ち並ぶ場所で最近ではスーツ姿のニューヨーカーを見かける機会も増えました。観光客の姿も少しずつ戻ってきています。
ただ、人の数はコロナ前の半分も戻っていない印象でまだかつての賑わいには及びません。
先程発表された4-6月期の実質GDP(国内総生産)の速報値は前の期と比べて年率換算で6.5%のプラスとなりました。市場の予測を下回ったものの新型コロナ危機の前、2019年10-12月期の水準を回復しました。
内訳を見るとGDPの7割近くを占める個人消費は11.8%の伸び、高い成長を維持しています。
一方で企業の設備投資の伸びは8%と前の期の12.9%から減速しました。これは経済活動の再開にともなうさまざまなコスト上昇が影響してきている可能性があります。
わたしの後ろには惣菜などを売る飲食店があります。朝ごはんを買いに来ている人で朝は賑わっています。ニューヨークでは6月頃からこうした店が続々と再開していますが、ここでもコストの上昇が影を落とし始めています。
午前9時ごろ、店内には朝食を求める重数人の行列ができていました。
7月4日の独立記念日後にオフィスに戻った。もう週5日出勤している。
これから大事な約束がある人も。
このビルのオフィスに就職の面接を受けに行くところ。
この店のオーナー、77歳のジョン・・ザバンティスさん。
客足はコロナ前の4割近くまで回復したものの新たな悩みの種があると話します。
全てのコストが上がっている。全てだよ、全て。
食材などの仕入れ価格の値上がりでコストが上昇。
しかし、ようやく戻ってきたお客様をつなぎとめるため商品の値上げはできないのが現状です。
さらにもう一つ、コスト増につながっているのが賃金です。
あと4~5人の従業員が必要だ。
「これまでに賃金を上げた?」
もちろん。もちろん。
「どのくらい値上げした?」
20%だ。
経済再開に伴い店員を募集しましたが人手不足でなかなか採用できず、賃金を引き上げました。
材料費と人件費、2つのコストアップがアメリカ経済の先行きに影を落としています。
アメリカの金融大手「バンクオブアメリカ」は、2021年通期のGDP成長率の見通しを7%から6.5%にへ下方修正しました。
担当したエコノミストは物価上昇について…
バンクオブアメリカ・メリルリンチのジョー・ソン氏。
物価上昇は年末まで続くだろう。物価は引き続き上昇し、高いインフレ率が続くが、それでも一過性のものだと考える。
物価の上昇は一過性だと見ています。
一方、労働力不足の解消には時間がかかると指摘します。
労働市場では"地域のミスマッチ"が起きている。
多くの仕事がある大都市から多くの人材が流出した。
最近の新規感染者数の増加に対する懸念が高まっていて、働き手が労働市場に復帰するのがさらに遅れる可能性がある。
こうした中、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は28日、大規模な金融緩和の維持を決定。
パウエル議長は今後、複数回の会合で量的緩和の縮小に向けた議論を続ける考えを示しつつも、雇用の回復が十分でないと強調します。
最大限の雇用という目標達成に向けた実質的な前進にはほど遠い。
私は力強い雇用統計を見たい。
さらにアメリカ経済の先行きに重しとなりうる要素は国外にも。
1つは新興国の状況だとアメリカ経済に詳しい専門家は話します。
インベスト・アセット・マネジメントの木下智夫氏。
新興国の景気の減速というものがアメリカのリスクになっている。
アメリカから見ると輸出の減速という形で悪影響が出ている。
アメリカとの貿易量が多いメキシコや東南アジアなど新興国ではデルタ株が急拡大。
ベトナムは先週末からハノイで厳格な社会隔離措置が開始。
タイ・バンコクでは今月中旬から夜間外出禁止が続きます。
こうした状況が長引けば新興国の内需が落ち込み、アメリカからの輸出減少につながると指摘します。
さらに…
中国景気の減速も今後のアメリカ景気のリスクになる。
出口の見せない米中対立。アメリカは中国向けの半導体輸出を制限しています。
中国の携帯大手「ファーウェイ」は7月29日、スマートフォンの新商品を発表しましたが最新の5Gの商品はゼロ。
そのワケは…
ファーウェイ消費者業務、余承東CEO。
この2年間、アメリカの4度にわたる制裁で弊社の5Gスマホは制限されてきた。
今は4Gしか使えない。
米中対立は中国へのダメージのほうが大きく、アメリカ経済へのリスクはあまりないと木下氏は見ています。
しかし、ダメージを受けた中国の経済が減速すれば対中輸出が減るという形でめぐりめぐってアメリカのリスクとして跳ね返ってくる可能性もあります。
新興国の問題、中国経済の減速、デルタ株のまん延で10-12月期のアメリカ経済、ややスローダウンしてピークアウトしていくような状況になってくる。
アメリカが減速となると世界全体に減速感が出てきて、国際商品市況にも悪影響をもたらす。金融市場でも動揺をもたらす。