
香港は7月1日にイギリスから中国に返還されてから25年目の節目を迎えました。
記念式典に出席した中国の習近平国家主席は香港に高度な自治を求める一国二制度が成功を収めたと強調しました。
しかし、香港では政治面や経済面で中国本土との一体化が加速していて、新たな課題に直面しています。
香港返還25年 習近平氏「一国二制度」の成功強調
返還から25年目という節目もあって祝賀ムードも見られた香港。
市民は…
香港市民

国旗を撮ってきた。きれいだった。
日本時間の午前11時に始まった式典では習近平国家主席が会場に姿を見せました。
挨拶で10回以上繰り返したのがこの言葉でした。
習近平国家主席

「一国二制度」。
習主席は「香港の一国二制度の成功は世界に認められている」と述べた上で、その根本は中国の国家主権を守ることだとして変える必要はなく長く堅持すると強調しました。
一国二制度に関する発言をめぐっては5年前に同じように香港を訪れた習主席は…
習近平国家主席

一国二制度が香港で実践される過程で新たな状況、新たな課題に直面している。
一国二制度の成功だけを強調せず、課題があることを認めていました。
しかし、7月1日の演説では課題を強調することはありませんでした。
この5年間で何が解決したのでしょうか。
立教大学 法学部
倉田徹教授

中国国内向けにも習近平氏が香港の2019年の混乱を抑え込んで、安定を取り戻したことを業績の一つとして宣伝したい意図も有るのではないか。
2019年に起きた民主化を求める大規模な抗議活動。
当時香港の治安部門の責任者としてデモの取り締まりを指揮したのが李家超氏。7月1日に新たに香港トップの行政長官に就任しました。
香港返還25年 反政府デモ多発!加速する本土との一体化
さらに香港では7月1日から治安部隊の行進方法を中国軍が採用する膝を曲げないスタイルに全面変更。権威主義と結びつく行進形式とされていて脱イギリスを印象付ける狙いみられます。
こうした振る舞いについてイギリス当地時代、香港最後の総督を務めたクリス・パッテン氏は冷ややかな目を向けます。
イギリス統治下 最後の香港総督
クリス・パッテン氏

中国が全体主義国家であり続ける限り香港の民主化は困難だ。
香港が中国に復帰した1997年、イギリスとの取り決めで50年間の高度な自治を認める一国二制度が採用されました。
その下で香港は国際金融センターとして躍進。急成長する中国市場の玄関口としての役割を果たしていました。
しかし、専門家は次第に中国本土の影響力が強まってきたといいます。
立教大学 法学部
倉田徹教授

中国政府は香港との経済融合を進めていく。香港に中国大陸から金や人が大量に流れ込む。
香港の経済にプラスの効果があったが、これによって不動産価格が暴騰する。
生活コストがどんどん高まる形で香港市民の生活に悪影響が生じた。
香港の不動産価格は返還後の2000年代から上昇。これによって特に影響を受けたのは経済的に厳しい若い世代でした。
中国離れの感情が膨らみ2010年代になると断続的に反政府デモが発生。これに対し中国政府は自由な選挙制度の変更や反政府デモを厳しく取り締まる国家安全維持法の施行などで対抗しました。
立教大学 法学部
倉田徹教授

何らかの政治的な理由、言論活動を理由に逮捕や検挙される状況になっている。
2020年の国安法(国家安全維持法)の前と後では「一国二制度」は大きく質の違うものになった。
香港を出ていく人が続々!
中国のゼロコロナ対策が原因
加速する香港の本土化。こうした中、ある問題が…
ビジネス街に近く外国人に人気のエリア。スペインレストランの入り口では入店登録とコロナワクチンを3回接種したことを証明する必要があります。
香港では中国本土に準じたゼロコロナを掲げて厳しい政策を続けているのです。
スペイン料理店マネージャー

コロナの規制が理由で多くの駐在員がいなくなった。
弁護士や大企業で働く人たちだが香港の政策にへきえきしていた。
別の店でも…
バーの店員

海外に出て行く人の送別会が多い。今月はほぼ毎週だ。
中国本土による取り締まりの強化に加え、厳しいコロナ規制が要因で香港を出ていく人が後を絶たないのです。
特に企業にとって足かせとなっているのは香港に入るときに全員に求められる7日間のホテル隔離の義務です。
世界3位の金融センターの香港には多くの外国企業の拠点がありますが、自由な出入りが制限されるため拠点を移す動きが起きています。
金融など大規模な頭脳流出
香港を出た人の多くが目指すのがイギリスです。
イギリス政府は去年始め、香港移民に対する特別ビザを発給。これを利用してイギリスに渡った人はすでに12万を超えました。
香港返還時を上回る人口流入ペースです。
ある調査ではこのうち11.5%が金融業界で働いていました。
ただ実際の数はもっと多いとも…
英国港僑協会
サイモン・チェンさん

金融部門は中国共産党政権の影響を受けやすいビジネスなので合理的に考える金融関係者は政治的な発言をすることを恐れている。
英国に多くの人が来ているが特定される情報を公にしたがらない。
アメリカ系の投資会社でアナリストをしているヘイズ・チャンさん。去年、40年住んだ香港を離れイギリスにやって来ました。
香港からの移民
ヘイズ・チャンさん

会社が香港支社を閉鎖することになった。その主な理由が国家安全維持法だった。
国家安全維持法の施行直後に勤めていた会社が香港支店の閉鎖に踏み切り、ヘイズさんもイギリスのオフィスに移ったのです。
香港からの移民
ヘイズ・チャンさん

香港の多くの金融プロもだが、大規模な頭脳流出が香港で起きている。
世界を代表する国際金融都市、香港を支えてきた人材の流出。
最後の香港総督を務めたパッテン氏は…
イギリス統治下 最後の香港総督
クリス・パッテン氏

多くの優秀な人材が去って行けば経済発展はより難しくなる。
言論の自由、経済運営の自由も失われ始めている。
自由や法の支配と経済成功の間にも密接な関係がある。