シリーズでお伝えしている「治る最前線!」。
患者が数百万人いるといわれているアトピー性皮膚炎に今年、10年ぶりに新薬が登場しました。
その実力に迫ります。
アトピー性皮膚炎
空気が乾燥するこの季節、皮膚の悩みを抱える人は多い。
唇がガサガサしやすい。
肌がつっぱる。かゆくなったりする。
肌の感想やかゆみはある病気の前触れの可能性が…
アトピー性皮膚炎です。
アトピー性皮膚炎とは体に激しいかゆみを伴う湿疹がくり返し現れる病気です。
千葉県に住む田口裕之さん(47歳)、20年前に突然アトピー性皮膚炎を発症しました。
背中を見せてもらうと赤い湿疹が広がっています。
仕事をしていてもかゆくて集中できない。
顔にも症状が出たので、それを見られるのが嫌だった。
外出できなくなった。そうなったのがショックだった。
国内のアトピー性皮膚炎の患者数は数百万人ともいわれています。
子どもの病気だと思われがちですが成人の患者も増えています。
京都大学の皮膚科、椛島健治教授は、
アトピー性皮膚炎じゃ命に関わる病気ではないが患者さんのQOL(生活の質)や見た目など社会的に影響を与える病気。
日常生活に大きな支障をきたす皮膚の病。
その治療の最前線を追った。
医療法人社団 東京慈光会 ひふのクリニック人形町
[blogcard url="https://atopy.com/"]
皮膚の病気で長期間悩んでいる患者さんは多い。
50代の鈴木浩二さん(仮名)、子どもの頃からアトピー性皮膚炎を患っています。
夜寝ている時にかいてしまうので睡眠が不足して非常に困る。
鈴木さんは2週間に1度、このクリニックで治療を受けています。
色が残っている。色素沈着。
アトピー性皮膚炎は乾燥で皮膚のバリア機能が低下することなどで起こります。
弱った皮膚から誇りやダニなどのアレルギー物質が入り込むと免疫細胞が活性化し、強いかゆみや炎症などを引き起こすのです。
過労やストレスなどが症状を悪化させることがあるといいます。
鈴木さんはステロイドという薬を使った治療を続けています。
ステロイドとはホルモンの一種で炎症や免疫を抑制する作用があり、かゆみにも効果があります。
このステロイドを使った治療は現在、アトピー性皮膚炎の標準的な治療ですが、およそ2割の患者さんには効果がないといいます。
京都大学医学部附属病院
[blogcard url="https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/"]
そうした中、今年、10年ぶりにアトピー性皮膚炎の新薬が登場しました。
50代の太田正子さん(仮名)、30年近くステロイドを使った治療を続けてきましたが、効果がなかったため新薬を使うことにしました。
その新薬がデュピルマブです。
この薬を2週間に1度、注射します。
アトピー性皮膚炎になると、免疫細胞からかゆみと炎症を引き起こすタンパク質が分泌されます。
新薬はこのタンパク質の活性を抑制するのです。
副作用はほとんどないといいます。
これは治療を受けた別の患者さんの画像。
1ヶ月後、皮膚の炎症が治まっています。
治療は保険が適応され3割負担でおよそ2万5,000円です。
一部の重症患者さんには治療の選択肢がなかった。
そういう患者さんに新しい希望の光が見える治療法ができた。
アトピー性皮膚炎の治療の歴史の中で本当に画期的なこと。
乾癬
アトピー性皮膚炎とともに患者が増加している皮膚の病気があります。
65歳の田村浩一さん、5年ほど前に乾癬といわれる病を発症しました。
乾癬とは皮膚が炎症を起こしウロコのように盛り上がる病気です。
患者さんはおよそ50万人いるといいます。
免疫細胞がストレスなどにより突然活性化し、皮膚を攻撃します。
すると傷ついた皮膚を修復しようと新しい皮膚がウロコのように次々と作られるのです。
発疹は頭皮に出てフケみたいにボロボロ皮がむける。
帽子を手放せなくなった。
東京逓信病院
[blogcard url="https://www.hospital.japanpost.jp/tokyo/"]
田村さんは週に1度、新しい治療を受けています。
治療に使うのはこの装置。
内部には紫外線を出すライトが42本並んでいる。
田村さん、治療のため下着姿で装置の中へ。
開始します。
治療では紫外線を2分ほど全身に照射します。
紫外線には免疫細胞の活動を抑制する効果があります。
活性化した免疫細胞に紫外線を当てることで皮膚への攻撃が止まり症状が改善するのです。
治療には効果が高く、副作用が少ない特殊な紫外線を用いています。
田村さんの治療が終了しました。
お疲れ様です。
ポカポカした感じで少し熱くなるが特別ひりひりすることはない。
これは治療を受けた別の患者さんの画像。
3ヵ月で皮膚の表面のかさぶたのようなものが消えています。
この治療は保険が適応され3割負担で1回およそ1,000円です。
東京逓信病院の皮膚科部長、江藤隆史医師は、
乾癬は日光浴で良くなる傾向がある。
この治療は皮膚の炎症に対して強く働き、副作用が少ないので最も用いられる。
日常生活にも影響する皮膚の病気。
新たな治療の登場で救われる患者さんも増えるはずです。