今回から始まる新コーナー、社会にイノベーションを生み出そうとするベンチャー企業に焦点を当てる【イノベンチャーズ列伝】。
イノベンチャーズはイノベーションとベンチャーを掛け合わせた言葉。
第1回は店舗など身近な現場を大きく変え始めているAI(人工知能)の専門家集団です。
株式会社ICI石井スポーツ
[blogcard url="http://www.ici-sports.com/"]
東京・立川市、登山グッズの店「ICI石井スポーツ立川店」にある異変が…
1年前より売上が3割増えたといいます。
その理由は売り場の大幅な変更。
来店しているお客様は、
初めて来た。大きくザ・ノース・フェイスの看板が見えて。
例えば若者に人気のブランド「ザ・ノース・フェイス」、売り場を拡大し商品を増やしました。すると若いお客様の購入が増えたのです。
この店、あるベンチャー企業の技術で「若いお客様」を意識する必要性に気付いたといいます。
川村尚弘経営企画室長は、
お客様は40代、50代が多いというのが当社が持っていた仮説だった。
青い部分が20代、30代の来店客数、オレンジの部分が40代以上の来店客数です。
1対1ぐらいで若者もいる。
データを集めたのは店内のあらゆる場所に設置されたカメラです。
右が撮影した現場で、左がお客様の動き。滞在時間やそのお客様の性別や年齢などをAI(人工知能)が解析。
すると商品ごとの特性が分かります。
例えばカジュアルな衣類は「初めてのお客様」を吸い寄せる効果が高い。
登山用ザックは立ち寄ったお客様の3割が購入する。「来たら買う」という人が多いのです。
そのザック売り場は店内のどこにあるかというと一番奥、AIの分析を基に配置を変えました。
「目的買い」の人、山に行くと決めている人はザックを買うと決めているので奥に置いても来てくれる。途中の商品や周りのものをより見てもらう。「ついで買い」するようなもの、たとえばこちらのポーチ。「立ち寄り率」は以前は約5%だったが今は約10%。「見えなかった数字が見えてきた」。
このAIシステム、すでにイオンやパルコなど大手小売業が導入しています。
株式会社ABEJA
[blogcard url="https://abejainc.com/ja/"]
AIシステムを開発したベンチャーが東京・港区に。
アベジャの岡田陽介社長(29歳)。
AIに可能性を感じ、2012年に起業しました。
人工知能は最初「赤ちゃん」みたい。
起業してから3年をかけてAIのシステムを実用化。
しかし、いざ販売するとなると、
最初の営業活動は非常に苦労した。
ニーズはどこにあるのか検討もつかないまま岡田社長はさまざまな業界に売り込みをかけました。
「これから産業が劇的に変わります。ぜひ一緒にやりましょう!」
しかし、大手企業はどこも取り合ってくれません。
「ここもダメか…どこかに必ず需要があるはずなのに…」
そんな折、
「小売りか…」
身近な小売りの店舗、ここにチャンスが転がっていました。
「これはアナログだな…」
小売りの店舗では年齢層や性別をレジで手打ち入力してお客様のデータを集めています。ただ、それはあくまで見た目の判断に過ぎません。
「うちの技術を使えばもっと簡単に正確にデータが取れるぞ…。」
どう見ても私は男性だが女性のボタンを押していることもあった。しっかりと正確なデータをとっていくことが重要。
その後、AIの導入先は小売業を中心に100社以上に。AIの現場への導入では先頭を走ります。
武蔵精密工業株式会社
[blogcard url="http://www.musashi.co.jp/"]
そして新たな展開も…
大手自動車メーカー向けにギアなどの部品を作っている武蔵精密工業。
ほとんどの工程を自動化しています。
その中でAIによって最近ようやく自動化できた工程があります。作ったギアの最終チェックです。
もし細かい傷があればこの機械で見つけ出します。
実は傷の見え方はひとつひとつ違っていて全てを機械に覚えさせるのは無理がありました。
だから、これまで熟練工が担ってきた傷のチェックを自動化するのは難しいとされてきました。
そこで導入したのがアベジャのAI画像分析。AIが自ら考え、数秒で傷があるか判断します。
武蔵精密工業の村田宗太プロジェクトリーダーは、
人間の五感は素晴らしいが機械に任せられるとより良くなる。
岡田陽介社長
「この技術を今後どう生かしたい?」
AIでほとんどの産業が革命的に変化する。この技術をいろいろな業界に適用していきたい。ほとんどの会社は「AI企業」になる。