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[WBS]岸田総理意欲示すも…原発稼働に山積する課題[一般社団法人日本原子力産業協会]

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経団連は7月22日に電力需給のひっ迫に対応するため休止中の原子力発電所の着実な再稼働を求める提言を新たに発表しました。政府も原発の再稼働を目指す方針を示しています。ただ国内の原発をめぐっては部品を供給する企業が次々と撤退するなど課題が山積しています。

岸田総理が意欲 原発再稼働へ!経団連は歓迎 住民は…

大手企業のトップが集まる経団連のフォーラムで講演した岸田総理。

岸田総理

電力の安定供給と脱炭素を考えると原子力の活用は極めて重要。
できる限り多くの原発、この冬で言えば最大9基の稼働。
火力発電の供給能力を追加的に確保する。こうしたことを経産大臣に話した。

電力不足が予想される冬までに現在稼働している原発とあわせ最大9基の稼働を目指すとあらためて強調しました。

経済界からは歓迎の声が…

三井不動産
菰田正信社長

政府が責任をもってやるということ。国民にしっかり説明していくこと。
非常に素晴らしい。

NEC
遠藤信博特別顧問

カーボンニュートラルという観点で原子力は非常に重要な領域なので非常に良い方向感を示した。

経団連も7月22日に休止中の原発の再稼働を求める提言案を取りまとめました。

しかし、専門家は再稼働には大きな課題があると指摘します。

国際環境経済研究所
竹内純子理事

原子力発電所の事業は立地地域の理解があって成り立つ。
慎重にやらなければいけない判断になっている。

今回、政府が稼働を目指すとした原発はもともと運転の再開が見込まれていた福井県の美浜原発や佐賀県の玄海原発など全て西日本にある原発。電力不足が不安視される東日本の原発は地元の同意を得られていないことなどから再稼働のめどが立っていないのです。

その一つ、茨城県東海村にある東海第二原発。かつて首都圏に電力を供給していましたが現在は停止しています。再稼働には地元の同意を得ることが条件になっていますが、住民に話を聞いてみると…

東海村に住む
合澤多美子さん(68歳)

再稼働には安全性、住民避難の計画、それがないと安心して住めない。

住民からは再稼働に慎重な声もあり、自治体としても稼働を認めるかどうかまだ態度を明確に示していません。

東海村
山田修村長

原発の安全性は震災後の新規制基準になって中身を見ると向上しているが福島第一原発事故の映像が記憶にまだ鮮明に残っている中でなかなかそこ(再稼働)は理解しづらい。

原発再稼働の"壁"?「サプライチェーン」が弱体化

一方、再稼働にはさらなる課題も。7月22日に原子力の関連企業からなる団体「日本原子力産業協会」からは…

日本原子力産業協会
新井史朗理事長

いま原子力のサプライチェーンが困窮状態にある。

日本原子力産業協会は原発の想起再稼働のほか、新たな増設や建て替えを速やかに行うよう国に求めたのです。

原発の稼働停止が長引く中、原子力関連企業の多くが事業から撤退や縮小をしているといいます。さらに協会には日本の原子力をめぐる技術力の継承や組織の縮小を危惧する声が多く寄せられているといいます。

日本原子力産業協会
新井史朗理事長

原発の新設までの空白期間が長くなればそれを支える技術の回復に時間を要する。

裾野が広い原子力産業。大手プラントメーカーを筆頭に数千もの部品メーカーなどが底を支えているといわれています。

その部品メーカーでは今後の供給が滞りかねない深刻な問題が起き始めています。

50年以上、原発に使う装置を製造している日本ギア工業。

日本ギア工業
鶴見肇常務執行役員

原子力発電所にこれから納入するバルブアクチュエータ
試験をしている最中。

作っているのはバルブアクチュエータという装置。エネルギーを作るのに使用する蒸気や水が配管を通るときに弁の開け閉めをするもので一つの原子力発電所におよそ500個は取り付けられているといいます。

国内の原発で使用されるバルブアクチュエータの9割以上はこの会社が製造。しかし…

日本ギア工業
鶴見肇常務執行役員

モーターを作るメーカーが製造から撤退する。

装置に欠かせない特殊なモーターを作る下請け企業が売上の減少などを理由に3年前、原発事業からの撤退を決めたのです。

日本ギア工業
鶴見肇常務執行役員

これは大変なことだと。
モーター製造を継続できないとわれわれも撤退せざるを得ない。

製造を依頼できるほかのメーカーを急いで探し、なんとか見つけましたが原発に使う装置は簡単に仕様の変更はできません。もとの会社から取り寄せた1,000枚以上の大量の図面をもとに技術の引き継ぎをしている最中だといいます。

さらにこの会社も原発関連の事業が縮小したことで売り上げは2割減ったまま。下請け企業などの撤退が今後増えることを懸念しています。

日本ギア工業
寺田治夫社長

われわれがいないと再稼働できない。
プライドと責任を感じているのでなんとか継続していかなくては。
営利企業だから利益をのぞまないとやっていけない。

原発メーカーの雄 三菱重工!海外ニーズ「次世代原発」

こうした中、原発のプラントメーカーを代表する三菱重工では国内の原発をめぐるサプライチェーンが弱まる中、海外からのニーズが高まっている次世代原発の開発に注力しているといいます。

三菱重工
加藤顕彦常務執行役員

2030年代半ばの実用化を目標に高い経済性に加えて革新技術を採用した世界最高水準の安全性を実現する次世代原発軽水炉の開発を進めている。
海外輸出を行う上でも日本のサプライチェーンの基盤の維持が極めて大切。

ただ新しい動きもあるといいます。

三菱重工
加藤顕彦常務執行役員

昨年ごろから原子力に応募してくる学生の数が増えてきている。
ロシアのウクライナ侵攻を踏まえ、エネルギーのセキュリティーの意味でも原子力を活用すべきという声が高まっている。
若い人は意外と「原子力をしっかりやらないといけない」と応募している。

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