2017年12月に出版されたファッション雑誌。
出版不況といわれる中、発売からわずか3日で増刷が決定し、累計発行部数も5万部と異例の好調さを見せています。
そして、この雑誌は60代をターゲットとして明確に打ち出しています。
実は今の60歳前後というのは、これまでのシニアとは全く違った価値観を持っている世代ということで、その可能性を取材していきました。
株式会社宝島社
3月2日、都内のスタジオでは次の春夏号に向けた撮影が進んでいました。
モデルを務める松本洋子さんは69歳。還暦を機にモデルの仕事を始めました。
なぜ「60歳過ぎたおばあさん」のファッションが地味なのかと怒っていた。昔の写真と同じ格好をしても古く見えない。本を抱えて、頭だけ帽子をかぶったら女子大生になれる。
宝島社が12月に出版した「素敵なあの人の大人服」。発売後、わずか3日で増刷が決定し、これまでに5万部を突破しました。
通常、こうした雑誌は発行部数が1万部から2万部程度なので異例の好調ぶりです。
その理由を宝島社ムック局第一編集部の神下敬子さんは、
60代という言葉を入れて、「大人の装いを楽しみましょう」とコピーに入れました。
いまある雑誌で年配向けのものは健康メインのおばさんイメージ。ちょうどそのターゲットにアピールする雑誌がなかった。
雑誌の中には「アラウンド60は、いままででいちばん、おしゃれを楽しめる世代です」の文字が、
表紙モデルを務めた結城アンナさんはグレーヘアにカジュアルシューズの装い。今の時代の60歳を意識して自然体と心地の良さを重視しました。
ミセスのフロアに行くと「ザ・おばさん」みたいな服が多い。自分よりもマイナス20歳くらいの方が買い物する店に行って「自分でも着れるものを買う」という意見があった。
Madams Favorite(マダムズフェイヴァリット)
「欲しいものがない」、その思いから行動を起こした人たちがいます。
迎えてくれたのは3人の女性、今年還暦を迎える及川裕美子さん(59歳)と前田万里子さん(59歳)、そして一番若手の小川永子さん(55歳)です。
2013年にセレクトショップ「マダムズフェイヴァリット」を立ち上げ、運営をしています。
セレクトした商品はネットだけでなく買い付けた人が品物を持ち寄る「マルシェ」の形式で販売しています。
友達が友達を誘ってきて大きくなった。
最初は30人くらいだった。今は2日間で300人、約10倍。
自分たちも驚いている。
2017年11月に開催した8回目のマルシェは500万円以上を売るまで拡大しました。
「どんなものを、オシャレなモノが並んでいますが?」
これはタイで買い付けてきた。
前田さんと小川さんは元キャビンアテンダント、及川さんは広告会社のアートディレクターでした。そのネットワークを生かして国内だけでなく海外からも商品を買い付けています。
さらに、
クロコダイルの財布。欲しいサイズがなかなかないので、何でも入る大きめの財布でデザインして作った。
パスポートや携帯も入る大きさで即完売。
サイズ感や中の生地にもこだわったというオリジナルバッグもすぐに完売しました。
「百貨店には欲しいものはないのですか?」
あまりワクワクするものがない。
だったら作っちゃおうって。
上質で品があってきらきら。
今時の60歳前後の世代は上質なものを見てきた世代でもあるといいます。
「自分のセンスをどれくらい信じている?」
100%信じてます。
「シニアと言われることに対してはどう思う?」
自分たちの親の世代のことのように思う。自分たちのこととは自覚がない。
ライコランド TOKYO BAY 東雲店
一方、こんなところでも今時の60歳前後の消費が広がっていました。
バイク用品専門店ライコランドではシニア世代の姿が目立ちます。
この店舗の平日客数は1日約400人。そのうち4割はシニア世代だといいます。
買い物をしていた男性、
ここがとがっていると風圧で首が後ろにもっていかれない。若い時は平気だったが、年をとって乗るとあちこち傷んで。少しでも楽なものを買いたくなる。これは23万9,000円。
なんと20万円以上のヘルメット。家族には内緒で購入したといいますが、
インターネットで安いものを買うと「安いものは危ないからもっといいものにしなさい」「安い買い物はお金の無駄」という感覚でいる。うちの奥さんは。
ここにこの世代の買い方の特徴があるといいます。
下垣内泰行副店長に売れ筋の商品を見せてもらうと、
長距離ツーリングに適したジャケット。
14万円と値段もなかなかですが、
だいたい指名買い。サイズが合えばそのまま買っていく。
ファッション性はもちろんのこと、家族の心配を減らすために高くても高品質で安全なものを選ぶといいます。
昔、バイク乗っていたが何十年ぶりに新しく買った。初めてバイクの免許を取ったお客様が多くいる。
株式会社博報堂
専門家は今時の60歳の世代感をこう分析します。
博報堂の新しい大人文化研究所、阪本節郎統括プロデューサーは、
自分たちが文化を作ってきた自負がある。ロックもポップスもミニスカートもジーンズもそう、見合い婚から恋愛婚へ転換したのも大きな違い。世間では「シニア」と言われるが私達は全然違うという気分がある。
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