カルロス・ゴーン前会長の事件後、揺れ続けてきた日産自動車でこれまで封印されてきた実態が明らかになりました。
WBSが入手した日産の取締役会に関する内部文書。この文書はある1人の取締役から取締役全員に向けて送られたものです。
その中にある記述を日本語訳してみました。
ゴーン氏を含む役員の不正行為に関与した恐れのある日産の従業員80人のリスト。
そして、このリストを開示するように求めたいます。
この文書の送り主は当時ルノーのCEOで日産の取締役だったティエリー・ボロレ氏です。この文書を送った3日後にボロレ氏はCEOを解任されました。
一体、日産の内部で何が起きていたのでしょうか?
日産自動車株式会社
[blogcard url="https://www.nissan.co.jp/"]
日産の取締役会に送られた内部文書。
宛先は10人の日産の取締役です。
日付は2019年10月8日、日産の取締役会が開かれた日です。
取締役会メンバーの皆様へ。
私はこの手紙が本日の会議の議事録に追加されることを正式に要請いたします。
ティエリー・ボロレ。
ボロレ氏とはゴーン前会長の逮捕後、ルノーのCEOを引き継いだ人物。自動車に詳しい実務家で日本での駐在経験もあります。
そのボロレ氏が日産に突きつけた告発文書の中身とは…
不正80人リスト
内部監査室のムレイ氏がゴーン氏を含む役員の不正行為に関与した恐れのある日産の従業員80人のリストを作成し懲戒処分の可能性を検討すると確約した。
ボロレ氏はウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道を端緒に日産内部に不正行為に関与した恐れのある80人分のリストが存在していることを知ったといいます。
そこには現役幹部の名前もあり、ボロレ氏は取締役会で尋ねた。
どの従業員と役員が80人のリストに載っているのか?
会議では明確な回答はなかったといいます。
役員が会計不正の過去
日産の財務担当の専務執行役員A氏。
彼をめぐり驚くべき過去が文書で指摘されています。
A氏が前の雇用先で会計不正に関与し、SEC(米証券取引委員会)から制裁を受けていた。
文書ではA氏が2006年、当時勤めていた自動車部品メーカーで会計不正に関与し、およそ5万ドルの制裁金を支払ったとあります。
実際にSECに確認してみました。
すると…確かにありました。
A氏は5万5,000ドルのペナルティーの支払いに同意した。
ボロレ氏は会計不正に関与した人物が財務トップの地位にいることを問題視しました。
不透明な社内調査
日産自動車の西川廣人CEO(当時)、
社内調査が終わり大きな意味で次の段階に進むというところでも大きなステップだと思っている。
日産はゴーン被告の不正をめぐる一連の社内調査を今年の9月に終了しました。
ボロレ氏はその社内調査に関わるある人物の存在に強い疑問を持っていました。
それがハリ・ナダ専務執行役員。
ナダ氏はゴーン被告に絡む不正に関わっていたとされるが、ゴーン被告の立件に協力することで自身の逮捕を免れた、いわゆる司法取引に応じたとされる人物。
そのナダ氏がこの文書が送られた翌日まで法務担当の専務執行役員を務め社内の不正調査を率いる立場でした。
なぜナダ氏が日産の今の地位にいるのか?
内部調査の信頼性も侵害されている。
一連の主張を聞いたある取締役はこう告げたといいます。
きょうは重要な人事の議題がありますからこの辺で…
議題は日産の新社長人事へと移りました。
そこで選出されたのが、内田誠新CEO、
大切にしている言葉は尊重、透明性、信頼です。
異論や反論が許される会社風土を作っていきたい。
ボロレ氏は文書を送った3日後にルノーのCEO職を電撃解任されました。
このボロレ氏の解任の理由についてルノーのスナール会長は「新しい風を入れるため」と説明しています。
番組ではボロレ氏の文書について日産に事実関係を問い合わせました。
日産の回答です。
当社はボロレ氏から出された指摘や疑問に関して、取締役会においてしっかり議論し、問題ないことを確認の上、ボロレ氏のレターに対し、10月中に回答しております。ボロレ氏の疑念に関しては多くの部分が不正確な情報と憶測に基づいているものであると判断しています。
番組ではどのような回答をしたかと尋ねました。
その結果、「お答えできません」ということです。
また過去に会計不正に関与していた専務執行役員A氏の採用については、
社内規定に照らし合わせ、適切な手続きを経ており、全く問題は無いと考えております。
と回答しています。