日本の原発輸出が頓挫する一方で、世界では次世代の電力源として洋上風力発電の発電量がこの10年で10倍以上に増えるなど急速に拡大しています。
WBSは今回、日本の企業が関わる世界最大の風車が回る海域に日本のメディアとして初めて入りました。そこで見えてきた次世代エネルギーの未来とはどのようなものなのでしょうか。
三菱商事株式会社
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大西洋に面した広い浜辺を持つベルギーの港町、オーステンデ。
港に停泊する船の上には巨大な象牙のような物が載っています。
長さは80メートルほど。実はこれ、風力発電のための風車の羽です。
洋上風力発電
オーステンデは世界屈指の洋上風力発電の前線基地。
日本の総合商社なども相次ぎ発電事業に参入しています。船に乗り込んだのは三菱商事の電力ビジネスを統括する朝倉康之さん。風力発電事業の進み具合を確認するため日本からやって来ました。
すごい風。
オーステンデの港を出発して1時間ほど。
豊島晋作記者、
沖合に出て風も非常に強くなってきました。あちらに巨大な風車が並んでいます。
この海域は数百基の風車がひしめく、いわゆる風力発電銀座。
朝倉さんが見つめるのは5日前に全ての設置が終わったばかりのひときわ大きな風車です。
三菱商事の担当者、
高さは200メートル。羽の直径が164メートルです。
水面からの高さは200メートルを越える世界最大の風車です。
高さ243メートルの東京都庁と比べてもこの高さ。
発電容量も従来の風車を上回る8.4メガワットと世界最大です。
この海域に設置した44基でベルギー国内のおよそ40万世帯に電力を供給できるといいます。
三菱商事の新エネルギー・電力本部、強口雅継次長は、
洋上だと風も強いので陸上よりも発電できる。
陸上では8メガワットの風車はほぼない。せいぜい1メガや2メガ。
船を風車の真下につけるというので取材班も命綱を付けて船首へと向かいます。
船が風車の付け根に接岸。
いま風車の真下に来ました。見上げるといかに巨大化がわかります。羽が頭に当たりそうですね。
羽は1本35トンありますが、海の強い風を受け勢いよく回っています。
朝倉さん、事業の進捗に満足した様子。
これがエネルギーを供給するプラントだと非常に感じた。
こちらは発電した大量の電気をまとめて陸に送る海上の変電所。
高さは44メートルと15階建てのビルに相当する高さです。
ヨーロッパでは洋上風力発電はもはや社会を支える主電源となっています。
ここにチャンスがあると見た三菱商事は現地の電力会社などと合弁会社を設立。ヨーロッパ各地で発電事業を拡大しています。
すでにオランダ沖では43基の洋上風車を使い15万世帯に電力を供給。
今後、イギリス沖などでも合計177基を設置し、およそ180万世帯に電力を届ける計画です。
今回、三菱商事が組んだ現地ベルギーの合弁会社のトップは、
洋上風力発電は設置コストが下がり、最近は急激に増えている。
われわれの発電容量8.4メガワットの風車は数年前に比べ能力が300%も高い。
日本市場
ただ今回、現場を見に来た朝倉さんは早くも別の市場を見据えていました。
日本では2030年までに原発10基分の洋上風力が導入される見方。
ぜひ日本国内でも欧州で蓄積した知見を活用してビジネスを拡大したい。
ヨーロッパで得た洋上風車の建設や管理などのノウハウを日本に持ち込もうというのです。
日本では4月から洋上風力発電を促進するための新法が施行されました。この法律で海上に風車が設置しやすくなり、今後市場の拡大が期待されているのです。
巨大な風車が日本の海で回る日はそう遠くないのかもしれません。