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[WBS]抗うつ剤がコロナに有効性!独占取材 研究の現場[九州大学]

2021年3月16日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

新型コロナ感染症の治療薬で新たな動きです。

抗うつ剤の治療薬「クロミプラミン」にコロナウイルスが体内に侵入するのを阻害する効果があることが九州大学などの研究で明らかになりました。

3月17日に記者会見を開き、正式に発表する予定です。

九州大学

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今回の発見をしたのは九州大学の研究グループなどです。

実験で新型コロナウイルスへの有効性が見つかったのはうつ病の治療薬「クロミプラミン」、「アナフラニール」という商品名で広く使われています。

研究グループを率いるのは九州大学の西田基宏教授です。

西田教授はもともと心臓の研究が専門で様々な病気の既存薬の中に心不全の治療にも用途を拡大できる薬はないか探していました。

新型コロナで心臓病の持病がある人が重症化しやすいことから心不全に効果のある既存薬ならコロナ治療にも有効かもしれないと考えたのが今回の研究のきっかけでした。

本当にウイルスの侵入を止められるか確認するために一つの細胞を可視化する共焦点レーザー顕微鏡で評価している。

様々な病気に使われているおよそ1,200種類の既存薬を検証し、心不全の抑制に非常に強い効果を持つ13の薬を抽出。

連日、この顕微鏡で観察と検証を続けた結果、はっきりとウイルスの侵入を防ぐ効果が認められたのがクロミプラミンでした。

九州大学の薬学研究員、加藤百合助教、

最初は複数の化合物薬の中から一つ選ぶ作業も大変だったが、実際に目で見て誰でも分かるように効くというのはすごいインパクト。感動。

通常、ウイルスが人間の体の細胞に接触するとウイルスの表面にあるSタンパク質と呼ばれる突起の部分が体の細胞のACE2と呼ばれる受容体と結合。

ACE2とともにコロナウイルスが細胞内に侵入します。

しかし、クロミプラミンを投与するとSタンパク質とACE2が結合した後、細胞内への侵入が阻害されることが分かりました。

実際に顕微鏡でその様子を捉えた映像です。

緑色に光っているのが細胞の表面にあるACE2です。

まずはクロミプラミンを投与しない場合。Sタンパク質に触れると細胞内に取り込まれ、緑色の部分が崩れていくのが分かります。つまりウイルスが細胞内に侵入しているのと同じ状態です。

一方、クロミプラミンを投与したのがこちら。Sタンパク質に触れても細胞表面の緑入りの形は崩れず、細胞内への侵入が起きていないのが分かります。

既承認の新型コロナ治療薬と作用機序が異なるとことが強み。

作用の異なる薬を併用するのが理想的な戦略。

共同で研究にあたる国立医薬品食品衛生研究所の検証によりますと、コロナ治療薬として承認されているレムデシビルを単独で使用した場合、細胞のウイルス感染率は一定の低下にとどまりますが、クロミプラミンを併用するとゼロに近い水準にまで下がることが分かりました。

さらに変異ウイルスにも効果が期待できるといいます。

変異体が見つかり、感染力が強いものが出てきている。

今回見つけたクロミプラミンはウイルスの変異に関係なく効く可能性がある。

実際に病院で薬の投与方針の策定などに携わる薬剤部長は…

九州大学病院の家入一郎薬剤部長、

この薬は古い薬なので安全性に関して検証済みなのでほとんど問題がないと思う。

予防と治療の側面があるので目的に応じた臨床研究や治験が必要。

西田教授たちの研究グループは今後、動物実験で安全性や有効性をさらに検証し、迅速な実用化を目指すということです。

新型コロナ治療薬としての承認を目指して治験が進められている既存薬は数多くあります。

ノーベル賞を受賞した大村智さんらが開発したイベルメクチンはアフリカなどでの寄生虫による感染症の特効薬。

細胞実験でコロナウイルスの増殖を抑える効果が報告されています。

東京都の医師会は使用を提言しています。

東京都医師会の尾崎治夫会長、

イベルメクチンは重症化予防が期待できる。データも海外ではたくさん出ている。

こういう薬を使うことができないか。

他にもリウマチの治療薬「アクテムラ」や膵炎の治療薬「フオイパン」など効果が期待されていますが、承認に至っているものはまだありません。

既存薬の活用に専門家は…

日経メディカルの加藤勇治副編集長、

世界ではもっとたくさんの薬が転用も含めて研究されている。

その中から必ずいいものが出てくる。

ただ実験で得られた効果が治験でも同様に得られるかどうかが課題だといいます。

さらに既存薬は新薬に比べて薬価が安いため治験に踏み切らないケースも少なくないといいます。

何百億円をかけて臨床試験をして新型コロナへの適応を取得しても1錠10円20円で売っていた薬剤が1,000円とか1万円になるかというと、今はその仕組みはないのでリターンがどうしても期待できない。

企業としてはどうしても二の足を踏んでしまう。

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