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[WBS] 「所有者不明の土地」をどうする!?登記されずに相続関係者600人!

2019年2月28日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

見た目では気付かない意外な問題についてです。

およそ410万ヘクタール。

実は日本全国にある所有者が不明な面積で九州とほぼ同じ面積ということです。

道路を建設する際などにこうした土地があると買収の許可を得るため所有者を探す必要があるため余計なコストや手間がかかります。

特に地方の自治体ではこれがインフラ事業の足枷になることが少なくありません。

こうした問題を解決するため今の国会である法案が審議されるのですが、果たして解決の一手になるのでしょうか?

釜石市

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岩手県釜石市。

今年、ラグビーワールドカップが開かれ、復興に向け期待感が高まるこの町もある問題に悩まされていました。

政治部の中村寛人記者、

私はいま建設が進んでいる釜石市の防潮堤の上にいますが、実は私が立っているこの場所、元々は所有者が分からない土地だったということです。

震災による津波で堤防は決壊。

新たな防潮堤建設に携わる県の職員、近藤民哉さんは所有者不明土地が見つかったときの苦い経験を口にしました。

この片岸海岸については10件のうち24件が共有地などの懸案事項。

この土地を解決しなければ防潮堤の計画はできない。

自治体が公共事業などで土地を買い取るためには原則、その所有者全員の同意をとらなければなりません。

しかし、所有者の連絡先が分からないとなれば事業はストップ。

特に被災地にとっては復興への足枷となってしまいます。

いまだ建設が終わっていない防潮堤について町の人は、

地震があるたびに津波ばっかり気にして。

津波が来ないことを祈るだけ。

防潮堤が完成するのを待つしかない。

手伝うわけにもいかないし。

所有者不明土地

震災から間もなく8年、なぜここまで時間がかかってしまったのか…

ちょうど水門位置で斜面のところがあるが、そこで所有者不明土地が見つかった。

戸籍から見ると明治の年代だったと思われる。

100年以上前の明治時代を最後に所有者が分からなくなった土地とはどんな土地なのか?

その土地の所有者の情報が記載されている資料を見せてもらうと、

通常、所有者の住所氏名が記載されているが今回はその欄がない。

代表者ほか40人(計41人)、相続人を調べて約600人。

こちらは岩手県がおよそ2年がかりで調べた所有者41人それぞれの相続の系統を表した図。

元々41人の共有地だった土地も100年以上の時を経て関係者は600人を超えていました。

1、2、3、4、5代になっている。

ネズミ算式に増えていく。

県は一人一人に対し所有権の確認ができる書類の提出を求めましたが数百人と連絡が取れず、最終的には土地を強制的に買い上げるしか方法がなかったといいます。

これだけ多くの件数があるのは変則型登記の特徴。

変則型登記

変則型登記とはこうした所有者の名前や住所がきちんと書かれていない不動産登記。

こうした変則型登記など所有者不明土地問題による経済的損失は累計で2040年までにおよそ6兆円に上るとされます。

この問題に詳しい弁護士はさらなる問題点を指摘しました。

のぞみ総合法律事務所の野村裕弁護士は、

その土地が一つ使えないという場合には周りの土地の利用も阻害することになる。

企業や民間の利用の場合にはコストをかけられないということで、その土地はもう死んだ土地、使えない土地になってしまう。

野村弁護士によると自治体や企業が開発を進める際にこうした変則型登記の土地が見つかるとその土地での開発を断念するケースも数多くあるといいます。

さらに、

現在の法律ではストレートに解決する方法はない。

いろいろな工夫と多大な努力、調査に手間をかけて解決しているものもある。

こうした中、この変則型登記を減らすための法案が先週、国会に提出されました。

旗振り役は山下法務大臣です。

変則型登記は所有者不明の土地の中でも最も所有者の捜索が困難な土地として知られている。

今般こういった問題意識の中で解消のための法案提出に至った。

法案では自治体の負担を減らすため土地の所有者を調査する能力が高い法務局の登記官に実地調査の権限を与えるなどして所有者特定への時間短縮を目指します。

さらに所有者が特定できなくても裁判所の手続きの後、土地の売却を可能とすることなども盛り込まれました。

変則型登記でも売買や適正な利用が図られる大きなステップだろう。

日本全国に増え続ける名無しの土地の解消につながるのか、議論の行方に注目です。

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