地域で奮闘する企業を取り上げる「輝く!ニッポンのキラ星」は兵庫県新温泉町からです。
インスタ映えすると若い世代からの支持を受け、世界的に再びブームを迎えた音楽のレコード。そのレコードの針を作り続けてきた企業がいま注目を集めています。
日本精機宝石工業株式会社
[blogcard url="https://www.jico.co.jp/"]
東京・新宿にあるHMVのレコードショップ「HMV record shop 新宿ALTA」。
店内のほとんどの商品がアナログレコード。最新のJ-POP、そして高額なレコードプレーヤーも置いています。
実はいま世界的なレコードブームで、若い人たちからジャケットがインスタ映えすると支持を受けているのです。
この売り場の一角にレコード針を専門に扱うコーナーが。
HMV record shop 新宿ALTAの佐野敦史店長、
JICO社のレコード針。
価格は1本5,000円ほど。ほかのメーカーに比べ本来の音が楽しめると音質にこだわるユーザーが買っていくといいます。
国内外30以上のメーカーに対応しているのも人気の一つ。
製造をやめてしまったメーカーの交換針を幅広く作っている。
兵庫県新温泉町。神戸市から北へ100キロ以上離れた温泉街の一角にレコード針を製造する企業「JICO」が。
1873年に創業したJOCO、従業員57人、売上高は5億5,000万円に上ります。
手掛けるレコード針はおよそ2,200種類。月に6,000本を全て手作業で製造しています。
レコードの音をきれいに再現するために重要なのは針先のダイヤモンドチップと振動を伝えるカンチレバーという部品。
大きさは0.6ミリと極小のダイヤモンドチップは形が少しでも変わると音質に影響するため本物のダイヤモンドが使われています。
そしてカンチレバーにチップを埋め込むため、専用の機械にセット。ピンセットに付けたダイヤモンドチップを落とし、カンチレバーの先にはめます。
これでチップの取り付けが終わりました。
針先からの振動をカンチレバーにいかに正確に伝えるかが、音の善し悪しに影響してくるため一つ一つの組み立ての精度が重要となってくるのです。
JICOの仲川幸宏社長、
ほとんどの製品を作る治工具。自社で設計をして社内で作り上げている。
ほとんどの部品を社内で加工、そういうメーカーはこの業界では珍しい。
お客様からの要望に1本1本手作業で丁寧に対応してきた結果、世界中100ヵ国から注文が来る有名ブランドに。
JICOがあるこの地域はもともと縫い針の一大生産地でした。
JICOも創業時は着物を縫うための針を作っていました。
その後、縫製業は衰退。1960年代のレコードの広まりに合わせ、レコード針の製造を始めたのですが…
80年代にCDが台頭し、レコード針の需要が激減。経営難に陥り、社員も減少しました。
商売にはとても採算も合わない。
やめた方がいいのではないかと当時は検討した。
一人でも顧客がいる限り作り続けよう。
会社の経営を維持するため針の加工技術を転用し、歯科用のダイヤモンド工具なども製造。他社が次々とレコード針から撤退していく中で生産を続けてきました。
そしてレコードブームが到来し、いま新たな高級ブランドで攻めの経営。
それがこちらカンチレバーの素材に金属ではなく、黒柿の木を使ったのです。
手掛けたのは半世紀に渡りレコード針の製造を行ってきた森田耕太郎さん。
年輪にあたる部分が硬い。
その硬さがあればカンチレバーとしてできるのではないかと挑戦した。
数十種類の木材で試作を行い、硬い黒柿の木にたどり着きました。
その名も「MORITA」。価格は1本2万円と高価ですが、音が軟らかいとファンも多く、月に50本ほどの注文が入ります。
もともと8~9割は海外のお客様。
各地のニーズに合ったものをどんどん世界に出していきたい。