「CSR」、企業の社会的責任という言葉をよく耳にしますが、最近は「CSV」という言葉も注目されています。
「CSV」は共有価値の創造という意味で企業が本業を通じて社会問題を解決することで、企業の発展と社会貢献の両方を目指すことを示しています。
こうした中、食品卸の大手が本業の食を通じて地域を活性化しようという取り組みが始まりました。
吉田のうどん
山梨県富士吉田市。街のいたるところで目にするのが「うどん」の文字。人口約5万人の街に60件以上のうどん店が点在しています。
この地域で食べられている「吉田のうどん」は山梨で有名なほうとうとは全くの別物。
硬くてコシの強い麺と醤油と味噌を合わせた濃いつゆが特徴です。
甲府の方から来ました。
「甲府では食べられない?」
あんまり。何軒かはあるけど・・・。こっちの方がおいしい。
地元で長年愛されている「吉田のうどん」。市販のつゆはほとんどなく、地元以外での知名度は高くありませんでした。
しかし今年、「吉田のうどん」を全国に広めるかもしれない新商品が登場しました。
お湯で薄めるだけで調理できる濃縮だし、テンヨ武田の「吉田のうどんだしMAX」。
伊藤忠食品株式会社
この商品の開発を支援したのが食品卸大手の伊藤忠食品です。
新商品はあるイベントをきっかけに誕生したといいます。
伊藤忠食品の経営戦略部、福万由希子さん、
年1回、商業高校フードグランプリを開催している。商品開発に必要な知識を学べるように当社もサポートしている。
商業高校フードグランプリ
伊藤忠食品が5年前から開催している商業高校フードグランプリ。
商業高校の科目に商品開発が採用されたことを受けて本業を生かした教育支援としてスタートしました。
地元の食材から名産品を生み出して地域の経済に貢献することも目的です。
山梨県立ひばりが丘高等学校
うどんだしでフードグランプリに参加したのが山梨県立ひばりが丘高校のうどん部です。
うどん部部長の中野吏希矢さん(高校3年生)は、
こちらがうどん部で作っている吉田のうどん専門フリーペーパー「うどんなび」。今回は6万5,000部発行させてもらった。
吉田のうどんを広める活動をしてきたうどん部。伊藤忠食品の仲介で地元メーカー「テンヨ武田」とうどんだしを共同で開発しました。
株式会社セルバ
富士吉田市内などに11店舗を展開する地元のスーパー「セルバ」。
ここに法被を着たうどん部のメンバーの姿がありました。
ひばりが丘高校うどん部が開発した新商品うどんのつゆの試食を行っています。
簡単に作れるものになっています。
良かったら食べていってください。
お客様の反応は、
おいしい。みんなで考えたの?
ご協力いただいている方と何度も試作を重ねて。
ネーミング
その夜、高校を訪ねたのは伊藤忠食品の福万さんです。
順調に進んだように見える商品開発ですが生徒と意見が合わない部分もあったといいます。
試作品のパッケージではうどん部はインパクトの狙ったネーミング「俺の汁」を提案していましたが、
商品名を変えたほうがいいんじゃないかという意見が多かった。
もう少し「吉田のうどんのだし」というのが分かったほうがいいとアドバイスした。
堺泉酒造有限会社
地域の食を生かす取り組みは大阪でも。
堺泉酒造は酒造りの伝統が途絶えていた堺市で44年ぶりに誕生した酒蔵です。
堺泉酒造の西條裕三社長、地酒の販売を担う伊藤忠食品からある提案を受けました。
いま甘酒が非常に売れている。甘酒と何かを合わせたものができたらと話したときに伊藤忠食品から「これやろう」という話が出てきた。
小さな酒蔵の経営を安定させるため甘酒を使った新商品を開発しようというのです。
出来上がったのが甘酒を使ったノンオイルドレッシング「べっぴんさん 甘酒ノンオイルドレッシング」。
なぜこんなにうまくできるのかなというくらいにびっくりしている。
製造は地元の醤油メーカー「大醤」が担当。地域一丸となって新商品を生み出しました。
堺市立堺高等学校
地元の堺市立堺高校、ここに伊藤忠食品の営業マンや全国展開する外食チェーンの担当者が集まりました。
そこへ運ばれてきたのは、
こちらのから揚げは下味に甘酒のドレッシングを和えたものです。
商業研究会の生徒たちが試作したドレッシングを使った料理です。
伊藤忠食品の西日本営業本部、松下一郎さんは、
麹の感じが出ている。香りが立っていて
実は甘酒を使ったドレッシングというアイデアを出したのは堺高校の生徒たちだったのです。
さらに若者ならではの常識にとらわれない食べ方も考案していました。
こちらが卵かけごはん。
卵かけごはんにドレッシング。意外な組み合わせに思えますが、
合いますね、めちゃくちゃ合いますね。これは意外、おいしい。
外食チェーンの担当者も甘酒ドレッシングの可能性を高く評価しました。
ポムフードの山際貴士さんは、
当社のターゲットも女性で、このドレッシングも女性がターゲット。これは是非、私の意見ですがコラボさせていただきたい。
髙垣晴雄社長
伊藤忠食品は地域の食を支援する取り組みを本業の発展にもつなげたいといいます。
髙垣晴雄社長は、
いい商品づくりをして我々も強力しながら、それを流通に乗せていく。社会との共有価値を創るSCVの活動、社会貢献のCSR活動、これを拡大しながら良い社会になっていきたい。
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