カンブリア宮殿 ビジネス関連

[カンブリア宮殿] 本当の価値で客を集めろ!赤字鉄道の感動再生術(2)

2016年4月24日

本当の価値で客を集めろ!赤字鉄道の感動再生術

いすみ鉄道株式会社

[blogcard url="http://www.isumirail.co.jp/"]

週末は観光客で大賑わいとなるいすみ鉄道株式会社。

しかし平日の日中の社内はお客様は少ししか利用していません。
1両に乗っているのは数人だけ。

地域の足としての収支は今でも赤字です。

しかし利用されるお客様の中にはいすみ鉄道株式会社が無くなると困る人もいます。

病院に行く、歯医者に整形外科。ずいぶん列車のお世話になっている。ありがたい。

お年寄りなどの交通弱者にとっていすみ鉄道株式会社は欠かすことのできない移動手段です。

鳥塚亮社長の取り組みは地域の足を守る取り組みでもあります。

人口が減っていく地方の厳しい現実。その鉄道の厳しい現実。

いすみ鉄道株式会社も七転八倒しながら地域の足を守っています。

いすみ鉄道応援団

国吉駅の脇に広がる広場「風そよぐひろば」では休憩用のテーブル作りが行われていました。

春になればこの広場には大勢の観光客が訪れます。その時にお弁当を広げられるテーブルです。

制作している人たちはいすみ鉄道応援団

いすみ鉄道応援団は地域住民と鉄道ファンなど130人で活動しているボランティアの団体です。

鳥塚亮社長にとっていすみ鉄道応援団は頼りになる仲間です。
気兼ねのない付き合いをしています。

いすみ鉄道応援団のメンバーはサラリーマンや大工さん、旅館の主人など様々、全員がそれぞれの特技を生かしていすみ鉄道株式会社のためになることをしています。

掛須保之団長は

鳥塚亮社長がやっているから「俺たちも助けようぜ」と、いろんな知恵が出てくる。みんな楽しみたいから「こういうことをやろう」と提案する。

女性の応援団員もいます。

女性団員が作るのはいすみの郷土料理の太巻き寿司。

これを駅弁「里山弁当(1,000円)」として販売しています。
いすみに来たお客様を喜ばせようと毎週末に手作りをしています。

団員の安藤クニさんは

廃線にならないために自分にできることはこのくらいしかない。

駅弁を販売するために鳥塚亮社長はダイヤまで改正して列車の停車時間を伸ばしました。
駅弁はここでしか買えないと人気も上々です。

駅弁の売上の一部は応援団の活動資金にもなっています。

今まで知らなかった人が町を歩いている。「変わってきた」と感じた。いろいろなことをやってみて、うまくいくとやる気が出てくる。可能性があるかもしれない。

地元の高校生

いすみ鉄道株式会社を応援しているのは、いすみ鉄道応援団だけではありません。

沿線にある大多喜高校は生徒会を中心にしていすみ鉄道対策委員会が月に1度、駅の清掃ボランティアを行っています。

生徒会長の小林楓太さんは

大多喜町にもっと人が来てほしい。いすみ鉄道株式会社にはもっと普及してほしいので駅はきれいにしておきたい。

吉野静さんは

いすみ鉄道株式会社がなくなると学校に行けないので、こういった活動に積極的に参加していすみ鉄道株式会社を大切にしたい。

大多喜高校では清掃だけでなくいすみ鉄道株式会社を盛り上げる提案も一緒に考えてきました。

鉄道会社が地域の足を守り、地域が鉄道会社を守る。
その信頼関係が鉄道の存続につながる大きな財産です。

鳥塚亮社長

田舎の人は乗らないけど「残したい」と言う、「乗らないけど残したい」は昭和の時代「地域住民のエゴ」と言われた。どうして乗らないのに「残せ」と言うのかその部分は誰も言ってこなかった。私は田舎にいるので分かるが、農作業をしているおじいさん、おばあさんが汽笛が鳴ったから「そろそろ昼だ」と鉄道が時計代わりになっていて生活に溶け込んでいる。「地域の風景を守りたい」が「乗らないけけど走ってほしい」ということ。「地域の風景」「昔からあるもの」を守りたいと正々堂々と言えなくしてしまった。実際に乗れず何をしていたかというと回数券を買って乗ったことにしていた。こんなことでは続かない。そういう涙ぐましい努力をしている。「無理して乗らなくていい」「でも残したいと言おう」と言ったら「面白いじゃないか」と応援団の人たちが協力してくれた。

運転士

いすみ鉄道株式会社の運転士、渡邉直也さん。

3年前までは小学校で教師をしていました。
昨年運転士としてスタートしました。

運転士を新しく採用するためには鉄道会社が技術を教える必要があります。
その期間は約2年。

問題はその期間の人件費です。

2年間の養成期間が必要だがいすみ鉄道株式会社にはその体力がない。

そこで鳥塚亮社長は訓練費用の700万円を自分で支払うのなら運転手として採用する仕組みを考えました。
お金を支払っても運転手になりたい人はいるはず。

鳥塚亮社長の予想は見事に当たり、6年間で自己負担運転士を10人採用しました。

700万円は何年もかかって稼ぐお金だが、それでも夢が叶うなら納得して払うことができる金額。

ローカル鉄道

東釧路と網走を結ぶ北海道のローカル線、釧網本線の無人駅「茅沼駅」に訪れた鳥塚亮社長。

ローカル線をこよなく愛する鳥塚亮社長は休みがあれば地方の鉄道を見て回ります。

のどかで美しい風景を走るローカル鉄道ですが、その8割が赤字です。

人口の現象や過疎化が進み、地方の鉄道はより厳しい状況となっています。

「田舎の鉄道をやっている場合か」と「儲かるところだけやればいい株式会社だから」という話になる。それは食い止めなければいけない。

第三セクター鉄道等協議会

第三セクター鉄道等協議会は全国のローカル鉄道の社長が集まる会合です。

鳥塚亮社長は

自社の鉄道の駅にライブカメラをつけてもらう。お客様が好きな鉄道会社の駅を見ることができるようにする。

NTTと協力してローカル鉄道の生映像を見られる「ローカル鉄道支援回線プラン」を発表しました。

契約者の支払うお金の一部が応援する鉄道会社に入る仕組みです。

鉄道会社は用意されたカメラを取り付けるだけ。
初期投資はほとんど掛かりません。

東日本大震災で大きな被害にあった三陸鉄道株式会社の望月正彦社長も興味を持っています。

これから先も人口減で経営が厳しくなる。その鉄道は本当に必要なのか、結論は「必要」だと思う。車持っている人はいいが子供やお年寄りは交通手段がなくなる。観光客も来なくなる。その地域はあっという間に衰退する。鉄道は赤字じゃない方がいいが、赤字でも存在意義はある。

鳥塚亮社長

好きなことを突き詰めてやっていく。職業を通じて自己実現ができる。その職業を通じた自己実現で地域や人々の役に立つのが「鉄道」。地域に公的サービスを提供する会社を黒字にするのは私の使命だが、たと多少赤字でも存在として鉄道は必要。地域が鉄道を支えてきてくれたので地域のプラスになる会社、会社の収入を増やすだけでなく、地域に恩返しをすることを鉄道会社はやるべき。

編集後記

点としての「場所」ではなく、「路線」に沿って独自の風景を形作り、しかも人やモノを運ぶ、そんな象徴的な施設が鉄道以外にあるのだろうか。海岸、山裾、谷間、それに花畑や並木を縫って走る列車は、宇宙から眺めると、生き物にみえるのではないか。鳥塚亮社長は生粋の鉄道マニアだが、自らを客観視できる。だから鉄道に依存しない。ローカル線の魅力の本質をとらえ、マニア以外にも伝わる戦略を考える。鉄道を愛する鳥塚亮社長も、鳥塚亮社長に愛される鉄道も、とても幸せだと思う。

-カンブリア宮殿, ビジネス関連
-