進行すると全身に様々な合併症を引き起こす糖尿病。その合併症を防ぐ最新の検査と治療法を取材しました。
糖尿病
埼玉県のある病院。松下さん(仮名・73歳)は5年前、糖尿病が引き金となり腎臓の機能をほとんど失いました。
以来、週に3回、機械で血液を浄化する人工透析を続けています。
腎臓が治ることはないと言われている。人工透析と付き合って仕事と思ってやっている。
人工透析に至る最大の原因がつ糖尿病です。
糖尿病の患者数は予備軍を含めると現在2,000万人にも上ります。
糖尿病は全身の血管の病。動脈硬化が進み様々な合併症を引き起こします。
糖尿病により年間3,000人以上が失明しています。さらに年間1万人以上が足の切断を余儀なくされています。
いろいろな臓器に影響を及ぼすので糖尿病はすごく怖い。
糖尿病が引き起こす恐ろしい合併症。その治療の最前線を追った。
埼玉医科大学病院
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人工透析に至らないための最新の検査が登場しています。
20年間、糖尿病を患う寺田さん(仮名・76歳)。
行われるのは腎臓の機能低下を早期に発見する「ボールドMRI検査」。撮影した腎臓の酸素量をカラーで映し出すことができます。
腎臓は日々、血管が酸素を取り込んでいますが、機能が落ち始めると十分に酸素を取り込めなくなることが最新の研究で分かりました。
酸素が少ないと腎臓は青く映ります。
寺田さんの腎臓は機能が低下していることが分かりました。
埼玉医科大学の腎臓内科、岡田浩一教授は、
早期であれば腎臓は回復するし病期の進行を止めることができる。
早期の段階で生活改善や薬物治療を行えば人工透析に至るのを防ぐことも可能だといいます。
深作眼科
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失明を防ぐ検査も登場しています。
この日、検査を受けるのは12年ほど前から糖尿病を患う久松さん(仮名・48歳)。
2ヶ月ほど前に視界が赤くなった。
今回検査に使われるのは「広角眼底撮影装置」という最新の機械。
まずは血液を映し出す薬を腕から注射し、検査装置で網膜を撮影。
すると、白く映っているのが血管。太い血管の周りで出血を起こしている事が分かりました。
糖尿病になると網膜に元々ある血管がボロボロになり、それを補うため新しい血管が作られてしまいます。それは細く脆いため出血し、網膜の上でかさぶたになり収縮しながら固まっていきます。その時に網膜を引っ張り網膜剥離を起こして失明してしまいます。
新生血管があるのでレーザー治療を行う。
久松さんは早期だったため最新の「レーザー光凝固治療」を受けることになりました。
目の外から網膜に特殊なレーザーを照射し、出血を止めるとともに新しい血管ができるのを防ぎます。
1回の治療は約10分。4回ほどに分けて約2,000発のレーザーを照射します。
白く斑点のように映っているのがレーザーを照射した後、この部分の組織は壊され出血を止めることができました。
網膜は光を感じる組織ですがレーザーは重要な部分を避けて照射されるため視力に大きな影響はありません。
治療費は3割負担で約5万円。症状が進行した場合は剥がれた網膜を元に戻す手術を行えば失明を防ぐことも可能だといいます。
深作眼科の深作秀春理事長は、
糖尿病と分かっても眼科で目の症状を調べる人が少ない。目に少しでも異常があれば眼科に行くことが重要。
関西ろうさい病院
さらに足の切断を防ぐ治療も登場しています。
池田さんは15年ほど前から糖尿病を患っています。右足の2本の指が壊死し、ほとんど歩くことができません。
太ももの血管が細くなっている。
太ももの血管が糖尿病により数カ所狭くなっているため足の先端まで血液が十分に流れず壊死を起こしていました。
さらに壊死が広がると膝から下の切断が必要になってしまいます。
足の切断は怖い。杖をついてでも今まで通り歩きたい。
池田さんは最新の治療を受けることになりました。
今回治療に使うのは「バルーンカテーテル」。内側に水を入れるとバルーンが膨らむ仕組みです。
これを足の付根から血管に挿入し、内側から狭くなった血管を広げます。バルーンが徐々に広がり血管を広げていきます。従来の治療はここまでですが、今回はさらに2016年12月に保険適応された最新の治療器具を使います。
それが「人工血管」です。
これまでバルーン治療だけでは血管が再び狭くなる恐れがあったため、人工血管で内側から支えます。
ゆっくり展開していきます。
人工血管が血管の内側で広がっていくのが分かります。
治療は1時間で無事終了。狭くなっていた血管が治療後にはしっかり広がっていたのが分かります。
足の先端への血流が回復し膝から下の切断を免れる可能性が高くなりました。
治療費は3割負担で約45万円です。
関西ろうさい病院の循環器内科、飯田修副部長は、
患者の状況が軽傷なほど治療しやすさが違い、入院期間も短くなる。早期発見と早期治療が大事。