株式会社三越伊勢丹ホールディングス
[blogcard url="http://www.imhds.co.jp/"]
年間来客数(国内)、延2億人以上。
年間売上げは約1兆2,900億円。
日本一の百貨店グループです。
日本のデパートの頂点、伊勢丹新宿本店は若者からお年寄りまで大人気。
お客様は
月に2~3回は来ます。
週に1回は足を運んで。
毎日のように通っている。
一体、何でそんなに人が集まるのか?
今回はその舞台裏に潜入。
株式会社三越伊勢丹ホールディングスの超緻密な儲かり戦略に迫ります。
伊勢丹新宿本店
やって来たのは伊勢丹新宿本店。
年間来客数はなんと延2,500万人以上。
株式会社三越伊勢丹ホールディングスの中でリーダー的存在です。
1m2あたりの年間売上げベスト3
順位 | 地名 | 施設名 |
---|---|---|
1位 | 伊勢丹新宿本店 | 約400万 |
2位 | 阪急うめだ本店 | 約320万円 |
3位 | 高島屋日本橋店 | 約260万円 |
たった1m2あたりの年間売上げが約400万円、さすが老舗の貫禄です。
一体、他の百貨店と何が違うのか?
お客様に聞いてみると
見やすいですね。パッと開いているのでゆっくり見られる。
お店のディスプレイがすごくオシャレ。来ると楽しい。
伊勢丹は「キレイで見やすい」、「ワクワクしちゃう」、歩いてみるとそんな感じがします。
そこにはちゃんとワケがあるんです。
見やすい展示のマル秘コーチ
その鍵を握るのが営業計画担当MDPの新戸いくみさん。
「MDP」とは?
マーチャンダイズプレゼンテーションという担当になります。Marchandiseとは商品のことですね。商品を見やすく買いやすくプレゼンテーションする。
新戸いくみさんは伊勢丹新宿本店全体のディスプレイのお目付け役です。
もちろん商品はそれぞれのお店の方が陳列するのですが、その見栄えを新戸いくみさんをはじめとする26人のMDPが常に見回り、陳列がイマイチだったら改善します。
それをストアクリニックといいます。
ということで、この日は地下の食品街を審査します。
そして目を止めたのがギフト用商品を並べた棚です。
棚の中に商品が広がっているので余白がないために商品が散漫に見えてしまう。
中央を高くして左右を低くすることで三角形のトライアングルが基本のディスプレイとなる。
あえて余白を作ってスッキリさせます。安定感のあるトライアングル陳列が商品を目立たせる大事なポイントといいます。
長い歴史の中でずっと言われているルール。
ケーキ売り場
新戸いくみさん曰く、ケーキ売り場にも伊勢丹独自のルールがあるそうです。
実はこの商品の並べ方にも理由があるんです。赤ははっきりした色になるので、赤をあえて分散させて展開している。
確かに見栄えがいいです。
別のお店でも赤いケーキが分散されて陳列されています。
8ablish
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続いて、新戸いくみさんの目にとまったのは最近出店したばかりのエイタブリッシュというケーキ屋さんです。
一体どこに問題が?
各拠点それぞれの柱で、クローズアップしたい商品を並べているんです。お客様がいらっしゃった時に、ここに何もないから素通りして他のところを見てしまう可能性もある。
せっかくディスプレイでアピールした目玉商品が一歩内側に入ったところに…
しかも手前に高く積んだ商品があって目玉商品が隠れています。
営業時間中ですが、ごっそりと直してしまいます。お店の人も大変ですね。
陳列を変えてから6時間後、もう一度訪ねてみると、けっこうなお客様がいらっしゃっています。
8ablishの小池陽子マネージャーは
圧倒的に立ち止まって見てくれる人が増えた。
店員さんによると1日の売上げがなんと42%もアップしたそうです。
さすがプロフェッショナルの新戸いくみさん。
フロアアテンダントって?
こちらには少し変わった肩書きの店員さんがいるそうです。
黒いスーツが決まっているフロアアテンダントの吉村朋代さん。
フロアアテンダントって、どんなお仕事なのか?
多田様、いらっしゃいませ。
地下の入口でお客様をお出迎え。
そのままお客様と一緒に2階のカジュアル売り場に向かいます。
そこでTシャツ探し。
こちらの方が良さそうですね。多田様のイメージですね。もうひとつはちょっと地味ですね。
じゃあこれ。
かしこまりました。ありがとうございます。
早速、お買い上げ。
と思ったら、今度はペット用品売り場に行きます。
吉村朋代さんはどこの売り場の担当?
フロアをまたいで縦軸にご案内する。お買い物をお手伝いする担当。
フロアアテンダントとはお客様の要望に合わせ、色んなお店を案内してくれる係のことです。
しかも何度も来店されるお得意さんの場合はそのお客様のサイズや好みなどをきっちり把握して、それに合った商品をオススメしています。
今日お越しの多田晴美さんも毎月1回、お買い物に来られるってことで、Tシャツの好みも分かっています。
首元が多田様のお好み。広いのがお好きじゃないので。
シャツのお好みも分かります?
シャツもわかります。ちょっと着丈が長くて、少しふんわりとしている綿のシャツ。もう何枚かお買い上げ頂いているので。
吉村朋代さんが担当する顧客、50人以上の買い物歴やライフスタイルを分厚いファイルに記録、だからお客様も吉村朋代さんを信頼して何でも買い物ができるワケです。
もちろんペット用品売り場でも
大きいワンちゃんを2匹飼われていて。
多田晴美さんのワンちゃん情報も分かっているので骨やおもちゃも大きめなサイズがおすすめ。これまたお買い上げ。
今度は地下1階のフルーツ売り場にご案内。
バナナないんだ?
ございます。今日、入荷が5袋なので、2つキープさせて頂いています。
多田晴美さん、お気に入りのバナナは頼まれてもいないのに勝手にお取り置き。気が効き過ぎではないですか?
3本で2,160円という高級バナナ「しあわせバナナ」もお買い上げ。
最終的に多田晴美さんのお買い物、2時間で約15万円となりました。
至れり尽くせりのサービスですが一体おいくらでお願いできるのでしょう?
かかってないです。タダです。
お買い物がスムーズにできるフロアアテンダントのサービスはタダ。
予約さえすれば誰でも対応してくれます。
フロアアテンダントの吉村朋代さん1人の年間売上は約1億円。
即答!電話交換の達人
伊勢丹新宿本店には普段私たちが会うことがない影の接客スペシャリストもいます。
皆さんヘッドフォンをして、パソコンに向かって何やらお話。
ここは電話交換室。
1日にかかってくる電話は約4,000本っていうから大忙しです。
中でもお客さまサービス電話交換室の原田道子さんは、この道20年、電話交換のスペシャリストです。
どんな電話が多いんですか?
売り場への御用事、催し物、営業時間、どんな物をお探しか、多岐に渡ってお問い合わせを頂いています。
毎度ありがとうございます、伊勢丹新宿本店、電話交換、原田でございます。
お客様からお電話が…
魯山でございますね、かしこまりました。少々お待ちくださいませ。
用件を聞くと、すぐにキーボードを叩く原田道子さん。
すると、
電話交換です。お客様からでございます。
これ何がすごいか分かります?
お客様から「店内のお寿司屋さん「魯山」に予約をしたい」ってことで、お店の内線に繋いだんですが、ここで何も見ていない。
実は原田道子さん、伊勢丹新宿本店内にある内線、約1,000軒を全て暗記しているのです。
1,000軒って半端じゃない。疑うわけではありませんが…
グッチ?
31-126。
ボンボワン?
31-677。
玩具?
31-610、1、2。
完璧です。
でも、原田道子さんのスゴ技は電話交換だけではありません。
ここで窓側の交換手さんから緊急のSOSです。
お客様から「お人形みたいなケーキはどこで売っているの?」との問い合わせですが、分からないんです。
店名が分からないと対応できないものですが…
お人形のケーキですとロリオリ365、31-062に聞いてみてください。
店名と内線番号を即答。
L'OLIOLI365
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実際にスタッフが行ってみると、お人形のケーキが販売されていました。
こんな事まで…
原田道子さん、週に1回は伊勢丹新宿本店を全体をグルッと回って文字上では分からない情報をインプットしているのです。
そして、もう一つ大切なお仕事があります。
毎度ご来店くださいましてありがとうございます。
それは館内アナウンス。
館内アナウンス
ただいまメンズ館地下一階、紳士靴コーナーでお買い上げくださいました山田様。
かなりゆっくり、しかも間が長い。
これには大事な意味があるんです。
お客様のお話と同じスピードだと紛れてしまうので、ゆっくりと語りかけることで気付いて頂きやすい。
館内アナウンスが出来る人は全47名の電話交換手の中でも、たった4名だけです。
三越伊勢丹のいいところは?
お客様に聞いてみました。
歩いているだけで今の流行が分かる。
程よくかわいくありたいということができるとこ。程よく歳だから。
ここに来ればシャレていていいモノに出会える。
若者から年配の方まで、皆さん伊勢丹に絶対な信頼があります。
でも、今っぽいとか、シャレているとか、どうやって生み出しているのでしょうか?
なぜ「シャレてる」の?
今回、婦人・子供用品バイヤーの渡邊千尋さんに流行の発信基地としての戦略を特別に見せて頂くことに。
伊勢丹新宿本店を出てすぐ、徒歩2分のビルの中へ。
一体、ここに何があるのか?
株式会社三越伊勢丹研究所
研究所って?
バイヤーのための情報を研究しているところです。
テレビ初公開の株式会社三越伊勢丹研究所。
ここで何をしているかというと…
婦人担当コーディネーターの戸口順子さんは
3週間のターム(期間)ごとにテーマが変わっていく。例えば8月3日からは「インスタの女王」。セルフィーとかインスタグラムが流行っているので、インスタグラム受けするファッション。
三越伊勢丹には3週間毎にチェンジする全店統一のスタイリングテーマがあります。
これは世界の流行やライフスタイルなどから株式会社三越伊勢丹研究所が独自に企画するもので、現時点から1年以上先まですでに決定している流行の予定表です。
7月11日はメインテーマは「和背負い(わっしょい)」。
日本のお祭りということで粋で洗練された和のテイストでオシャレを楽しんで欲しいというアピール。素材は天然素材、柄は江戸時代の小紋柄、メインカラーはチェスナットブラウン。
各フロアでテーマに沿ったディスプレイが展開されています。
流行を決める?研究所
バイヤーの渡邊千尋さん、次の打ち合わせに。
こちらの方々は?
キセットのお取り組み先の近藤紡積所のアパレル事業部の皆さん。
KISETTE
KISETTE(キセット)とは三越伊勢丹が企画販売する子供服のオリジナルブランド。
このブランドが高級素材とハイセンスなデザインながらお手頃価格とあって大人気。
例えば紳士服ブランド「ISETAN MEN'S」の年間売上げは約4億円。
婦人靴「NUMBER TWENTY-ONE」の年間売上げは約9億円と大きな儲かりの柱になっています。
株式会社近藤紡積所の大森一範さんは
デザインを一緒に作っていって、製品まで作り上げまして納めさせて頂いている。
通常なら工場とお店の間にメーカーや問屋さんが入っています。それが無いって事は…
どれくらい違うんですか?儲かり具合は?
株式会社近藤紡積所、アパレル事業部の小山結希さんによると
差益率は1.5倍くらい儲かっている。もちろん、お互いがね…
でも普段は仕入れまでしかしないバイヤーが、モノ作りまでとなると色々とご苦労がありそうです。
赤ちゃんにより快適に過ごしてもらうために、涼しさの機能面を入れたいと思っています。接触冷感のモノができないかなと。合成繊維や化繊を使わず、糸から作って頂きたい。
オリジナルブランドを運営するにはかなり詳しい知識が必要です。