コバリオン
イギリスの西側に位置するアイルランド。
ここにゴールウェイという港町があります。
近海で取れる牡蠣が地元の名産品です。
9月24日、町で開かれていたのは牡蠣の殻をむく「世界カキむき選手権」。
30個の牡蠣の殻をナイフを使っていかに早く剥けるかを競います。
日本を含む世界20ヶ国からレストランのシェフなどが参加しました。
今年の優勝者はスウェーデンのシェフ。
優勝賞品として贈られたのは日本製の牡蠣剥きナイフです。
すごいナイフだ。キレイだし、早速使ってみたい。
このナイフ、コバリオンという日本で開発された金属でできています。
プラチナ並みの輝きを持ち、さらに通常のステンレス製のナイフに比べ強度は2倍。
しかも、ほとんど錆びないといいます。
これが日本のコバリオンナイフです。
会場で行われたデモンストレーションでも注目を集めていました。
世界カキむき選手権の元チャンピオン、デンマークのシェフは、
見た目がとてもいいね、輝いている。
株式会社エイワ
[blogcard url="http://www.eiwa-heartmake.com/"]
コバリオンの製造を手がけている会社、株式会社エイワの佐々木雄大常務。
このナイフをPRするため、優勝賞品として採用されるよう売り込んでいたのです。
コバリオンを広めよう、世界に出ていこうということで、アイルランドまで来た。
すると、次々に注文が舞い込んできました。
千葉晶彦教授
実はこのコバリオンという金属を元々開発したのは東北大学金属材料研究所の千葉晶彦教授です。
これまで人工関節などに使われてきた金属には加工しやすくするためニッケルが入っていました。
しかし、
ニッケルアレルギーを発症した患者さんの写真。
「こんなに全身に反応が出るんですか。」
千葉晶彦教授は、ニッケルアレルギーに苦しむ人を救うため新たな金属を作ろうと思い立ちました。
そして約10年の試行錯誤を経てニッケルに代わり窒素を入れたコバリオンという新しい金属を生み出したのです。
その製造を先程アイルランドにいた佐々木雄大乗務の会社、岩手県釜石市の株式会社エイワが担ったのです。
クレサンベール銀座店
[blogcard url="http://www.kyocera.co.jp/prdct/jewelry/shop/"]
いまでは東京銀座のジュエリーショップでアクセサリーとしても販売されています。
セラ株式会社が直営するジュエリーショップ「クレサンベール銀座店」の竹内桂一郎店長は
ニッケルアレルギーの人は着けてかゆくなることがあるが、コバリオンのアクセサリーはそういった反応はまったくないと伺っている。
プラチナに比べて価格が割安な上、アレルギーの原因となるニッケルをほとんど含んでいないことから売れ行きは上々だといいます。
佐々木雄大乗務
佐々木雄大乗務はコバリオンを海外に売り込もうと自らヨーロッパの地に乗り込んできたのです。
うちは岩手の釜石という東京から離れた所で商売している。海外への展開をやっていかないと駄目だと思います。
佐々木雄大乗務は次にイギリスのロンドンにやってきました。
ポール・コステロさん
出迎えた男性は有名ファッションデザイナーのポール・コステロさん。
かつてダイアナ妃の服のデザインを数多く手掛けたことでも知られています。
9月16日に開かれたロンドンのファッションショーでも自らのブランド「ポール・コステロ」は大きな注目を集めました。
早速、佐々木雄大乗務が取り出したのは、
これがコバリオンリングです。
手触りが良いね。映画のロード・オブ・ザ・リングの指輪みたいだ。
佐々木雄大乗務、有名デザイナーに認めてもらうことでコバリオンの知名度を高めようとしていたのです。
この重厚感がいい。
ニッケル・アレルギーの心配がないというのは悩んでいる人は多いので評価できますね。
コバリオンにニッケルが含まれていない点も好評価です。
商談は順調のように見えましたが、
穴の開いたデザインにしたい。
ポール・コステロさんのデザインのように穴の開いた指輪にしたいとポール・コステロさんはいうのです。
これを聞いた佐々木雄大乗務、表情が険しくなりました。
コバリオンは強度のある金属なので穴を開けるのに時間がかかるため量産化が難しく、また開けた穴を磨き上げることも技術的に非常に難しかったのです。
固いというコバリオンの強みが裏目に出た格好です。
やはり駄目か…、佐々木雄大乗務が諦めかけたその時、
このデザインではどうだろうか?
ポール・コステロさん、なんとデザインを修正してくれたのです。新たなデザインには穴がありません。
これなら作れるだろう?
よろしくお願いします。
コバリオンリングはなんとコステロブランドとして発売されることになったのです。
確かにコバリオンは硬い金属だが非常に手触りが良い。まだ課題はあるが今日の結果にはとても満足している。
佐々木雄大乗務は
今回のこの件から、世界への一歩につながっていければ、「コバリオンを世界に出していきたい」という思いがさらに強くなった。