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[WBS] 膨張する中国映画産業!国策化で資金が流入!

2016年8月12日

ワールドビジネスサテライト(WBS)

中国の映画事情

中国の西の果て、新疆ウイグル地区。

その開発区のど真ん中に建設中なのが「シネコン」。

12の大画面スクリーンを要し、最新のシステムを導入しています。

手掛けるのは不動産大手の「ワンダ・グループ(大連万達集団)」。

中国製は今、補助金を出すなどして全土で映画館の整備を加速しています。

スクリーンの数はこの5年で5倍に増え、2015年は3万を超えました。

映画館のお客様は

毎週3~4本は映画を見に来る。

中国映画は昔より品質が良くなった。

興行収入は2015年に初めて400億元を突破しました。日本円にして8,500億円に達します。

その市場規模はアメリカに次ぐ世界2位、日本の4倍近い規模です。

特に伸びているのが国産、つまり中国映画で興行収入は7割増加しました。

中国政府は有望な映画を選んで年間15億円余りを拠出するなど国産映画作りを後押ししています。

上海国際映画祭

6月に開かれた上海国際映画祭。

中国の映画スターが集結する華やかな舞台の裏で「映画と投資」と題したシンポジウムが開かれていました。

そこに登壇したのが不動産大手のワンダ・グループ(大連万達集団)の曽茂軍CEO。

そしてネット通販大手のアリババ・グループ(阿里巴巴影業集団)の幹部、張強CEO。

どちらも資金力を背景に今、中国の映画業界を牽引する新興勢力です。

今は中国映画業界の天地がひっくり返った。資金は豊富にあるが監督や俳優が見つからない。

世界市場で戦える映画をつくるには100~200億円の制作費が必要だ。そういう資金がなければ中国映画は世界で戦えない。

撮影現場

この夏、ある中国映画の撮影が行われていました。

撮影現場は「無人島」。

今は使われていない家屋が草木に飲み込まれています。電気も水道もありません。

撮影には大掛かりな準備が必要でした。

映画プロデューサーの史咏弘氏は

地元の政府や市民が全力で支持してくれた。

政府が全面協力し、島の清掃に軍隊を派遣。このような国を上げた支援が映画に出資する決め手になったとプロデューサーはいいます。

大ヒットを狙うような大作ではありませんが、制作費は日本円で7億6,000万円以上。

従来の平均と比べて2倍の水準です。

この道20年の監督は中国映画が新たな時代に入ったと考えています。

何潤監督は

今の中国映画業界は資金が非常に豊富だ。中国は工業の改革を既に達成した。これからは文化やソフトの時代だ。

検閲

一方、中国ならではの壁もあります。

当局による検閲です。

若手監督の呉琴氏。

最近、日本人男性と中国人女性の恋愛を描く映画を製作しましたが、内容の修正を余儀なくされました。

映画の中に日中戦争に触れる部分があり、国はそこに非常に敏感だった。指示された通りに修正して再審査の後に上映許可が下りた。

この1~2年、審査が厳しくなったといいます。

ただ、中国の映画市場で生きていくには検閲は避けては通れない道です。

十年

一国二制度のもと、当局の検閲がない香港の映画も中国の変化の影響を受け始めていました。

4月、香港のアカデミーショーとされる香港電影金像奨の作品賞の授賞式。

最優秀作品賞は「十年」。

「十年」という作品がグランプリに輝くと賛否両論が噴出。

大きな議論を引き起こしました。

「十年」は2025年の香港の様子を予測したオムニバス映画です。

中国政府の支配が一層強まった香港の社会を描いています。

「中国の標準語を離せないタクシー運転手は空港などで客を乗せてはいけません。」

広東語を話すことが違法だというのか。

映画の中の街では様々な本が販売禁止になっています。

違反がないかチェックするのは軍服のような制服を着た子供たちです。

さらに

香港には独立宣言する権利がある。独立なしに真の参政権は無い。

香港独立を求める若者が力で制圧される姿は2014年に起きた大規模デモの光景と重なります。

この映画は中国本土では「有害」と認定され上映は禁止されました。

映画「十年」を制作したのは香港の若手監督たち。

予算約700万円の自主制作映画ですが香港の将来を心配に思う市民の共感を呼び約9,000万円の興行収入を記録しました。

郭臻監督は

香港社会が受身になっていることへの懸念を伝えたかった。人々が自ら選択するという意識を失い「どうせ変えられない」と考えている。

上映までの道のりは困難の連続だったといいます。

周冠威監督は

最も苦労したのがキャスティング。俳優に依頼すると「出演したら永久に本土の映画に出られなくなる」と、出演を拒否する俳優は何人もいた。

彼らのような反骨の製作者は香港の映画界で少数派になりつつあります。

歐文傑監督は

投資家は皆、「中国国土の市場を目指すべき」と言う。香港の映画業界は検閲を受けることに慣れてしまった。

蔡廉明監督は

資金が潤沢で市場も大きい中国本土との「合作」が非常に増えている。

グランプリに輝いても彼らの前途は多難です。

通常、最優秀作品は劇場で再上映されるが、「十年」は「売り上げの大半を劇場に渡す」と言っても誰も再上映したがらない。

「君たちはブラックリストに載ったから、もう中国本土の仕事はできない」「君たちの将来は厳しい」と映画関係者に言われた。

膨張する中国映画の未来は?

もし金が全てとなってしまうのなら、その魅力は長続きしないのかもしれません。

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