大浜見聞録です。
今回は市場を牽引する文具女子を取り上げます。
ペーパーレス化で文具市場の法人需要は減っていますが、一方で盛り上がりを見せているのが女性が牽引するアナログブームです。
ここ数年、「文具女子」という言葉をよく聞くようになりましたが、こうした個人の需要を狙う企業を取材してきました。
文具女子博
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3月末、大阪で開催された文具の展示即売イベント。
実に来場者の9割は女性。その名も文具女子博です。
およそ70社が出展し、2万点以上のアイテムが揃いました。
お目当ては新作のマスキングテープや可愛らしいデザインのガラスペンなど、3日間でおよそ1万人が集まりました。
このイベントを企画したのがこちらの2人。浦田瑠衣さんと白鶯繭子さんです。
自分の文房具を写真に撮りSNSにあげる女性が増えてきた。
かわいい小物を揃えるような感覚でこうした文具を集める女性が増えているといいます。
いま人気が出ているのがマスキングテープを小さく巻き取れる「コマキキ」と呼ばれる新製品。
お気に入り柄のマスキングテープを小分けにして友達同士で分け合うことが出来ます。
そして、
中身が空っぽなんです。
これに自分で作ったインクを吸わせて自分だけのカラーペンが作れる。
こちらの「からっぽペン」、インクを混ぜ合わせることで自分の好きな色を作ることが出来ます。
「この青色ちょっと違う」みたいなときでも自分で理想の青色が作れる。
一手間を加えることでオリジナル文具を作れる魅力が文具好きの女性の心を掴みました。
「事務用品として買っているのとは違う?」
もちろん仕事に使うペンやノートですが、どちらかというとモチベーションアップ。
かわいいボールペンで打ち合わせをしたい、そういう意味で買う。
開発したのは筆ペンで知られる老舗の文具メーカー「呉竹」。
コロナ禍で在宅での仕事が増えたことも販売を後押しし、1年間で30万本を売り上げました。
こうした女性を意識した製品作りに手応えを感じています。
呉竹の取締役営業部長、吉野誠さん、
女性が手に取るようなトキメキ文具という感覚で開発をしていきたい。
開発に携わっている部門も8割以上が女性。
「女性の視点、嗜好を重視して入っていくとだんだんユーザー層が広がっていく、そういう広がり方?」
切り口は間違いなくそこ(女性)だと思う。
この文具市場をさらに活性化させようということでベンチャー企業を立ち上げて個人で活動している人がいます。
中央区にある文具店「モリイチ京橋店」。
こちらはネクストスウィッチの寺西廣記さんです。
元大手文具メーカーの営業マン。2014年に独立し、メーカーと小売店の橋渡し役を務めています。
今まで文具販売をしていないメーカー。
販路がなかったメーカーを小売りまでつなげる手伝いをしている。
いま進めているのは店の顔となる入口近くの商品展開。
寺西さんが提案したのは素材メーカーがつくった水に強いおりがみです。
子どもだけではなくインテリアとして利用する女性も増えているといいます。
寺西さん、先月からさらに新たな試みを始めています。
定期購入のサブスクリプションを文房具で始めてみようと。
毎月違う文具が7~8点ほど届く文具のサブスクリプション、月3,300円です。
無地の紙に手紙が書ける、罫線が引ける商品。
あえてギザギザの線が書ける。
寺西さんのオリジナルセレクト、4月はおよそ150セット、5月分もすでに250セット以上を受注しています。
この日、寺西さんに案内してもらったのは文具市場に新規参入した企業「扶桑」です。
こちらは社長の富田成昭さん。
工業製品、自転車のゴロシール印刷、シール制作などをメインでやっていた。
販路を広げるため3年前、新たに手掛けたのが布に貼ることができるステッカーです。
もともとは手芸用の商品として考案したそうですが、寺西さんの提案で文具女子博に出展。
すると文具女子からペンケースやブックカバーを彩るアイテムとして注目を集めたのです。
逆にスリッパやマスクに貼ってもらえるようになった。
文具を入り口に使ってもらえる機会が増えた。
コロナの影響で企業向けの製品の需要が激減する中、今や会社全体の売上の半分近くが文具好きの女性をターゲットとしたこの製品だといいます。
布に貼れるのでターゲットが多い。
これからの時期だとランチグッズや梅雨時の傘にも貼れる。
それぞれに合うデザインを出すことで可能性は無限に広がる。
女性を中心に広がる文具市場、ペーパーレス化が進む中、アナログ文具が持つ可能性に注目が集まっています。