去年、番組のテーマ曲だった松任谷由実さんが歌う「深海の街」。
コロナで大きく変化した今年、松任谷さんはこの曲名をタイトルにした39枚目のアルバムを作りました。
今年は松任谷さんにとってもアーティスト人生のなかで特別な1年だったといいます。
日本の音楽シーンをリードし続けてきたユーミンにコロナ禍でのエンターテインメント業界について聞きました。
松任谷由実
[blogcard url="https://yuming.co.jp/"]
「コロナになってからはどう過ごされていた?」
真面目にステイホームしていて3月…4月あたり、自分でもこんなに落ち込むことがあるのかというぐらい落ち込んだり、すべてのモチベーションをなくしたり。
「具体的にはどういう事をして戻った?」
CDライブラリーがあって、AからZまで整理してあるもの。
4,000枚ぐらい。
「AからZまで聞かれた?」
Lで止まっているんです。
Mのアーティストが多いんですよ。マドンナ、マイケル・ジャクソン、マルーン5とか。
あーMかと思った時に自分のことやらなきゃと思ったきっかけかも。
5月、再び自宅のピアノに向かい創作活動を始めたユーミン。
こうして出来た曲の一つが「1920」。
曲の舞台は100年前、当時はスペイン風邪の流行やアントワープ・オリンピックが開かれるなど今年2020年との共通点も多い。
着想のきっかけは母の存在だった。
母が今年の春に100歳を迎えた。
施設にいるので思うように会えない。お祝いできない。コロナの非情な面を痛感した。
もっとつらい思いをしている人がいると想像することができた。
アルバムリリースも今年中に、どうしても出したいと夏ごろに強く思った。
コロナ禍という世界史に残るような特別な年。2020年を記録したかった。アルバムを残しておきたかった。
「アルバムの中で伝えたかったことは?」
「愛しか残らない」
これは生活のあらゆる面で感じたことだと思う。
コロナ禍でしたから。
私自身の生活でいうと古いお皿が好き。食卓を豊かにしてくれる。古いお皿は割れやすいのにずっと残っている。
団欒を見てきているアイテムだから古い皿には幸せが長い時間詰まっている。
愛があるものは残っていく。
アルバムと連動したコンサートツアーを行うのがユーミンのスタイル。
前回は全国17ヵ所で開催し、40万人を動員しました。
「この環境の中でアーティストはどのように活動をしていく?」
リモートのコンサートでも収益はものすごく上がったりはしている。
人が動くということでは圧倒的に少ない。お金の問題だけでなく気持ちの問題がある。人の思い…
誰かのライブに行くとき、チケットを手に入れたとき、行こうと思った時から始まっている。
エンターテインメントが。
電車で見る景色が違ったり、日常がビビッド(鮮やか)になる。
目当てのアーティストだけを凝視しているだけでなく、お客さんの熱狂を後ろから見たり、ライトのビームを追ったり、自分の思い出の世界に一瞬浸ったり、自由だし広がりがある。
コロナの収束は見えない。それでも来年9月から全国60公演に及ぶコンサートツアーを決めたユーミン。
さらに先月にはコロナで開催が難しくなったライブをもう一度取り戻す後押しをするプロジェクト「ジャパン・ライブエール・プロジェクト」のエール・アンバサダーに就任。
自身のコンサート活動だけでなくエンターテインメント業界全体を盛り上げるためにも動き出した。
様々なエンターテインメントがある。
そこに携わっている人がものすごくたくさんいる。
ライブを再開するんだという強い意志と「必ず見に行く」「楽しみにしている」という気持ちを確認するプロジェクト。
何か役に立てることがあれば声を発信していきたい。
誰かから何かをしてもらうより、誰かに喜ばせてもらうよりも自分が喜ばせる方がエネルギーが出る。
こういう世の中だからこそ笑顔や親切を人にしてあげる。
それによって自分自身のエネルギーを育てていったらいいと思う。
誰かを喜ばせる方になればエネルギーが出てくる。そう語るユーミンは時代の預言者とも呼ばれる。
ユーミンが見通す2021年の姿とは…・
「2021年、どんな年になると?」
心して臨まないといけない。
ワクチンができたとしてももう戻らない世界もある。
2020年はショックやパニックという違うエネルギーが個々に出たと思う。それに慣れてしまって、真綿で首を絞められるような状況が続くと思う。
本当に大事なものを見極めて、それを大切にすることで個々が自分の力、自浄作用や免疫力を高めないといけないと思う。
「ユーミンにとって大切なものは?」
私は…音楽ですね。