老舗企業が時代の変化に直面し次の生きる道を模索しています。
創業から70年を超えたアパレル大手「株式会社三陽商会」とあんぱんなどで有名な約150年の歴史を持つ「株式会社木村屋總本店」です。
いずれも長年、強い商品力やブランドを誇ってきましたが近年は営業赤字に陥るなど苦しんできました。
長い歴史で培ったものを生かしつつ、どうやって再び成長軌道に乗るのか。
2つの会社の新機軸を追いました。
株式会社三陽商会
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株式会社三陽商会が展開するポール・スチュアート青山。
店内には経営者や管理職に就く女性、約50人が集まりました。
ビジネスシーンにおいての装いや立ち振舞などを学びます。
謝罪でお客様のところに出向くときは白のインナーをおすすめしたい。
そしてここで紹介されたのがジャケット。株式会社三陽商会が管理職にステージアップした女性が最初に選ぶ一着をコンセプトに開発したというものです。
大江麻理子キャスターは、
普段の私の取材の格好です。ポケットからは名刺入れ、ボールペンがはみ出しています。スマートフォンも半分くらいしか入らない。
新発売したジャケットを着てみると、
婦人服には珍しく内ポケットが付いています。ペンを差すところ、さらに名刺入れ、反対側にはスマートフォンが入るようになっています。
メーカーである株式会社三陽商会がこのように消費者と直に接するイベントを開くことはこれまで少なかったといいます。
販売担当の小林裕子課長は、
販売の力、宣伝が三陽商会は苦手。三陽商会自体がいいものはいいんだと是非着てほしいと力強く言っていきたい。
最大のピンチ
株式会社三陽商会は創業から74年が経つ国内きっての老舗アパレルメーカーです。2016年12月期は過去最大となる約84億円の営業赤字に陥りました。
最大の要因は売り上げの半分を占めていたイギリス「バーバリー」とのライセンス契約が2015年に終了したことです。
創業以来、最大のピンチを迎えた老舗、株式会社三陽商会。復活への道筋をどう描いているのでしょうか?
齊藤晋取締役は、
世界最高水準の「ものづくり」基盤を持っている。三陽商会の復活のキーポイントにしたい。
その象徴と位置づける商品が自社ブランドの「100年コート」。
100年経っても着られるという品質や普遍的なデザインが売りで、株式会社三陽商会が長年培った様々な技術が生かされています。
株式会社サンヨーソーイング
[blogcard url="http://sanyo-factories.jp/"]
雪がチラつく青森県にその縫製工場がありました。
株式会社三陽商会、復活への象徴と位置づける100年コートは全てこちらで作られています。
株式会社サンヨーソーイングの和田秀一工場長は、
私の知る限りでは日本で1年を通してトレンチコートを縫っている工場は他に無い。
ではその蓄積された技術を見せてもらうと、その殆どが手作業で行われていました。
いま縫製しているのはコートの前面、左側にあたる部分です。布を引っ張りながら何のガイドもなく一気に縫っていきます。勤続30年以上のベテランだという女性は1日に400枚以上仕上げるといいます。
1枚仕上げるのにかかった時間はたった24秒。このスピードで縫い上げても仕上がりは非常に丁寧です。しかし何故、手作業にこだわるのでしょうか?
海外だと1,000~2,000枚という生産数で流れるが、国内だと100枚以下の数量で流れてくるので1日に何回も作る形が変わる。機械化すると一度データを入力して、またそれを変えると非常に手間がかかり逆に効率が悪くなる。
縫製が終わるとプレス作業。職人が1着1着、丁寧に手作業で仕上げていきます。
プレスする前と後を比べれば一目瞭然。
形も違うし素材も違うのでプレスするタイミング、蒸気の量とか、時間が全部変わってくる。
長年培われた確かな技術。
株式会社三陽商会はこれをしっかりと店頭でアピールしてファンを増やすことで地道に業績改善へつなげていく方針です。
創業150年「あんぱん」の木村屋!「こだわりのパン」で逆襲!
株式会社木村屋總本店
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あんぱんで有名な老舗企業、株式会社木村屋總本店。
工場ではこんがりと焼きあがったパンが次々に出来上がってきます。
このパンは株式会社木村屋總本店が新たな成長に向けて開発した戦略商品です。
大羽和良特命部長によると、
「ブリオッシュ風クリームパン」。乳化剤、イーストフード、マーガリン、ショートニングを一切使っていない、こだわった製品。
こちらの商品には大量生産するパンで当たり前のように使われている乳化剤やマーガリンなどを一切使っていません。
そのこだわりは創業から続く生地づくりにあります。
素材本来の自然な味を楽しめる生地づくりを目指したためマーガリンの代わりにはバターを使いコクを出します。
コストは高いが、おいしさを追求するためにはこれくらい使わないとできない。
さらに作り方にもこだわりが。
機械だと生地にダメージを与えてしまう。あえて手で成型することでダメージをなくしている。人数もかかるのでメリットは少ないが手を使うことで美味しいパンを作っている。
福永暢彦副社長
創業から150年近い歴史を持つ株式会社木村屋總本店。現在の主力事業は袋に入ったコンビニやスーパー向けのパンです。
ただ長く売上不振が続いていたことから2年前まで営業損益は長い間、赤字でした。
その赤字体質を改善させたのは福永暢彦副社長です。
何を訴求したくてフルーティーと書いたの?
食べるイメージを持ってもらいたい。
これは何かと合わせて食べる、というのがもともとの考え方でしょ?
厳しい指摘をする福永暢彦副社長。企業再生支援機構などで中小メーカーの経営に手腕を奮ってきたプロ経営者です。
2013年4月に株式会社木村屋總本店に副社長として就任。
当時を振り返りこう話します。
「あんぱんの木村屋」という印象がスーパー、コンビニ向けの事業にも関わらず強すぎて本来の自分たちが持っている力が見えなくなっていた。
従来から続く製品ラインアップにこだわり、新しい商品開発ができていなかったのです。
福永暢彦副社長は製品ラインアップの絞り込みや工場の合理化で赤字から脱却させた今、素材へのこだわりと手作り感で勝負に出ようというのです。
株式会社オオゼキ
[blogcard url="https://www.kimuraya-sohonten.co.jp/"]
中堅スーパーの株式会社オオゼキ。
たくさんの種類が並ぶ中に株式会社木村屋總本店のパンもあります。
割りと買っています。甘いものが好き。柔らかい。
週に何度も食べてます。
株式会社木村屋總本店のパンは多いときには1日に400個ほど売れ、最近の売れ行きも好調だといいますが、そこにはある変化が関係しているといいます。
オオゼキ上町店の堀口大輔店長は、
営業の担当者が非常に積極的になった。商品の提案や試食の催事をしてくれるので安定的な顧客づくりになる。
2月初めには試験的に新商品「ブリオッシュ風クリームパン」を販売したといいますがお客様の反応は、
特に子連れの母親が美味しいと言って買っていく方が多かった。美味しいパンというのは集客になると思うので今後も展開していきたい。
評判は上々で店側としても売り場を広げることを検討しているといいます。
福永暢彦副社長は、
あんぱんを作ってきた伝統の技術があって、そのリソース(資源)を生かしてスーパー、コンビニ向けの袋パンとしてより付加価値の出せる製品を作ることがこれからの事業のチャレンジのポイント。
老舗企業が強みを生かし新たな成長を目指して動き出しています。