
農業に不可欠な化学肥料が高騰しています。半年ごとの価格変動をグラフにしましたがこの半年で2倍近く価格が上昇していて農作物の値上がりや収穫量の減少につながるのではないかと懸念されています。こうした状況を受け、いま化学肥料に頼らない技術の開発が進んでいます。カギは寄生する「菌」です。
さいたま市内にある野菜畑。収穫していているのは…
FENNEL
小澤祥記さん

夏の主力として作っているフィレンツェナス。
こちらの農家は日本では珍しいヨーロッパ原産の野菜を育てています。いま農家にとって心配の種が化学肥料の価格高騰です。
FENNEL
小澤祥記さん

今年に入って一気に値段が上がっている。
化学肥料の価格は去年1,550円でしたが、今年は8月時点で3,080円と2倍に上昇しています。
その背景にあるのがロシアによるウクライナ侵攻です。肥料の主な原料は窒素、リン酸、カリウムの3種類。実はロシアはそれぞれの輸出で高いシェアを占めています。そのロシアが輸出を制限したため世界的に化学肥料の価格が高騰しているのです。
FENNEL
小澤祥記さん

黄ばんだ葉とか少し元気がない。
実の付きを良くして収穫量を維持するには窒素、リン酸、カリウムは欠かせません。
一方こちらは長野県塩尻市のネギ畑。太くて大きなネギを収穫しているのは農業を始めて6年目の丸山浩太社長。化学肥料を大幅に減らすためあるものを使っているといいます。
ゲインズエンタープライズ
丸山浩太社長

菌根菌を入れている。
全部のネギに均等に栄養を与えてくれるので、それで太くなる。
ネギの栽培に菌根菌という微生物を使っているというのです。菌根菌とは植物の根に寄生する菌の一種で菌糸を伸ばしてもともと土の中にあるリン酸、窒素、カリウムを吸収して植物に分け与え、成長を促します。代わりに植物からは炭水化物などを提供してもらい自らのエネルギーとしているのです。
丸山社長がこの菌を使い始めたのは3年前。菌根菌の力を借りることで化学肥料の8割削減を実現、一方収穫量は3割増えたといいます。
ゲインズエンタープライズ
丸山浩太社長

むしろ菌根菌を入れた方がしっかり太ってくれる印象。
その菌根菌を製造・販売しているのが民間企業の松本微生物研究所。
松本微生物研究所
忠地真吾さん

こちらが植物の根。
こちらのつぶつぶが根に共生した菌根菌。
日本には300種類以上の菌根菌が存在していますが、研究所ではネギやトマトなど野菜ごとに相性の良い菌を探して培養します。
現在、菌根菌は植物に寄生させて培養するため、菌を増やすためには広大な土地と長い時間が必要ですが、3年前に信州大学など日本の大学や研究機関が共同で世界初となる純粋培養に成功しました。
菌根菌の大量生産に向けた培養技術の開発が進んでいます。
信州大学 農学部
齋藤勝晴准教授

純粋培養すると省スペースで年に何回も培養できるので菌根菌を低コストで生産できる可能性がある。
現在、研究所で開発しているのは高温で乾燥した土地でも植物をよく育てる菌根菌。地球温暖化による干ばつでも食料を維持できる菌を探そうというのです。
松本微生物研究所
忠地真吾さん

菌根菌が水分を引っ張ってくるので植物の耐乾性が上がって暑さに強くなる。
松本微生物研究所は今後5~10年で菌根菌の大量生産の実現を目指しています。
世界的な人口の増加や地球温暖化で食糧不足が懸念される中、日本で開発が進む菌根菌がその解決策となるのでしょうか。