日本政策投資銀行による女性起業家を対象としたコンペ。
3月6日、大賞を受賞したのは東北の被災地で深刻化する空き家問題の解決と移住の促進を両立させるある仕組みを生み出した宮城県石巻市の小さな不動産会社でした。
合同会社巻組
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宮城県石巻市。
家具の工房で働く若林明宏さん(50歳)。
去年、小さなトランクひとつで東京から石巻に移住しました。
死ぬ前にやりたいことやらないと。
日本の地方都市はいいのではと試したくて好奇心を抑えられなくなった。
実は若林さん、去年までは東京の大手損害保険会社に勤め、海外に駐在した経験もあります。
しかし、石巻で新たな事業を始めたいとキャリアを捨ててやって来ました。
上司も同僚も、お前正気か。
もったいなさすぎるから考え直したほうがいいと。
そんな若林さんが住んでいるのは築50年の空き家を改築したシェアハウス。
同居人もセラピストとしての開業を目指す女性。
実は石巻には起業を目指す人やアーティスト、クリエイターといった人が続々と集まっているのです。
渡邊享子さん
彼らを呼び込むきっかけを作ったのが渡邊享子さん(31歳)。
震災後に一人で石巻に移住し、2014年に不動産会社「巻組」を起業。
空き家のリノベーションに取り組んでいます。
地方の町では閉そく感がある。
そういうところを壊して、新しい発想を生み出す余白を提供したい。
石巻市では高齢化などを背景に今、空き家問題が深刻化しています。
拍車をかけたのが8年前の東日本大震災です。
震災直後、仮設住宅の建設が間に合わず多くの空き家に被災者が一時的に住むみなし仮設が増加。
しかし、公営住宅などの建設が進み多いときには2万6,000戸あったみなし住宅も157戸まで減少しました。
そのみなし仮設の多くがそのまま空き家になっているのです。
渡邊さんが案内してくれたのは築60年の空き家。
震災直後は被災された方が住んでいた。
5~6年住んでいたのではないか。
中に入ると見事にリノベーションされていました。
ただ、東京などで行うビジネスと異なり、地方では資産価値が低く、改修するにしても、解体するにしても採算が取れないことがネックになっていました。
そこで、
シェアハウスとして運用することで利益を出し、その分を私たちでもらう。
シェアハウス
地方ならではの家の広さを生かし、シェアハウスとして巻組が運用。
家賃収入を得ることで利益を確保します。
巻組ではこれまでに20軒の空き家を改修し、そのうち7軒を自社で所有しています。
うちの空き家は条件が良いところばかりではなく、ボロボロだが、アート系の方の考えは面白くて、空き家でも物事をポジティブに見る力があると気づかされた。
渡邊さんは今後5年間で新たに20軒のシェアハウスを作る計画です。
人が住むことで赤字だった空き家が少しでもプラスになり、少しずつ小さな経済の動きをつくっていきたい。