事業の縮小や固定費を削減するため企業などが不動産を手放す例が増えています。
そのひとつが保養所です。
例えば健康保険組合が所有していた保養所の数、1996年には1,959ヶ所と2,000近くありましたが、2013年のデータによると490ヶ所。500を切って約4分の1にまで減っています。
その他、寮や社宅などを手放す企業も多くあります。
こうした中、企業が持て余す物件を再活用し稼げる空間に変えようとする動きが活発になってきています。
ファーストキャビン
[blogcard url="http://first-cabin.jp/"]
JR名古屋駅の駅前、駅から徒歩7分、9月1日にオープンしたばかりのホテル「ファーストキャビン」。
中はカプセルホテルです。
全199室、一泊4,500円から。
全国で14店舗目の出店となったこのホテルチェーンの稼働率は90%以上を誇ります。
実はここ、2016年まで全く違う建物でした。それは専門学校。より利便性の高い立地への移転も決まり校舎は2016年4月に閉鎖されました。
この校舎を取得しホテルへと転換したのがTKPという会社。
株式会社ティーケーピー
[blogcard url="https://www.kashikaigishitsu.net/"]
TKPは貸し会議室を運営する企業です。
ビルの空き部屋などを会議室として活用して、全国に約1,800室を展開中です。
今後も空き物件をホテルに改装していく予定です。
ティーケーピーの河野貴輝社長は、
いろいろな業界で使われなくなったスペースがいっぱい出てきている。病院の施設で病室が入っていたところは、そのままホテルにできるので、ホテルに用途変更して12月にオープンするものもある。
相乗効果
ホテルと本業の相乗効果もあるといいます。
例えば名古屋のホテルの周辺では9ヶ所の貸し会議室を展開。泊まる場所があれば翌日も会議室を利用してもらえる可能性が高くなるというのです。
TKPが手掛けた物件は他にもあります。
熱海にあるリゾートホテル。
ここは三菱電機の保養所だった。
築50年の保養所を改装し8月からリゾートホテル「レクトーレ熱海桃山」として営業を開始しました。
ここは手洗い場だったところを隠しています。保養所だったので部屋にバス・トイレがない。
部屋は和室からバス・トイレ付きの洋室へと変貌をしました。
元々あった会議室は本業の貸し会議室と同じグレードで改装しました。
平日は企業に宿泊研修などで利用してもらう一方、休日はレジャー客を狙うことで稼働率を上げ、稼げるホテルにする戦略です。
使わない空間を利用して、もっと違う形で提供できる。そういった空間再生をしていきたい。
ハプティック株式会社
[blogcard url="http://www.haptic.co.jp/"]
一方、東京・板橋区。駅から徒歩5分のところにある賃貸マンション。
築25年、元々はある企業が持っていた社員寮でした。
ここを一棟丸ごとリノベーションしたのが「HAPTIC」という企業です。年間500室のリノベーションも手掛けています。。
最近、企業が長年保有していた社員寮などの物件をリノベーションできないのか、という相談が増えていると思います。
HAPTICの小倉弘之社長は、
昔からの企業は社宅や社員寮を持っている。そういうところからの提案が最近入ってきている。
「Refio成増(リフィオ成増)」は元々、単身者向けの寮です。
ワンルームマンションとして全28部屋をリノベーションしました。
これといって特徴のない寮の部屋ですが無垢材を使ったフローリングにするなど自然な風合いを生かした部屋に生まれ変わりました。
さらに人気のなかった1階の部屋は大胆にも窓側にキッチンを配置しました。
ねぐらをイメージにした木のベッドを設置をするなど、あえて特徴的な作りにしました。
入居したばかりの窪田万梨さん、すぐに契約を決めたといいます。
デザインに惚れた。
「どういうところが?」
おしゃれに見せられる。見せる収納。
週末の夜、1階のとある部屋を覗いてみると、
乾杯!
ここは住んでいる人が自由に使える共有スペース。
社員寮時代にはありませんでしたが、あえて一部屋減らして売りのひとつにしました。
このマンション、入居開始から1ヶ月弱ですが、すでに9割以上の部屋が埋まりました。
社宅や1棟を違う用途で使っていた物件を変更したいという話は最近増えてきている。逆に増えてきているので差別化していかないと、ただ単に部屋だけをキレイにしてはダメ。
ファミリー向け
そんなハプティックが次に手掛けるのは築42年の元社宅だった建物。
部屋は3LDKなどファミリー向けです。この建物では昭和を感じさせる窓ガラスはそのまま生かすことにしました。
また、あえて畳の部屋を残したりと個性的な住まいづくりで他との差別化を狙います。
全国にある企業が持て余した物件をいかに生まれ変わらせて稼げる空間にするか、さまざまな取り組みがいま進んでいます。