同一労働同一賃金に関するニュースです。
これは正社員と非正規社員の待遇格差を是正する働き方改革の一環ですが先週には日本通運がこの4月から非正規の賃金を同じ条件で働く正社員の水準に引き上げる方針を明らかにしています。
こうした中、いち早く同一労働同一賃金を取り入れた現場からは人件費の上昇や正社員の待遇を巡る課題も見えてきました。
エフコープ生活協同組合
[blogcard url="http://www.fcoop.or.jp/"]
福岡県大野城市にあるスーパー「エフコープ」。
中島さん、お願いします。
今日、ブナシメジの売れ行きがいいのでエノキの空いた部分までブナシメジを広げたい。
正社員に指示を出すのはパートの高木さん。
実は農産品コーナーを取り仕切る現場のリーダーなのです。
売り出し方も自分で考えます。
売り場の計画書。
毎週、売り場の配置とか商品が変わる。
スタッフ全員が把握できるよう準備する。
権限だけではありません。
パートでありながら正社員の初任給を超えるほどの月給も手にしているといいます。
雇用形態によって差をつけない同一労働同一賃金になっているのです。
給料から子どもに洋服を買ってあげたり、おいしいランチを食べたり、すごく充実している。
同一労働同一賃金
エフコープが同一労働同一賃金に本格的に動き出したのは2005年。
制度を導入した当初は大きな副作用が生じたといいます。
エフコープの島崎安史常勤理事は、
人件費は2000年以降、約70億円でコントロールしている。
新制度導入時は約73億円まで上昇した。
待遇の改善によって人件費が全体で3億円も上昇したのです。
また格差是正のため勤続年数によって増える「年齢給」を廃止し、貢献度などで評価する「職能給」を導入。
当初は一部の正社員の反感を買いました。
正社員の古後賢二さんは、
年を経て段階的に給料が増えていく制度だった。
それが保障されなくなる。戸惑いがあった。
田尻和士さん
一方、この制度をチャンスと捉えた人もいます。
12年前、非正規の配達スタッフとして採用された田尻和士さん。
中途(非正規)で採用された人と正規職員には大きな壁、賃金の差があると感じた。
自分は中途(非正規)だからしょうがない気持ちで働いていた。
奮起するきっかけとなったのが同一労働同一賃金の導入です。
制度が変わってさらに頑張って認めてもらいたい気持ちが芽生えた。
田尻さんはその後、正社員に登用されいまでは副支所長を務めています。
そんな田尻さんの趣味は車。
去年、念願の新車を購入しました。
最近のぜいたくです。
「仕事がんばるけん」と言って買った。
さらに年に数回の家族旅行にも行けるようになりました。
子どもに何か買ってあげたり、どこかに連れて行ってあげたり、以前(非正規)のままだったらできなかった。
株式会社新経営サービス
[blogcard url="http://www.skg.co.jp/"]
ただ企業の動きはまだ限られています。
総務や人事の担当者に訪ねた調査でも「賛成・どちらかといえば賛成」が45%に対し、「反対・どちらかといえば反対」は43%と賛否はほぼ拮抗しました。
調査を行った人事制度に詳しい専門家は…
新経営サービスの人事戦略研究所、山口俊一所長は、
どこまでが同一労働と認められて、どこまでが認められないのか、ハッキリ分かっていない。
裁判の結果や企業の事例を見ながら判断していくことになる。
株式会社フレスタ
[blogcard url="http://www.fresta.co.jp/"]
こうした中、同一の役割に注目する企業があります。
広島を中心にスーパーマーケットを展開するフレスタです。
人事総務部長の渡辺裕治さん。
働き方改革に熱心な企業だけに同一労働同一賃金を先んじて導入したかと思いきや…
急に「同一労働で賃金が同じ」とだけ決めるとなかなか納得感がない。
会社で決めた役割に対して同じ賃金という考え方であれば比較的現場に合わせやすい。
正社員、非正規社員という雇用形態の違いではなく、同じ役割であれば同じ賃金を支払う「同一役割同一賃金」の考え方をとります。
そのため移動の有無や勤務時間によって賞与や退職金には差がつきます。
渡辺さん、従業員と契約更新の面談に臨みます。
この日面談をしたのは契約社員の宗吉好江さん。
賞与について説明しました。
正社員のチーフ職と同等の役割をしてもらうが勤務地がその店舗のみなので賞与が1ヵ月。
去年の冬、異動や勤務時間に制限がない正社員には1.62ヶ月分の賞与が支給されました。
一方、宗吉さんは店舗の移動がないため賞与は1ヶ月分となります。
結婚しているのであまり異動は希望していない。
他の店に行っていちから仕事をスタートするのがネック。
異動のある正社員と同じ役割は望んでいないといいます。
他の店舗で面談した女性からも…
武内清美さんは、
賞与は正社員と差が出るが、いつ移動するか分からない不安と店によっていろいろ決まりがちょっと違う。
十把ひとからげで1日8時間の月9日休みという枠に入らない人たちが多数。
できる限りいろいろな働き方のパターンを会社が提供する必要がある。
どのような役割を選ぶかも働き方の自由。
肝心なことは働く人が待遇に納得感を持って生き生きと働ける環境を作れるかどうかといえそうです。