
大浜見聞録です。
今回取り上げるのは波の力を使った波力発電です。
この波の力は再生可能エネルギーとしてはあまり利用されてきていませんが、実は太陽光や風力に比べてもいくつかメリットがあります。

1つは太陽光と違って24時間止まることなく利用可能という点、もう1つがエネルギー密度が非常に高いという特長があります。

波の力は意外に強く、太陽光の20倍以上、風力の5倍といわれています。
このポテンシャルのある波の力を電気に変える最先端の取り組みを取材してきました。
株式会社e-ウェーブR&D
神奈川県平塚市。ここに波の力で発電する波力発電所があります。

漁港から海に向かって出発です。

進むこと5分。
あれが波力発電の発電施設ということになります。

防波堤の外側20メートルに建つのが平塚波力発電所。

波による発電の実証実験施設です。

東京大学の長田隆一特任研究員。
小屋の中には発電装置が入っていて、その下に板がぶら下がっている。

水中には横8メートル、縦3.5メートルのラダーと呼ばれる板があり、波の力で振り子のように動きます。

側面に回ってみると…
波の力でラダーを前に出して、返す波で押し戻している。

海底から8.5メートルにある建物の中に発電装置が収められています。
波の力で動くラダーの動きをどう電気に変えるのでしょうか。
ラダー(波受け板)で波を受けて、ここで油圧エネルギーに変える。

パイプの中の油を押し出す。

パイプの中を流れる油の力を利用し、モーターを回して発電する仕組みです。
平均で高さ1.5メートルの波が見込まれるこの発電所では一般家庭20~30世帯分の電気が賄えます。

平塚波力発電所では環境省のCO2削減対策の公募事業として去年2月から発電を開始。今年度末まで実証実験を行います。

東京大学を中心に平塚市や造船、電気、機械など13の民間企業が参加しています。

平塚市に製造所がある大手ゴムメーカーの横浜ゴムもこの事業に最初から参加。

ラダーの先端につけるゴム部分を担当しています。

このラダー、強い波が来た時だけゴム部分が適度に曲がって波の力を逃し、破損を防ぐ仕組みになっています。

程よい硬さで海水の塩分にも強いラダーを作るため、さまざまな材質の布とゴムを組み合わせ、2年間かけてやっと完成にこぎつけました。
横浜ゴムの研究先行開発本部の侯剛さん。
再生可能エネルギーはこれからの成長分野。

この事業に最初から参画して成長のためにいろいろやりたい。

平塚市は実験と並行して民間会社3社とともに波力発電を商用化するための新会社「e-ウェーブR&D」を設立。

今後、福島県内にいまの4倍の出力の施設を建設をして実証実験を続けます。

将来、商用化し電気を売るためには実験を通じて経済産業省に売電事業として認めてもらい、太陽光などほかの再生可能エネルギーと同じようにFIT(固定価格買い取り制度)の対象になる必要があります。

e-ウェーブR&Dの竹下彰代表取締役。
波力発電に賛同する企業や自治体と協力して実績を積むことが必要。

2025年までにFIT(固定価格買い取り制度)が決まるように動きたい。

すでに商用可のめどが立ちつつある企業もあります。音力発電という慶応大学発のスタートアップです。

今年3月に島根県の隠岐諸島で実用機の10分の1サイズで実証実験を行いました。

この装置は船のように浮かべてアンカーを下ろすだけ。海底に固定する大規模な工事が不要です。

水中にある取り込み口から波を取り込みます。
波の力をどう電力に変えるのか、このシステムを開発した速水浩平社長に見せてもらいました。

装置内に取り込まれた波の力で水面のフロートが上下します。

この上下運動でピストンを動かし、管の中の循環水を上にあげてプールにためます。

上のプールに水をためることで蓄電池と同じ役目をする。

たまった水を下におろしてモーターを回し発電します。
これは循環型葉力揚水発電という特許技術です。

音力発電は来年5月に沖縄県の久米島に投入する実用機の開発のため8月に第三者割当増資で1億2,000万円を調達しました。

23年には離島での売電事業を開始する予定です。

離島は発電コストが高く、電力会社は赤字。

売電事業は電力会社の赤字も減り、住民の電気代も下がり、参入障壁がないのがいいところ。

日本の港の数や防波堤の長さを考えると3,000くらいは設置したい。

四方を海に囲まれた日本、世界に先駆けて波の力を利用した発電を成長産業に育てることが出来るのか注目です。