ベトナム
ベトナム・ホーチミン。人口は約840万人。著しい経済成長がいまも続いています。
街を見渡すと外国から参入したファーストフード店が次々にオープンしていました。
店内を見てみると学校帰りにハンバーガーを頬張る子供たちでいっぱいです。経済発展と共に食生活が大きく変化していました。
そんな中、子供たちの身体にある変化が起きていました。
国立中央小児科病院。覗いてみると6歳の女の子が診察を受けていました。身長110センチ、体重は33キロ。
栄養科医師は、
食事のとり方次第ではもっと太ってしまいますよ。
都市部では小学生以下の肥満が問題になっていました。なんと肥満率は30%以上にも及んでいます。
肥満の原因
原因のひとつが学校にありました。
それが給食です。ベトナムの小学校ではご飯におかずとスープを掛けて食べます。
育ち盛りの小学生にとって給食は栄養もボリュームも足りていないのが実情です。
それを補うように敷地内にはなんと屋台があります。学校公認です。パスタやチャーハンから、子供たちが好きそうなお菓子がズラリ。炭酸飲料まで小分けして売っていました。
給食で満たされなかったお腹を買い食いで満たす。学校給食は子供たちを健康にするどころか、足を引っ張っていたのです。
味の素株式会社
[blogcard url="https://www.ajinomoto.co.jp/"]
ベトナムの学校給食を改善しようと奮闘する日本企業があります。
ベトナム味の素。
社内のキッチンで学校に提案する献立を開発していました。実は味の素はベトナムに進出して26年が経ちます。
ベトナム人の舌に合わせて様々な商品を開発してきました。マヨネーズや醤油、さらにいまや主力商品となった「アジゴン」という豚でダシを取った調味料。こうした13種類の製品を製造・販売しています。
ベトナム味の素を束ねているのが社長の本橋弘治さん(54歳)。
調理時間、栄養バランス、見た目、それから1食当たりのコストが重要。
主菜、副菜、スープにデザートという日本式の学校給食。これを普及させようとしていました。
この料理には塩を使っていません。
普通の料理よりも塩分控えめでやさしい味付けになっている。
ホアン・ヴァントゥー小学校
2月、ベトナム。首都ハノイから北へ約200キロ、中国との国境沿いの街ランソン。
地元の小学校にベトナム味の素の本橋社長がやって来ました。
児童数約1,200人。ホアン・ヴァントゥー小学校の学校給食を改革するため視察にやって来たのです。
すると屋外で下準備を勧めていました。主に野菜の仕込みです。
ここは割と人数が豊富。人海戦術でやっている。
本当は校舎の中で作りたいけど調理師の数が多くて無理よね。
さらに本橋さんが気になったのは、
包丁が切れそうにもないな。恐ろしく作業性が悪い。
そして調理が始まるとベトナムメーカーの調味料を目分量で入れています。これを見た本橋さんは、
競合の顆粒のダシ。炒め物とかスープに入れるから、これを味の素がひっくり返さないといけない。これが僕のターゲット。
給食に味の素の製品を使ってもらうことも当然の狙いです。
この日の献立、おかずは海老と豚のひき肉炒めの一品。それと野菜スープをご飯にかけて食べます。
味は濃い目。少しのおかずでもご飯が進みます。
しかし、本橋さんは、
カルシウム・鉄・亜鉛とか微量栄養素が十分取れない。これが全国で同じように行われている。
そこで本橋さん、先生たちに会議室に集まってもらいました。ぜひ、見て欲しいものがあったのです。
それは「献立作成ソフトウェア」。管理栄養士がいないベトナムのため、味の素が開発しました。
主菜、スープに加え、副菜、デザートまであり、それぞれにメニューを用意。これを組み合わせればバランスが良く、ボリュームも増えた献立ができます。
さらにひとつひとつの料理には詳しいレシピが付いていて材料や調味料の分量まで細かく表示されています。まさに日本の管理栄養士のような役割を担ってくれるソフトです。
真剣に見入る先生たち。中にはこんなことを言い出す先生も、
このレシピ、家で使ったら夫も喜ぶわ。
どうやら気に入ってくれたようです。
しかし視察を終えた本橋さん、心配事ができていました。
スープの他に主菜・副菜を作る献立なので、「あと1品、副菜を作れ」と言ったら大混乱が起きる。
対策会議
首都ハノイにあるベトナム味の素の事務所。早速、対策会議が開かれました。
限られた調理時間でどのように調理メニューを増やすのか、スタッフからアイデアを募ると、
例えば、このような便利な調理器具がたくさんあります。これをどこなら安い値段で買えるか紹介してはいかがですか?
作業効率を上げるため調理器具を導入しようというのです。
いいアイデアだね。
本橋さんからも提案が、
「献立ソフト」を使って、食育を進めたい。
栄養の大切さを知ってもらうため、食育を始めようというのです。
こうした学校給食の改革、実はベトナム政府の国家プロジェクト「給食革命プロジェクト」にもなっていました。
教育訓練省副局長は、
我が国の学校給食を改善するため、経験豊富な日本企業の支援に期待しています。
この試みは政府と味の素が協力し、主要都市ではすでに始まっています。
そして今年からそれを地方に拡げ、全国3,800校へ導入しようとしているのです。
給食改革
3月下旬、中国との国境沿いの街、ベトナム・ランソン。
ベトナム味の素の本橋社長が1ヶ月ぶりに以前視察した小学校を訪れました。
早速向かったのが屋外にある調理スペース。どう改善されたのか?
調理師たちが使っているのは味の素が提案した調理器具。
安全に、しかもスムーズに作業できるからありがたいです。
自分たちでやりやすいように工夫して作業効率はぐっとアップ。同じ時間で以前よりも2倍の食材を用意しています。
味付けには豚肉でダシを取った味の素の調味料を使用。これで塩分も控え目にできます。
この日の給食、主菜は牛肉と豆を煮たもの、さらにもう1品、副菜は豚の挽肉にいんげんと人参の炒め物。
これらのメニュー、味の素が開発した献立作成ソフトウェアから組み合わせたものです。
献立作成ソフトはとても便利です。量もグラム単位で書いてあるので使いやすいです。
早速、本橋さん、スープを試食します。
いい味が出ていますね。エビが入って、うま味がちゃんと出る。
レシピ通り美味しくできていました。
そしていよいよ給食の時間、その前に嬉しいことが待っていました。
食育
3月下旬、ベトナム・ランソン。学校給食の改革を進めるベトナム味の素の本橋社長。
その成果を確かめるため1ヶ月ぶりに視察に来ました。
いよいよ給食の時間、と思ったら先生がポスターを使って授業を始めました。
食育のためのポスター。食材に含まれる栄養成分や効果が分かりやすく説明されています。
豆の栄養分は何ですか?
はい!カルシウムです。
豆を食べるとどうなりますか?
骨や歯を丈夫にしてくれます。それと身長も伸びます。
よくできました。
これは3分で学ぶ食育。食材が持つ栄養を給食の前に学んでもらおうと味の素が提案しました。
給食
そして、いよいよ給食の時間。
以前は1品しかなかったおかずが主菜と副菜の2品になりボリュームも増えました。
さらに野菜ズープ。食べ方は今まで通りベトナムスタイル。
味はどうなのでしょう?
おいしい。
おかずの種類が多くて栄養もあると思います。
栄養はもとより、味も量も好評のようです。
このプロジェクトをきっかけに給食がもっと良くなる。もっとおいしくなるし、食材を使いこなして、栄養バランスがいい給食が作れることを確信している。本当に手応えを感じています。
味の素が始めた給食改革。ベトナムの子供たちをどう変えていくのでしょうか?
[blogcard url="https://lovely-lovely.net/business/kitaharahosp"]
[blogcard url="https://lovely-lovely.net/business/kitaharamsi"]
[blogcard url="https://lovely-lovely.net/business/ajinomoto-4"]