株式会社アダストリア
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千葉県船橋市の人気ショッピングモール「ららぽーとTOKYO-BAY」。
館内には約460店舗の店があり週末は多くの買い物客で賑わいます。
激戦を繰り広げているのがいユニクロを始めとする衣料品です。国内外のブランドがしのぎを削っています。
地元にする鳥屋尾彩子さん(34歳)。子供たちと春物の服を買いに来ました。
まず入ったのは「LOWRYS FARM」というお店。花柄のブラウスが気に入ったようです。ブラウスに合わせてシックなパンツをコーディネートします。
かわいい。一緒に着てみよう。
さっそく2点をお買い上げ。値段は約9,000円。
店を出ると、
かわいい。
見つけたのはデニムのバッグ。こちらは「BAYFLOW」というブランドです。
何にでも合わせやすくて良さそう。安い、思ったよりも。
3,800円という価格にも惹かれバッグを購入。
さらに今度は子供服を見に「GLOBAL WORK」というショップへ。Tシャツは1枚1,620円。2人の子供にお揃いのTシャツを買います。
このほか、この店では夫のシャツとハーフパンツもセレクトしました。
この日、鳥屋尾彩子さんが3店舗で購入した商品には実はある共通点があります。
ブラウスのタグをみると、そこには株式会社アダストリアという社名が。バッグにも株式会社アダストリア。
3つのお店は全て同じ会社が手掛けるブランドでした。
株式会社アダストリアは「ららぽーとTOKYO-BAY」に11ブランドも出展しています。
「ららぽーとTOKYO-BAY」の西島悦子所長は、
お客様のニーズや世の中の変化にいち早く対応して、私どものようなモール向けの業態をいろいろと開発してもらっている。非常にありがたいと思う。
海外の有名ブランドが撤退した巨大スペース。ここも株式会社アダストリアの新店舗になるといいます。
茨城県の小さな紳士服店からスタートした株式会社アダストリアはいまや1,400店。売り上げはこの15年で約20倍の2,000億円にのぼります。
率いるのは会長の福田三千男さん(70歳)。
会社が小さい時はユニクロさんの隣にわざと店をつくっていた。違いは何なのか、我々は何をしたいのかをはっきりしなくちゃいけない。ユニクロさんよりファッション性の高いものを提供していきたい。
業界の常識を打ち破り、トップ企業に挑む新勢力を追いました。
株式会社アダストリアの取材
案内人の江口洋介さん、
東京駅の隣のビルに来ています。急成長を遂げているアパレルメーカーがあるということです。
福田三千男会長、
全部で現在21ブランドある。そのうち17のブランドがここに商品を出している。
「niko and ...」のターゲットは25~35歳の男女。
ライフスタイル型のアパレルショップとして先駆けとなった。素材からこだわって作っている。
「Heather」のターゲットは20代女性。
元気な女子大生というイメージ。
「JEANASis」のターゲットは20代女性。
コンセプトが「男にこびない服装」。共感されてファンが多い。
「RAGEBLUE」のターゲットは18~25歳の男性。
アメリカンカジュアルがベーシックになったもの。デニムあたりが評判がいい。
「何故ここまで多くのブランド展開を?」
「JEANASis」のターゲットは20代女性。
ブランドを増やすことが目的ではない。時代が要請するものがある。世の中は集中と言うが、うちは逆を行ったなという感じがする。
「これだけの展開をしている企業はほかにも?」
「JEANASis」のターゲットは20代女性。
これだけの多ブランドを展開しているところはあまりないと思う。例えばラーメンを食べるのでも、いろいろなラーメンを食べて、日本そばも食べる。カレーもいろいろなカレーがあれば、すごく料金が高い懐石料理もある。そう考えるとアパレルも対応していくのが豊かさだろうと思う。
編み機
中国・上海。中心部から車で1時間ほどの郊外に株式会社アダストリアの契約工場があります。
なぜ多くのブランドを手頃な価格で展開できるのか?
その秘密の一端を見せてもらいました。
カギを握るのが大量のダンボールに詰め込まれた糸だといいます。その糸のロールを次々とセットしていきます。糸の先を辿ってみると、そこには巨大な機械があります。
糸から生地を織る編み機です。
ここから生み出されるのは、生産部の小川浩司さんによると、
編み機もバリエーションがあるので1つの糸でいろいろな生地を作ることができる。
例えば編み込む糸の量を少なくして薄く仕上げた生地。主にTシャツなどに使われます。
織り目をゆるくすれば伸縮性の優れた生地に。糸の量を増やすとニットのような厚手の生地にもなります。
さらに糸を違う色に染め交互に織っていくとボーダー柄の生地も作れます。
1つの糸から様々な特徴を持った生地を作るためコストが抑えられます。
それを20のブランドに供給し、各ブランドがターゲットに合わせた服を作っています。
新ブランド
独自の戦略で急成長を遂げた株式会社アダストリア。
福田三千男会長は次なる一手を考えていました。
間もなくオープンだけど。どうですか順調に進んでいますか?
バタバタですけど、何とかオープンに向けてはできるかなと。
株式会社アダストリアにとって21番目となる新ブランドの立ち上げを進めていたのです。
ブランド名は「LAKOLE」。今回は幅広い客層を取り込もうと初めて生活雑貨を中心に扱うことにしました。
責任者は北村嘉輝さん(41歳)。これまで3つのブランドの立ち上げに携わってきました。
世界に出るんだもんね。
期待に沿えるように頑張るしかないかなっていう感じです。
出店場所
3月、大阪府堺市のショッピングモール「イオンモール堺北花田」。
その一画で新ブランドの店作りが始まっていました。北村嘉輝さん、レイアウトを陣頭指示します。
リビングの商品を置いたときのペンダントライトを上から。
初めての生活雑貨のお店に力が入る北村嘉輝さん。そこにはさらなる理由がありました。
実は「LAKOLE」の出店場所は無印良品の目と鼻の先。生活雑貨の巨大ブランドと真正面から戦うことになったのです。
すごいブランド。世界でも勝っているブランドだと思う。チャレンジャーとして挑んでいきたいと思う。
機能性
説明してください。
「つよくて、ながもち」と書いてありますが、遠目に見るとホーローのように見える商品ですけど樹脂でできていて、落としてしまっても割れない。お客様に安全に使っていただける商品。
ホーローは金属の表面にガラスをコーティングした素材のこと。通常、ホーローを使った商品は電子レンジでの使用は注意が必要とされています。しかし今回のカップは問題ありません。子供やお年寄りでも安心して扱えます。
続いては、
熱湯が入っているんですけど、熱湯でも熱くない。
ガラスを二重構造にしたコップ。中を真空にすることで温度を伝えにくくしています。
こうした機能性を持つ生活雑貨で年齢や性別を超えた客層にアピールする戦略です。スタッフたちは手応えを感じている様子です。
しかし、北村嘉輝さんはなぜか浮かない表情です。
実は北村嘉輝さん、雑貨だけでなく洋服にも独自の機能性を持たせたいと考えていました。しかし、その開発が遅れていたのです。
20ブランドのノウハウをいかに活用して、プラスアルファの商品を作るのが今回の新しいブランドの肝だと思うので。
洋服にどんな機能を持たせればいいのか、素材のテストを重ねます。
白い布に飲み物をこぼしてみます。表面に汚れをはじく加工を施した特殊な生地。ティッシュで拭けば汚れが簡単にとれます。
ほかにも熱がこもらないニットなどが提案されましたが、
不快感、ちょっとした嫌だなっていうところを改善できるかが結構重要なので。
北村嘉輝さん、素材の検討を続けることにしました。
新作生地
3月中旬、中国・江蘇省の常州。そこに北村嘉輝さんの姿がありました。
ブランドの中でも肝になる素材なので実際に見てどこまでやれるか自分たちの目で確かめに来た。
実は北村嘉輝さん、中国の工場にある依頼をしていたのです。
生地の特殊加工を得意としている工場。その腕を見込んだ北村嘉輝さん、この工場に画期的な機能を持つ生地の開発を持ち掛けていました。
その試作品。表面に特殊な液体を染み込ませているそうです。
まずは手触りを確かめます。
ストレッチ(伸縮性)が利いている。そんなにかたくないでしょ。
すると突然、生地に水を吹きかけました。念入りに確かめたのは生地の反対側。
ちょっとにじんで見えるから微調整する感じだね。
北村嘉輝さんが気にしているのは生地の反対側にできていた水のシミ。依頼していたのは水を吹きかけても反対側に染み出さない機能を持つ生地。
すぐに現地スタッフに改良を指示します。
何とか3月の北花田の店に間に合わせたい。
果たして、この生地でどんな服を作ろうとしているのか?
試作品
20のブランドを展開し、急成長を続けるアパレルメーカー、株式会社アダストリア。
この春、機能性のある生活雑貨を中心とした新ブランドの立ち上げを進めていました。
3月下旬、新ブランドの責任者、北村嘉輝さんのもとに試作品が届きました。
サンプルが届きました。
北村嘉輝さんが中国の工場に依頼していた特殊加工の生地を使った洋服です。
まずはグレーのTシャツをチェック。
結構かけても平気です。
たっぷりと水を染み込ませます。
グレーはうつりやすいから。これはかなりいいですね。
裏面はかなりの水を吸い込みました。しかし表には全く染み出していません。
同じようにパンツもテストします。
いいね。
実はこの特殊加工の狙いは汗を吸収しても汗ジミをつくらないこと。通気性も問題ないということです。
春先から夏にかけてはくパンツなので、できる限り生地が薄い方がいい。薄くなるとおしりに汗をかいたときとか、ひざ裏に汗をかいたときに汗が表面に出やすいので、軽減の加工ができないかと。
オープンギリギリまで粘った特殊加工。果たしてお客様の反応は?
オープン
3月24日、大阪府堺市の「イオンモール堺北花田」。
株式会社アダストリアの21番目のブランド「LAKOLE」がオープンの日を迎えました。
広々とした店内に並ぶのは機能性を売りにした生活雑貨など約1,000点。
汗ジミを抑える服は特設ブースで体験してもらうことに。
いよいよ開店。
さっそくお客様がやって来ました。
あの割れない食器の前で足が止まります。
マグカップをお買上げのお客様。
軽くてやわらかい感じがして、これだったらこの子も壊さないと思って。
断熱コップ前にはお年寄りの姿が。店には幅広い年齢層のお客様が訪れていました。
一方、汗ジミを抑える服にもお客様が、
グレーのTシャツとか汗が気になると思う。脇とかすごく気になると思うんですけど、これを汗と想定してふってみますね。たっぷりかけたんですけど表面を見ていただいたら。
すごい。
実演を見た女性のお客様、Tシャツに手が伸びます。
こういう高機能なTシャツがすごいなと思ったので。2枚買いました。
男性のお客様は、
外出する時は必ずTシャツをもう1枚持って出ている。夏には。これは1枚で外出できそうなので助かる。
北村嘉輝さん、この様子を見てホッとした表情です。
機能によって自分たちの日常が楽しくなるというのが浸透していけば、絶対的に武器になるというのを改めて感じた。
株式会社アダストリアは今後も独自の商品作りをしていくといいます。
福田三千男会長は、
いろいろな可能性がある。それを我々はきちっとトライしてみる。提案することが我々の仕事だと思っている。
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